MUDDY WALKERS 

An another tale of Z

 Zガンダム 比較レビュー →ZZレビュー →ガンダムAGEレビュー 
 →ヤマト2199レビューGのレコンギスタレビュー鉄血のオルフェンズレビュー

機動戦士Zガンダム第1話「黒いガンダム」 脚本:大野木寛

あらすじ
 宇宙に浮かぶ平和なコロニー「グリーンノア」、ハイスクールの学生カミーユ・ビダンは空手部の練習をさぼって宇宙港に向かう。港には地球から来たかつてのホワイトベースのキャプテン、ブライト・ノアのシャトルが到着していたのだ。港でティターンズ兵士ジェリドに名前を呼ばれたカミーユは「何だ、男か」の一言に激昂、ジェリドを殴り倒す。一方、グリーンノアにはエウーゴのクワトロ・バジーナ大尉が新型ガンダムの情報を得るべく、コロニーの内部に潜入していたのだった。

Aパート:クワトロのコロニー潜入
Bパート:カミーユの尋問とジェリド墜落

 久しぶりにガンダムをやるというので、話のフォーマットは前作の第1話を踏襲した話。異なるのは前作と異なり戦争中ではないことと、地球連邦軍の一組織らしい「ティターンズ」が存在すること。ただ、前作の時代に比べ制作環境が恵まれ、ファンの層も厚くなっていたために、宇宙における物体の運動の描写についてはこだわりが見られる。

こだわりの描写と価値観
 例えば、コロニーに潜入したクワトロ大尉を追い、ガンダムがコロニーの壁に激突したり墜落したりする場面、スペースコロニーは完全に人工的な空間なので、遠心重力によって生み出される重力と付近の無重力の宇宙空間との物理運動の使い分けは必ずしも正確ではないが労作というべきもの。また、前作を継承するものとして遠隔地におけるニュータイプ同士の感応の描写も見られ、作品に不思議な雰囲気を付加している。しかし、無重力の宇宙空間にしてはこの作品のモビルスーツはオープニングからエンジンの吹かし過ぎである。

カオルのひとこと:言われてみれば「こだわり」の描写が随所に見られますが、ほとんと気付きませんでした。何しろ冒頭からエキセントリックな主人公の言動に目を奪われっぱなしです。モビルスーツも吹かし過ぎなら、カミーユの拳も吹かし過ぎです。

 もう一つは「内なる敵」の存在、この作品では前作で軍事国家だったジオン公国はすでに滅びているので、主人公と対立する敵は前作で勝利した地球連邦に設定しなければならない。戦争の英雄という、通常なら尊敬の対象となるべきブライトがティターンズではほとんど敬意を払われていないという描写に、この集団が主人公らとは異なる価値観を持つことが示唆され、「地球生まれ」という言葉にそれが収斂されている。民間人の住むコロニーで平気で煤煙を撒き散らすティターンズ工場にも、作品では悪のこの集団が一般とは相容れない価値観を持つことの証左となる。

カオルのひとこと:確かに地球連邦に反感を持つ主人公の様子はひしひしと感じますが、さりとてこの主人公に共感できるのかとういと「?」。どうやらコロニーに侵入してきた赤いモビルスーツの男なら理解できそう、という感じになってきます。

継承された描写と「お約束」
 ジェリドの操縦するマークIIが施設に墜落したことで、カミーユ少年の新たな冒険が始まるのだけど、この平穏な日常における非日常の乱入という型もその後のこのシリーズのパターンとなっていったものである。
 ラストにクリーンノアを砲撃する戦艦の武器がメガ粒子砲であることは、前作がミサイルだったことを考えるとこれはスタッフの考える兵器の進歩と言いたいのだろうが、ガンダム作品に登場するコロニーの壁は相変わらず薄いようである。
(レビュー:小林昭人)

カオルのひとこと:カミーユという名前のことを「なんだ、男か」と言われたことに逆上して、ティターンズの士官に殴りかかる主人公。歴戦の勇士らしい、前作の「赤い彗星」を彷彿させるナゾのパイロット。対照的な二人の人物の言動からあれこれ推察しなければならないところが、本作の「わかりにくさ」になっているのでしょう。しかし理解するための描写はきっちりとされています。読解力の求められる作品と言えるでしょうが、描写で見せようとするあまり、一つひとつの場面が冗長になっているのも事実です。

評点
★★★★ 分かりにくいが文脈は感じる(小林)
★★★★ 物語に引き込もうという作者の創意が感じられる(飛田)


関連レビュー「ZZ第1話 プレリュードZZ」脚本:南田操

あらすじ
 あまりに救いのない結末で終わったZガンダムに続編があるとは筆者も思わなかったが、監督富野の政治工作で同時並行していた他のアニメの企画を潰してまでしてZZの制作が強行される。前半はZガンダムでは最後まで説明されなかったこの作品の宇宙開発史、多少改ざんの跡があるようで、一年戦争の死傷者数などがスケールダウンされている。後半はシャアことクワトロ大尉によるモビルスーツの紹介、そして新主人公ジュドーの紹介である。「明るいガンダム」を標榜し、作風に明るさを感じさせる予感はあるが、全般的に作りはかなりチープ、そもそも作品本体でやるべき背景の説明などで丸々一話用いるのは、Zガンダムのあまりの暗さに疲れ果てた視聴者にとっては狐に摘まれた気分。

Aパート:宇宙世紀の解説
Bパート:モビルスーツ、新主人公ジュドーの紹介

コメント
 Z、ZZがファーストガンダムの続編であるということを説明するだけの挿話だが、見れば見るほど、カットに挿入されたファーストがいかに細部まで良く考えられたアニメで、Zがそうでなかったかが一目瞭然で分かってしまうのが玉にキズ。ガンダムUCの作者(福井晴敏)によるとZZは黒歴史だそうだが、シリーズ全体を通して宇宙世紀を説明した唯一のエピソードがここにあることを見逃している。
(レビュー:小林昭人)

評点
 最初から辛いが、こういう挿話がある事自体、Zガンダムの完成度の低さの証明で、続編を制作するのもおこがましい。が、始まってしまったものは仕方がない。


関連レビュー「ガンダムAGE第1 話 救世主ガンダム」脚本:日野晃博

あらすじ
 14年前のUE軍団の襲撃で母を失ったフリットは死にゆく母からAGEデバイスを託される。そして成長したフリットはUEに対抗できるモビルスーツ「ガンダム」を完成させる。コロニー「ノーラ」をUEが襲い、フリットはガンダムを起動させる。

Aパート:フリット少年登場、伝説の戦士ガンダム
Bパート:UE軍登場、ガンダム出撃

コメント
 まず、最初に筆者の持論を言っておくと、「第1話は面白くなくて良いです」、後から面白くなった作品なんか沢山ある。少なくとも、筆者は第1話だけで作品を評価はしない。しかし、ガンダムの場合は「第一話がいちばん面白い(ベストでなくても上位にはランクされる話が多い)」のが普通のため、筆者も「こりゃ大丈夫だろう」とタカを括って見てはいた。しかし、途中でチャンネルを変えたくなるというのは、脚本があまりにも平板で、いや、これは普通だろうと思いつつもワクワクしないこの原因はと見ている途中で眠くなりつつ考えこんでしまった。
 一つ指摘できるのは音響のミス、場面場面に使われている曲がことごとく合っておらず的外れで、そもそも曲自体が少ない。この話は脚本などどうでも良いので、著作権があるならクラッシックを使うとか、とにかく要改善といえる。相当力のある脚本家ならBGMなしでも話で魅せられるが、そこまでの脚本でもない。UEが面白くないとかそういう話はここで評価するのはアンフェアなので、次回以降としたい。すぐに改善できるのは音響である。(レビュー:小林昭人)

評点
★★  無料配信は評価するので、ご祝儀で星2つ。


関連レビュー
「宇宙戦艦ヤマト2199第1 話 イスカンダルの使者」
脚本:出渕裕

あらすじ (人類滅亡まで???日)
 西暦2199年、地球は大宇宙からの侵略者ガミラス星人との戦いに敗れつつあった。しかし、冥王星で壊滅した最後の地球艦隊は囮として起死回生の策「アマノイワトヒラク」に成功しつつあった。命令を受け、火星に待機していた古代と島は飛来してきた異星宇宙船の飛行士サーシャからメッセージカプセルを回収する。

Aパート:冥王星会戦、古代守の最期
Bパート:古代地球に帰還、ガミラス偵察機との戦い

コメント
 40年前のアニメSFの名作「宇宙戦艦ヤマト」のリメイク、その第一話ということで冒頭からの美麗な戦闘シーン、新しく描き起こされ、40年前よりも遙かに精密に表現されているメカには技術の進歩を感じるが、早くも引いてしまうのはAパートのおよそ半分を使って歌を歌いながら突撃する古代守の場面だろう。降伏勧告に「バカめ」と返信した沖田にニヤリと笑って頷くクルーも違うと感じさせる。とにかく、この作品は第一話にして話全体に隔靴掻痒、スッキリしない感が漂うのである。
 話がモヤモヤしている理由は多岐に渡るが、一つは沖田が我々には「あれ」を防ぐことができない、と、台詞に指示代名詞が多用されていること。遊星爆弾の副次的被害といえる「ガミラス植物」の増殖にしても、構成の問題で説明が森雪の台詞一つで済まされ、重要な問題を軽く流してしまうこと。そして、同じ雪の説明で地球軍はある程度の期間はガミラスの攻撃を防ぎ切り、「火星沖では勝利を収めた」とあるが、冒頭からガミラス艦にビームを弾かれているような地球艦隊がどうやって勝ったのか、全く説明がないために状況が分からないことなどがある。それに、メッセージを持参してきたサーシャの服装もあまりにもケバく下品で特に下半身の線がやらしすぎる。その姿態を下から映すカメラアングルもいやらしい。ヤマトはこんな作品じゃない。
 音楽にしても、新曲も含め筆者は曲数が少ないと感じる。2199でリバイバルされた宮川泰の曲は作品で用いられた全てではなく、それらは作品における状況に適合的なものだったが、2199の宮川彬良の曲ではその一部しか表現できない感じである。これでは視聴者の心を揺さぶる幅のあるドラマはできないだろう。
 もっとも、筆者がこういう疑問を感じてしまうのは、筆者がこの作品を偉大な前作、アニメ史の金字塔「宇宙戦艦ヤマト」とついつい比べてしまうからかもしれない。その後に2199支持者による、ある意味罵倒、誹謗、人格否定とも言える品のないコメントを受けてみて考えると、やはり筆者は間違いを犯していたと気づいた。
 要するにレベルが違うのである。筆者がファンやスタッフに正当な指摘をしても分かってもらえるはずがない。「宇宙戦艦ヤマト2199」は前作ヤマトと比較するような作品ではなく、その作話のレベルと言い、ファンの質といい、これは前の作品ではなく、実は、このレビューの上に置いてある別の作品「機動戦士ガンダムAGE」あたりと比較した方が良かったような作品だったのである。 (レビュー:小林昭人)

カオルのひとこと:歌いながら特攻して行く古代守と「ゆきかぜ」にドン引き。そもそも、これが陽動作戦とは。あらかじめイスカンダルと連絡とってたってこと? それだけで、悲壮感が半減する。

評点
★★ これがあの宇宙戦艦ヤマト? 全然違うじゃない(笑)。(小林)
★★★ 絵がきれいなので、+1点。(飛田)


関連レビュー
「Gのレコンギスタ第1 話 謎のモビルスーツ」

あらすじ
 実習で宇宙に登ったベルリたちキャピタル・ガードと女子高生たち、上昇する軌道エレベータを宇宙海賊のモビルスーツが襲う。

Aパート:ムササビ少女登場、宇宙海賊襲撃
Bパート:ベルリ出撃、アイーダ捕虜になる

コメント
 アパンで追いかけられるガンダムらしい機体とコクピットから飛び降りる少女、次は変な教会の場面だが、一話にして思うのは登場する軌道エレベータの映像が何とも「安い」、そして主人公のベルリの登場になるのだが、そこで乱入するチアガール。なお、語りは例の「富野節」、まあ、「クンタラの女子」とか、色々語っていることは分かるが、さっそくその女子を蹴っている描写は初見の女性視聴者は引いてしまう絵ではある。なお、主人公は自衛隊のような組織(キャピタル・ガード)に所属しているらしい。
 構成について書くと、この監督の出世作「機動戦士ガンダム」ではおよそ5分間、世界情勢について解説が続き、視聴者も世界観に入って行けたのだが、以降の富野作品の場合は監督本人が説明が苦手なこともあり、不自然な説明台詞がその代わりになっている。ここはやはりきちんとした説明が欲しいと感じる。前作や参考作の∀ガンダムとは世界観がまるで違っているのだから。なお、先ほどのクンタラとはウィキペデイアによるとこの世界の被差別民のことである。
 筆者としては印象に残ったのはガンダムよりもベルリの戦いを見て発狂してしまう冒頭登場のムササビ少女の様子、「捕虜」と呼ばれているから、この子の国はベルリたちと交戦状態のはずだが、細かいことは説明されていないとはいえ、発狂するその様子はまずいことにガンダム起動の勇姿さえ吹き飛ばし、この話のイメージになってしまっている。
(レビュー:小林昭人)

評点
★★ ここまでワクワクしない第一話も珍しい。一応ガンダムは動いた。

キャピタル・ガード:主人公ベルリが属するキャピタル・テリトリーの自警組織。キャピタル・テリトリーは赤道直下の南アメリカ大陸ギアナ高地にあり、軌道エレベータを中心とした都市国家である。キャピタル・ガードはエレベータを管理する運行長官ウィルミット(ベルリの母)の隷下にあり、隊員のほとんどがスコード教徒である。MSレクテンを持つが、アグテックのタブーに従って攻撃用の武器は保有していない。


関連レビュー
「鉄血のオルフェンズ第1 話 鉄と血と」

あらすじ
 厄災戦から300年後の火星植民地クリュス、民間軍事会社に拾われた三日月とオルカは世間知らずのクリュスの貴賓クーデリアの護衛を引き受ける。しかし、クーデリアを狙い武装集団ギャラルホルンが三日月らのいる基地を襲撃する。

Aパート:民間軍事会社、ギャラルホルンの陰謀
Bパート:クーデリア来訪、ギャラルホルン襲撃

コメント
 冒頭に子供時代の三日月が人を撃ち殺すシーンがあり、おそらくは追い剥ぎで主謀者は兄貴分のオルガ、「次は、どうすればいい?」、目の前で人が死んでも動揺せず、無邪気に問い返す主人公に視聴者が凍り付く場面である。どうも主人公の少年は考えることをオルガという兄貴分に委ねてしまっているらしく、追い剥ぎ時代と同じく、彼の言うがままに人殺しをしたりガンダムに乗ったりしているようである。そしてガンダム搭乗までこの主人公は自分の判断ではなくオルカの指図に従っている。もしオルカがもう少し気が利かなければ三日月はあのままモビルワーカーで戦い続け、第一話にしてギャラルホルンのモビルスーツの刀の錆になっていたに違いない。
 オルフェンズ第一話で語られている内容は多岐に渡るが、こと主人公について言うならば、三日月は殺人の判断まで兄貴オルガに委ねてしまっており、考えていないのだから良心の呵責もなく、平然と人を殺せる。さらに彼は二話で説明される「阿頼耶識システム」を三個も自分の体に埋め込んでおり、モビルスーツ戦では絶対に負けない強者でもある。
 絶対に優位な状況に自分を置き、考えることを止め、「仲間(オルガ)のため」に眉一つ動かさずに人を殺せる三日月はある意味「究極の臆病者」と言えよう。が、果たしてそれで我々は彼を非難できるだろうか。我々もまた会社の上司や政治家、あるいは赤の他人に判断を委ねてしまうことがあり、盲従ということは、実は我々の社会にもあることである。
 「批判」という言葉が好ましくない行為とされているのは最近の傾向である。オルフェンズでも火星独立のデモを行う群衆やクーデリアは現実を知らず、無責任で軽躁な存在として描かれている。そんなものが武器(ガンダム)よりも強いはずはないというのは、「暴力はペンよりも強し」という、これはこの物語全般を貫く、おそらくは制作者の価値観である。

(付記)
 まず一つ言いたいことは、この物語の制作者は、特に場末で絵を書いているアニメータはコミケではなく、自分の意思でSEALDsなり何なりのデモに参加してみてはどうだろうか、警官に囲まれて市役所なり何なりでシュプレヒコールを連呼してみるといい。筆者も参加したが、実は筆者はデモの主催者には何の共感もなかったし、方法論にも疑問を持っていた。しかし、実際に参加してみれば、上記の筆者の考えは全く変わらなかったが、「暴力はペンよりも強し」が、それを言う人間の妄想で、間違いであることはすぐに分かる。そもそもクーデリアはそれを行ったからギャラルホルンに命を狙われているのだ。
(レビュー:小林昭人)

評点
★★★★★ ガンダム登場はインパクトがある。


その他のZレビュー
「機動戦士Zガンダム回顧録」 Z第1話レビュー
「パラレルユニヴァース」 Z第1話レビュー


関連リンク
An another tale of Z 第1話紹介
An another tale of Z 第1話「木星沖海戦」(本編)

<<BACK  NEXT>>

 MUDDY WALKERS◇