地球(テラ)へ…

第6話「ステーションE-1077」

脚本/面出明美・山崎理 演出/清水聡 絵コンテ/つるやまおさむ 作画監督/波風立流

あらすじ
 マザー・イライザはキースと呼ばれる少年を目覚めさせ、新入生のガイダンスを受けるようすすめる。会場にいたサムはキース・アニアンの落ち着いた様子に目を見張った。超エリートである「メンバーズ」になりたいと言うキースに、上級生が絡んでくる。

Aパート:キースとサムの出会い、クレイブ登場、スウェナの船の危機
Bパート:訓練中の再会、事故発生、状況確認と救助活動、サムの友情

コメント

 第6話からは原作第二部、成人検査を通過した14歳の若者たちが次の教育を受ける、教育用の宇宙ステーションが舞台となる。新入生はみな宇宙船でやってくるのだが、メディカルルームで目を覚ましたのが、本作のもう一人の主人公、キース・アニアンである。彼は「マザー・イライザ」から、宇宙項に到着した直後に倒れた、と説明を受ける。
 ステーションE-1077に到着した便から降りてきた新入生の中には、アタラクシアでジョミー・マーキス・シンと同級生だったサム・ヒューストンがいた。成人検査を通過してきた彼は、だれも知っている顔がない中不安を感じている。だが、そこに、他の生徒とはちがって落ち着いた様子の男子がいるのを見つける。

 新入生ガイダンスという形で、この物語の舞台設定となるスペリオル・ドミネーションの説明が入り、改めて、この世界が私たち視聴者の生きる世界とはまったく異なったシステムで動いていることを確認する。新入生らは幼い反応を見せるが、キース・アニアンは違っていた。

なるほど、こうして地球への慕情を抱かせ、自分の果たすべき役割を認識させるわけか。

 他の生徒と違って彼だけが、まるでこの社会体制を外側から見ている観察者のようなセリフである。どうやら彼は、この社会では特異な存在なようだ。ある意味凡人の代表であるかのようなサム・ヒューストンは、そんな彼と握手して、友達になった。

 原作では、サムとキースが新入生を迎え入れるところから第二部が始まるので、これらもアニメのオリジナルエピソードである。

 友達になったサムはキースを食事に誘うが、キースはサムが食事中も落ち着かない様子で周囲を見回しているのに気づく。サムはアタラクシアで一緒だった友達、ジョミー・マーキス・シンを探していた。サムに成人検査前のことを聞かれたキースは、何も覚えていない、と答えてこう言う。



友達とは、そんなに重要なものなのか?

 何になりたい?とサムに聞かれて躊躇なく「メンバーズ」と答えるキースは、新入生であるにも関わらずずば抜けた成績で、上級生らから目をつけられ、メンバーズにもっとも近い男といわれるグレイブ・マードックには「君のように選ばれた者は、それに見合う人間と付き合うべきだ。レベルの低い者と付き合っても益はないだろう」と、暗にサムとの付き合いはやめて自分のグループに入るよう仄めかされたりするが、なぜかキースはそうした誘いには乗らず、孤高を保つのだった。
 そんな中で、事故が起こるのが後半の展開となる。

 新入生を乗せた輸送船と、補給のためステーションE-1077に立ち寄った人類統合軍の軍艦が衝突事故を起こし、新入生らが船に閉じ込められてしまうのだ。ちょうどそのとき、入れ替わり訓練に出ようとしていたグレイブとキースは、即座に判断してコンピュータで状況を把握。危険に晒されるステーションの一区画がパージされることを知った。 「グレイブはマザーイライザの指示でもう救助班が向かっている」「我々はシステムの指示通りに動けばいい」とグレイブは安全な区画へ取り巻きとともに移動していくが、キースは輸送船に残された乗員をただ一人、救助しようと動き出す。そこへ「おれ、船外作業は得意なんだ。しっかり食ってしっかり動く。それがおれのモットーさ」とついてくるのが、サムである。

 システムの「外」に置かれた状態で、自主的に判断し行動することのできる唯一の人間、キースと、そんな彼に「友情とは何か」を行為をもって教えたサム。前半のキースの問い「友達とは、そんなに重要なものなのか?」をテーマとして描かれたエピソードは、なかなか良い着眼点を持っていると思った。

 だが、それにしても全体的には「薄い話だなー」という印象が拭えない。アタラクシアから舞台を移し、成人検査「後」の、大人社会の「雛形」であるこのステーションで、大人として社会に出ていく前の彼らがどんな学園生活を送っているのか、もう少しその日常をしっかり描いてほしかった。すべての生徒ら、そしてここで勤務するすべての大人たちも、コンピュータである「マザー・イライザ」に指示され、管理され、メンタルケアをされながらすべてを頼りきり、委ね切って生きている「はず」なのだが、そうした一面がスルーされていたために、キース「だけ」がマザー・イライザと関わりを持っているようにも見える。

 また、後半にピンチを招く船の衝突事故だが、正直なところ、脚本も作画も物足りなすぎて、どういう状況で何が起こったのかよくわからないうえ、危機的状況であるはずなのに、まったく緊迫感のない展開となってしまった。マザー・イライザとの回線が途絶える、というのは、彼女に依存しきっている彼らにとっては究極の危機なのだろうが、それが全く伝わらないのは、やはり描き方に難があるからと思わざるを得ない。

 もう一つ、最大の疑問は「そもそも、成人検査で記憶を消されたサムが、同級生のジョミーやスウェナのことを覚えているものなのか?」ということに尽きる。ソルジャー・ブルーやリオなど記憶を消されてしまった者たちが、あれほど苦しんでいるというのに、それはちょっと扱いが軽すぎやしないだろうか。記憶を消されたとはいえ、新入生ガイダンスの様子から、彼らは「母」とか「友達」という存在がいかなるものかについてはわかっていると思われるし、キースがサムから「友情」を学ぶという今回のテーマについては、ジョミーやスウェナなど出さなくても、いやむしろ出さない方が深く描けたかもしれない。サムが、事故を起こした船に乗っていたスウェナと再会したとき、お互いに初めて会ったような反応だった方が、この世界を形作る社会システムの異常さが強調されて、よかったのではなかっただろうか。

 ずるいのは、ラストにマザー・イライザと思しき声で入る一言である。ある意味、キースという特異な存在に対するネタバレ的な一言であるし、原作第二部の面白さは、キースという人間はどこから来たのか、という謎にもあるので、その辺りを早々から匂わせてしまうのは興ざめと感じた。さらに言えば、上記の疑問に対して、結局これもすべて予定調和なのさという言い訳ができてしまうところに、このマザー・イライザという存在の扱いにくさがある。この一言は「それを言ってはおしまいよ」的な破壊力があり、脚本家にとっては取り扱い注意の危険物ではなかろうか。それを安易に用いすぎてはいないだろうか。


キャラクター紹介

キース・アニアン
 宇宙港に到着した直後に倒れた、と言われメディカルルームで目覚めた少年で、マザー・イライザから特別に目をかけられている。新入生とは思えない落ち着き払った態度で冷静、沈着にして成績優秀。将来は「メンバーズになりたい」という目標を持つ。

サム・ヒューストン
 アタラクシアでジョミー・マーキス・シンの同級生だった少年。彼よりもあとに成人検査を受け、選ばれてステーションE-1077へ新入生としてやって来た。成績はおそらく凡庸だが屈託のない明るい性格で、まったく対照的なキース・アニアンの友人となる。

グレイブ・マードック
 キース、サムらの上級生で、成績抜群なことから「メンバーズに最も近い男」と呼ばれている。彼の成績を塗り替えた新入生、キースに目をつけ、彼を自分の取り巻き連中の一人に加えようとした。事故発生時は「マザーに任せておけば大丈夫」と安全圏に逃れた。

スウェナ・ダールトン
 アタラクシアでサムやジョミーと同級生だった少女。サムより遅れて成人検査を受け、ステーションE-1077へやってくるが、乗っていた船が事故を起こし、船内に閉じ込められてしまう。救助に来たサムと驚きの再会を果たした。


用語解説

ステーションE-1077
 成人検査を通過した少年少女のための宇宙ステーション。養父母などの記憶を消された状態で送り込まれ、ここで高度な教育・訓練を受ける。人類統合軍に入るエリートを育てるための最高学府で、卒業するとパルテノンや国家騎士団のメンバーズに選抜される可能性もあるという。

マザー・イライザ
 ステーションE-1077のすべてを管理・統括するコンピュータ。組織の頂点に立ち、事故等緊急事態の対処もすべて彼女の指示で行われる。ホログラムのように姿を現し、メンタルケアも行う。キース・アニアンは彼女にとって特別な存在のようである。


スペリオル・ドミネーション(SD体制)
 環境破壊により住めなくなった地球を再生するために敷かれた特別な統治体制。人類は地球外惑星へ移住。地球再生機構「リボーン」の管理下で再生を目指す一方、人工授精と養父母による養育によって人口を統制・管理するという特異な社会システム。社会全体をマザー・コンピュータが管理している。

評点
★★★ テーマや展開は良いが、学園生活や事故の描きこみが足りず、薄い印象が否めない。



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