地球(テラ)へ…

第17話「永遠と陽炎と」

脚本/佐藤大 演出/高田淳・佐藤恵 絵コンテ/神瀬雄之 作画監督/高乗陽子

あらすじ
 キースがナスカに向けて打ち込んだ惑星破壊兵器「メギド」の攻撃を、ソルジャーブルーとジョミーは防ごうとする。ナスカに住むミュウたちはシェルターへ退避していた。メギドの第1波攻撃を防いだのは、トオニィら昏睡していたナスカの子どもたちだった。

Aパート:ブルーとの別れ、タイプブルー9体、シェルター前のリオ、ナスカ崩壊寸前
Bパート:ブルー、メギド侵入、ナスカ脱出を助けるジョミー、キースVSブルー、旅立ち

コメント

 「メギドの火」と呼ばれる国家騎士団の第一波攻撃をミュウ側が防いだことに驚くグレイブ。その防御のサイオンパターンは「タイプブルー」と解析されていた。
 シャングリラのブリッジでは「タイプブルー」のサイオン反応が9人分も検出され、一体何者かとハーレイらは戸惑っていた。

 ナスカ上空では、ブルーとジョミーがその9人の正体に驚愕していた。それはトオニィら9人ノナスカの子どもたちだったのだ。ナスカを守るため、急速に成長した彼らは、一人ひとりが「タイプブルー」級のサイオン能力を発揮するまでになっていた。
 ブルーはジョミーに、この子たちを連れてシャングリラへ戻るよう指示する。


 キースもまた、旗艦でタイプブルー9体を確認していた。次の攻撃でこれを叩く、として次弾発射準備を命じる。その射線上にはマードック艦隊の存在が認められたが、キースはそれに構わず発射するよう命じるのだった。

奴らを根絶やしにする。
それがマザーの意思。
そして今が、最大の好機だ。
犠牲を払うことを恐れるな。


 ナスカでは、脱出用のシャトルがリオの帰りを待っていた。しかしリオはシェルターへ向かっていた。閉じられたシェルターの内側にいるハロルドと思念波で交信すると、ハロルドは、「俺たちに構わずシャングリラに戻れ、俺たちを乗せられる船は残っていないだろう」と、リオに、船に帰るよう促すのだった。それは、ここで生きると決めた若者たちの決意だった。

 説得にあたるリオを待ちきれずシャトルはナスカを離陸。ブルーは一人、ミュウらを守るための盾となろうとして宇宙にあった。そしてジョミーは崩壊間近のナスカにいて、脱出シャトルを発射すべく奮闘していた。そこへリオが、シェルターに閉じ込められた者がいる、と報告にくる。ジョミーは操縦者のいない脱出シャトルを操縦して、すぐ脱出するように彼に命じた。
 地表の30%が焦土と化し、中心核にも影響がで始めたジルベスター7(ナスカ)。グレイブは報告を聞きながら、これ以上まだやる気か、とキースの冷酷さに驚愕していた。
 ナスカでは、ジョミーが逃げ遅れたシェルター内の若者たちを脱出させようと奔走。一方、再発射目前のメギドシステムを止めようと、ブルーはシステム内へと侵入。再びキース・アニアンと相見える。

 ナスカ編のクライマックスともいえる回だが、実は原作では第四部の導入部にあたる。本作でクライマックス感が強いのは、何と言っても、ついにソルジャー・ブルーと対決するキース・アニアン、という構図が加えられているからだろう。しかし、原作にあるように、ナスカは惑星ごと滅ぼされる筋書きが定まっているのであるから、ここで、メギドシステムの第一波をトオニィらナスカの子らが防ぎ、第二波をブルーが止めようとしたところで、ある意味時間を引き延ばしているだけ、のように見えてしまう。問題は、結局そのように原作にはなかった防御の場面を加えたところで原作通りにナスカは滅びてしまうわけで、ナスカに定住しようとしていたミュウの若者たち、そしてそれを進めてきたジョミーの心の内、慚愧の念、そして改めて地球を目指しこの星を離れる、ということの意義などを掘り下げつつ、かろうじて彼らが救われる、というギリギリの線で見える希望、というものを描くまでには至らなかった。もったいない、としか言いようがない。

おまえはどれほどの犠牲を払える、ソルジャー・ブルー!。



 とブルーに向かってゆくキースだが、自らの命をこのために捧げたブルーの死に様が、特段感動的であったかというと、そうでもない、というところにもったいなさを感じるのである。しかも、キムとかいう雑魚キャラの回想シーンに時間を使い、ブルーがメギドの第二波を止めたところでミュウの船は彼を置いてワープしてしまうあっけなさ。300年ミュウを引っ張ってきた指導者に、ちょっと冷たすぎやしませんか。

 で、どうもキースは仕返しなのか、グレイブの艦隊ごとジルベスター7(ナスカ)にメギドを撃ち込むつもりだったようだが、ブルーの捨て身の攻撃で命拾いすると、キースの残党狩りの命令を聞こえなかったフリをして、ぬけぬけとこうのたまう。

 私は軍人だ。戦争となれば敵と戦う。 だがこれは戦争ではない。 これは、虐殺だ。 キース・アニアン。奴こそ、化け物だ。

 それに対して、見ている側としては、こうも言いたくなってしまう。
 「それって、あなたの感想ですよね?」
 こういう第三者的な目線で分析する人、本編にいると、醒めるんですけど!

 こう書くと酷評のようにも取れるが、話の展開は決して悪くはなかったと思う。ただ、惑星崩壊という大惨事を描くには、作画力が圧倒的に足りない。止め絵の原作漫画にも劣る迫力のなさ、ブリッジに立っているだけのキースなど、正直紙芝居レベルでいただけない。見せ方に工夫がなさすぎて、単調になってしまった残念な回。

 ナスカ滅亡の余韻もないまま、アルテミシアへ向かうと宣言するジョミー。ラストには、原作の、あの望郷の思い豊かな詩が読まれるが、その肝心な望郷の思いをほとんど描いてこなかったので、なんの感慨も湧かないままに終わってしまった。素材を台無しにする、とはことことではないだろうか。

評点
★★
  ナスカ滅亡、ブルー最後の戦い、という悲壮な盛り上がり感を台無しにする作画力のなさ。



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