MUDDY WALKERS 

yamato

 宇宙戦艦ヤマト(1974)各話レビュー →宇宙戦艦ヤマト2レビュー

 第23話「遂に来た!! マゼラン星雲波高し!!」


あらすじ (人類滅亡まで、あと164日)

 とうとうマゼラン星雲までやって来たヤマトは怪電波に船を操られてしまう。しかし音声通信が入り、スターシャがイスカンダルまで誘導電波で導いてくれることがわかる。まもなくイスカンダルに到着するとわかってヤマトの艦内には楽観ムードが漂っていたが、突然イスカンダルの誘導電波が切れてしまう。イスカンダル星は中心の太陽から約3億キロのところにある第8番目の惑星だということは分かったが、島の説明によれば、そのイスカンダル星が2つ現れたという。イスカンダルは二重惑星だったのだ。スクリーンパネルでその姿を確認した矢先、ヤマトはミサイル攻撃を受ける。

コメント

  われわれはイスカンダルではなく、ガミラスに来てしまったのではないのか。

 古代進のこの一言の衝撃をストレートに受け止めるには、私たちはあまりにもすでに「ヤマト」について知りすぎている。私は小学6年生のとき、ひおあきらの漫画版ではじめて「ヤマト」に触れたのだが、TVアニメを見たのはそれよりずっと後のことだった。だから、アニメでのこの回の衝撃度がどれほどのものだったかは、推測するしかない。思えば巧妙に、これまでガミラス星については隠されていたのだが、今、ガミラスの謎の一つ、一体どこにあるのか、ということが明らかになったのである。ヤマトは戦艦だが、本来の目的は宇宙の航海である。未知の宇宙を探検する、というもう一つの側面が、本作を面白く、そして実に豊かなものにしていると思う。  

 しかし、その衝撃をいつまでも引きずらないのが「ヤマト」のストーリー展開のテンポのよさにつながっている。専用のジャングル風呂でくつろぐデスラー総統に、イスカンダルのスターシャから「ホットライン」で連絡が入る。この二人の会話から、ガミラスとイスカンダルが双子星であること、どちらの惑星も年老いて星としての寿命を迎えようとしていること、そんな中で星とともに滅び行く運命を選んだイスカンダルと、宇宙へ侵略の魔の手をのばして移住しようとするガミラスという立場の違いがあきらかにされてゆく。


 この二人の会話から、デスラーがヤマトを仕留めるための作戦を説明する場面までの脚本は、いわゆる「説明ゼリフ」というもので、会話や演説を通してガミラスとイスカンダルの立場の違いや、ガミラス本星の置かれた危機的状況について視聴者に説明するという目的もある。しかしその自然さ、わかりやすさ、ストーリーの中での必然性という点においては、これらは数多の「説明ゼリフ」の中でも群を抜いた出来であろう。  こうしてガミラス側の事情を知ることで、それまで絶対的な悪として立ちはだかっていたガミラスとヤマトとの関係が相対化されている。そこが、ここからの流れのポイントとなっているのではないだろうか。  

 ガミラスの妨害電波の合間を縫って受信されたスターシャのメッセージにより、ガミラスとイスカンダルとが双子星である確証を得た古代。ただし、ガミラスの妨害によりこれ以上ヤマトを導くことは出来なくなった、だから自力でイスカンダルまで来てください、と彼女は告げた。それを報告する彼に沖田は言う。

 ガミラスを葬らん限りイスカンダルへの道はない。やりなさい、古代。

 そこから彼らは、デスラーの作戦どおり、強力な磁力によってガミラスの地底空洞に広がる濃硫酸の海へと導かれてゆく。下は第三艦橋を溶け落ちさせる猛毒の海、上からは爆雷の嵐。退路を断たれたヤマトに対して、最後にナレーションはこう呼びかける。

 ヤマトよ。古代、どうした。地球は君を待っている。人類絶滅の日まであと164日、あと164日しかない。

 直接ナレーションで古代に呼びかけるほどの緊迫感。改めてその使命を思い出させる。毎回ラストを飾っていた、あの赤茶けた地球を古代はそのとき見ていたに違いない。そんな古代の顔のアップで終わるという異色のラスト。こうして私たちは、古代と気持ちを一つにして、沖田が「やりなさい」と行ったその道へと突き進んでいくことになる。


ピックアップ 「ゼロサムゲーム」

 22話のドリルミサイルの逆回転を機に、立場が逆転したかに見えるガミラスとヤマト。地球に迫るガミラスによって人類は滅びる寸前になっていたが、ヤマトがガミラスに無理矢理連れてこられたとき、そこにあったのは地球同様、無惨な姿を晒す年老いて滅び行く惑星の姿であった。地球はガミラスの科学力によって滅亡の危機へと陥れられたが、ガミラスはそれとは対照的に自然の力によっていまや滅び去ろうとしているのだ。

 ここで、これまでおぼろげに抱いていた、宇宙の征服者としてのガミラスのイメージは瓦解する。ガミラス本星には、七色星団で戦った以上の大艦隊が待っていると思っていたが、デスラーの作戦は違っていた。ガミラスの地底の空洞にヤマトを招き入れ、崩壊しつつある惑星の持つ自然の破壊力によって撃沈しようというのだ。海底に沈んでいた戦艦大和以外に何も持たなかった地球はイスカンダルのスターシャから得た高度な技術で波動砲という最終兵器を持つヤマトを生み出し、今や強者となった。逆に宇宙の覇者であり高度な科学技術と豊かな資源を持っていたガミラスが、目の前に持たざる者としての実像をあらわにする。圧倒的と思われていた敵とヤマトは、実は等しい位置に立っていたのである。滅び行く母星から移住する星を求め、地球を見いだしたガミラス。沖田は古代に「ガミラスを葬らん限りイスカンダルへの道はない」と言ったが、そのガミラスもまた、地球人類を葬らない限り生き延びる道はなかった。イスカンダルへの道には、やるか、やられるかの「ゼロサムゲーム」が仕掛けられていたのだ。

 互いの生存を賭けた戦い。イスカンダルへ行けば、放射能除去装置を手に入れることができ人類を救うことができる。これは生存をかけた航海だと誰もが思っていた。しかしはじめから、実はどちらかか生きるか死ぬかの戦争だったのだ。そしてスターシャにはそれが分かっていた。だからこそ、彼女は地球に波動エンジンの技術と最終兵器波動砲だけを与え、放射能除去装置はイスカンダルまで取りに来るようにと言ったのだ。ガミラスを葬らないかぎり、地球の放射能を除去したところでゼロサムゲームは終わらない。沖田はそれを悟ったからこそ、古代に「やりなさい」と言ったに違いない。それが、臥せっていても担うことができる、そして担わなければならない艦長の重責であっただろう。


関連レビュー
「宇宙戦艦ヤマト2第23話 宿命の対決!」



ヤマト以外には全く興味が無いのだよ。───── デスラー


あらすじ

 彗星帝国との最後の決戦のため、ガニメデから地球にワープしたヤマト、が、そこにはデスラーのガミラス艦隊が待ち受けていた。地球は降伏し、ヤマトはデスラーの攻撃を受ける。


デスラー艦に乗り込む古代

Aパート:デスラー再び、彗星要塞地球へ
Bパート:地球降伏、デスラー艦突入

コメント

 ヤマトとデスラーの戦いは双方とも互いに相手の手の内を知り尽くした者同士、互いに相手の手を先読みして戦いを進めていくが、基本的には艦隊を組み、数に勝るデスラー軍優位である。コスモタイガーや波動砲も封じられ、敵艦への斬り込みを決意する古代だが、すでに彗星要塞は地球に降り立っていた。当時の作画水準とはいえ、不自然なほど巨大な要塞(海面の辺縁ベルトから頂上ビルまでの高さだけで成層圏に及ぶ)に戦慄する場面である。
 航行するヤマトを発見したデスラーは一人哄笑するが、これは通過儀式である。土星での戦いがあまりに凄まじかったため、艦隊に参列したヤマトも宇宙の藻屑になったかに見えたが、デスラーにとってヤマトはガミラス民族復興のため、どうしても倒しておかなければいけない敵であった。ヤマト1艦を葬れないような総統がどうしてガミラス国家を再建できるだろうか。ここに我々は2のデスラーが「さらば」の総統と違うことに気づくことになる。第1話に登場した彼は嘲笑する彗星帝国幹部らの前で「幾年月が掛かろうとも」、必ずガミラス国家を再興すると宣言しているのである。
 つまり、ヤマトを倒しただけでは話は終わらない。ヤマトに勝利した後、彼は同じく生き残ったガミラス民族を率いて祖国を復興しなければならないのだ。この点、ヤマトに敗れ、従容と死を受け入れた「さらば」の総統とは存在の重さ、生の重みが違う。  ヤマトとの戦いはデスラー砲をかわしたヤマトが旗艦に突入し、双方相討ちの様相を呈している。しかし、ヤマトの陸戦隊に乗り込まれてもなお、この人物には戦いを楽しむ余裕が見られるのはなぜだろうか。なお、その間に地球が降伏する。


着水した彗星要塞(どこに降りたんだろう?)

 デスラーの高揚に比べ、行きがかりのように負傷する島とか、古代を探して狼狽する雪とかは少々見苦しい、映画では雪は古代を庇いそのまま死んでしまうのだが、続編制作が決まったこの時点では古代も雪も生き残らなければならない(もちろんデスラーもだ)。デスラーや彗星帝国の描写に比べ、これらの部分の描写はどうにも取って付けた感がある。やはり藤川はこういうウェットな話が苦手なのだろう。
 地球政府の降伏を報告されたズォーダーは一人高笑いをする。確かに地球艦隊は殲滅したが、地球との戦いはテレサの自爆に加え、ゴーランドやナスカ、バルゼー艦隊の壊滅など想定外の苦戦を強いられるものになった。軍事指導者としての大帝の威信に関わる話であり、これらは見敵必殺の彗星帝国神話にも影を落としたと思われるが、地球が降伏した今、全ては終わったのだ。
(レビュー:小林昭人)

評点
★★★★ ヤマトを追い詰めるデスラーの執念!

<<BACK  NEXT>>

 MUDDY WALKERS◇