地球(テラ)へ…

第2話「ミュウの船」

脚本/西出明美 演出/柳瀬雄之 絵コンテ/つるやまおさむ 作画監督/高乗陽子

あらすじ
 不適格者となったジョミーを助けたのはリオと名乗る新人類ミュウの青年だった。彼の操縦する飛行機でジョミーはアタラクシアを出るが、そのとき「禁止されている」外へ出ることを恐る。連れて行かれた巨大船で、彼は多くのミュウに出会う。

Aパート:リオによる救助、ミュウの船と彼らの生きる世界の体制紹介
Bパート:長老たちの評定、ミュウの子供、青年たち、フィシスとの出会い

コメント

 成人検査で不適格者になったジョミーは、管理局の特殊部隊に処分されようとしていた。そのとき、助けの声が聞こえる。その声に従ってジョミーが逃亡を図ると、そこにはリオというミュウの青年が操縦する飛行機が待っていた。彼は、ミュウの指導者ソルジャー・ブルーが母船でジョミーを待っていることを告げる。
 その青年、リオが思念波で語りかける様子に、ジョミーは異常を感じる。実はリオは声を出すことができないのだった。そして彼は、ジョミーを乗せた飛行機で大空高く舞い上がる。
「外に出ることは禁止されている」と恐るジョミーに、彼はこう告げるのだった。

追われている身ですよ。今さら規則は無意味でしょう。
ここを出た先に何があるか、
あなたが自分の目で確かめてください。


 成人検査を無事パスした者が、決して知ることのない真実をジョミーは知ることになる。それが第2話のテーマである。原作では、山を超えて外へ出たとき、ジョミーはそこに広がる荒野を見て驚愕していた。「大人社会があると思っていた」というのである。しかし、本作では驚きの表情を見せるだけで、風景も、何に驚いたのかも具体的には描かれなかった。私たちの生きる世界とはまったく違ったシステムで動いている、彼らの世界にあって、私たち視聴者と同じ目線を持つ唯一のキャラクターである。私たちは、この主人公の「目」を通してこの世界を見ているのだから、リオが「なたが自分の目で確かめてください」といったその現実を、ここで見せるのは大事なことだと思うのだが、なぜ、本作ではそうしなかったのだろうか。

 山を越えるというシークエンスは、切り立った崖と崖との間の細い谷間を、追跡してくる戦闘機の攻撃を避けながら飛行するという、とても緊迫した戦闘シーンとして描かれている。谷間を抜け、上昇して雲の上に出ると、白い雲の層にその巨体を隠したミュウの船に出迎えられる、という流れである。
 谷間を戦闘機で抜けていく、という場面のために、原作では地中に隠れていたミュウの船を、空中の雲の中に隠したのだろうか。しかし、そうまでして描かれたその場面は「エリア88」で有名なエピソード「音速のタイトロープ」の焼き直しのようにしか見えず、この見せ場のために設定を変えたのか、と思うと少々残念であった。

 ミュウの船は、本作では「シャングリラ」と名付けられている。ジョミーはシャングリラの船長ハーレイの歓迎を受けるが、思念波で話しかける彼らをジョミーは恐れた。船内を案内され、ミュウについて教えられるジョミーだが、自分がミュウだということを受け入れられない。思い悩んだ彼は、ソルジャー・ブルーの幻影を追いかけるうち、ミュウの子供たちに出会う。子供たちはジョミーをすんなり受け入れるが、青年らは「こいつはミュウじゃない、人間だ」と言い張り、殴り合いの喧嘩になる。

 船長のハーレイに、ミュウを理解するよう努力してほしいと言われるものの、納得できないジョミーは、無意識のうちにはじめてその能力を使い、ソルジャー・ブルーに呼びかけるのだった。
 そして、この船の中核にいるフィシス、ソルジャー・ブルーと初めて対面するが、ここでジョミーは「こんなところに来たくなかった」と、原作にはない驚きの要求をブルーに突きつける…。

 このジョミーの要求が、リオが望んだ「あなたが教えられてきたことは真実ではない。それを知ってほしいのです」という体験を補強するものであることを期待したい第2話であった。

キャラクター紹介

リオ
 ソルジャー・ブルーの命を受け、成人検査で不適格になったジョミーを助けにきたミュウの青年。声が出せないため、思念波でジョミーに話しかける。ミュウの船にやってきたジョミーに、ナキネズミを届けた。

ハーレイ
 ミュウの船「シャングリラ」の船長。ミュウの船に連れて来られたジョミーを長老、ブリッジ要員らとともに出迎える。自分がミュウだということを受け入れられないジョミーの姿に戸惑いつつ、彼を受け入れようとする。

フィシス
 ソルジャー・ブルーのそばに仕える女性で、カードを使って未来を読む能力を持つ。50年前、ソルジャー・ブルーによってミュウの船に導かれた。ジョミーを出迎え、彼の思念波がとても強いこと、ミュウは長寿であることを教える。

ソルジャー・ブルー
 ミュウを率いる長(おさ)で、その年齢は300歳を超えるといわれる。第一世代のミュウとして、管理局にもその存在を知られており、強力な思念波を持つことから「タイプ・ブルー」と呼ばれている。ジョミーがミュウであることをいち早く見抜き、彼をミュウの船に導いた。


用語解説

ミュウ
 思念で会話し、ものを動かすなど、人間にはない力を持っている、人間から派生した新人類。肉体的には虚弱なものが多い。そもそも人類は1100年前、環境破壊によって荒廃した地球を立て直すため、惑星移民、人口の管理、出産の規制、自然分娩の禁止に取り組み、養父母による教育制度を実施してきた。そんな中で突然変異的に生まれるミュウは、秘密裏に消されてゆく運命にあった。

シャングリラ
 生き延びた第一世代のミュウたちが結束し、人間から奪って改装し続けてきた巨大な宇宙船。ブリッジでは各ブロックに設置されたテレパシー増幅装置の思念波を統一し、強力な思考を作っている。これを「ステルスデバイス」といい、発見されたくない、敵の攻撃から身を守る、という感情で船を守っているという。右の画像中央がブリッジ。


評点
★★★★ ジョミーの視点で世界観やミュウについて描かれ、本格的に物語世界へ導かれる。



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