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 宇宙戦艦ヤマト(1974)各話レビュー →宇宙戦艦ヤマト2レビュー

 第22話「決戦!!七色星団の攻防戦!!」


あらすじ (人類滅亡まで、あと何日の表示なし)

 ドメルの挑戦を受けて立ったヤマトは、七色星団へ向かう。ドメルは空母からガミラス戦闘機隊を発進させ、ヤマトとの間で空中戦となる。そこへ爆撃機隊を瞬間物質移送機でガラ空きになったヤマト上方に送り込み攻撃。ヤマトはどこからともなく現れるガミラス戦闘機隊に翻弄される。そしてついに、ガミラスの戦闘空母から波動砲を封じる必殺兵器、ドリルミサイルを搭載した爆撃機が飛び立った。

コメント

 七色星団を舞台にしたドメル艦隊とヤマトとの決戦は、ドメルのガミラス戦闘機隊への発進命令で始まった。ヤマトはその機影をとらえると、迎え撃つべくブラックタイガー隊が全機出撃。古代も戦闘隊長としてコスモゼロで発進する。しかし、それはドメルの思うつぼだった。つづけで第2空母から出撃した爆撃隊は、ドメルの旗艦に取り付けられた瞬間物質移送機でヤマト後方上空に送り込まれ、がら空きになったヤマトに攻撃を仕掛ける。慌てて戻るブラックタイガー隊を引き連れて爆撃隊が離れていくと、今度は第3空母から次の爆撃隊が送り込まれ・・・と、ヤマトはドメルの作戦にまんまとはまって攻撃され、なすすべもなくボロボロになっていく。
 そして必殺、ドリルミサイルの登場である。これが見事、ヤマトの波動砲の発射口にすっぽりとはまり、ヤマトは万事休すとなる。ここで技術班長真田さんが登場、ドリルミサイルを逆回転させるという秘策を打つのだが・・・何となく前回から頭にわいてきたモヤモヤの正体が、前半を見ると何だったかわかった気がした。

 ドメルの挑戦状を受け取った沖田。決戦は7日後、七色星団で。それはまあ、いい。しかしドメルの側は、ヤマト1隻が相手、相手の最大の武器は波動砲、と分かっているのに対してヤマト側は、ドメル艦隊の戦力は未知数、相手がどんな必殺技を繰り出してくるかもわからない(毎回何やら新兵器を用意してくるといのもある)、そんな状態でどうやって作戦を立てるのか?と思ったのだが、決戦までの間、前話でしたことといえば、七色星団とはどんな場所かの確認、そして沖田が訓示を垂れて決死の水杯を交わしたことだけだ。七色星団にドメルの艦隊が出そろったところで、波動砲をドドーンと一発浴びせればいいや、と安易に考えたわけではなかったと思うが、じゃあどうするつもりなのかという描写は何もなかった。
 そして案の定、周到にハイテク兵器を用意して綿密な作戦を立ててきたドメルに、ただただヤマトはやられるままになっているのである。
 しかし、そんなモヤモヤは、爆撃されて煙を上げるヤマトのある1カットを見て、吹き飛んでしまった。どうしても、製作陣はこの回で一方的に爆撃され窮地に陥るヤマトという状況を必要としたのだ。ヤマトは戦艦大和のよみがえりであり、その運命を追体験するということが、本作のテーマの一つとなっているからだ。
 その、大和の写し鏡のようなヤマトのカットが、下記のものである。次の「ピックアップ」の項目で、このあと私たちが本作を通して体験することについて、振り返ってみよう。


ピックアップ 「歴史の“if”〜逆の立場になったとしたら」

 ドメルとの決戦に際して決死の覚悟を決める水杯を交わして臨んだヤマトだったが、ドメルの綿密な罠にはまって、ヤマトは航空戦力をすべてガミラスとの空中戦に向けてしまい、防空力0となってしまう。そこに瞬間物質移送機で送り込まれた爆撃機。戦艦は航空機に対してなすすべもない。それは太平洋戦争末期に、戦艦大和それ自身が沈められた状況と同じであった。ミッドウェイ海戦、マリアナ沖海戦で空母と航空戦力の大半を失った日本軍は、本土防衛のため、航空機による護衛のない状態で戦艦大和を沖縄に向け出撃させなければならなかった。そして大和は沖縄にたどり着く前に魚雷攻撃を受けて沈没する。ヤマトが航空戦力のない状態で猛攻にさらされるこのシチュエーションは、過去の追体験へと私たちを誘う意味を持っていたのだ。

 しかし、片道の燃料しか積まずに出航したと言われる戦艦大和と違い、ヤマトは絶対にイスカンダルに到達して地球に帰還しなければ使命は果たせない。追体験がそのまま追体験で終わるなら、彼らはここで特攻して果てなければならなかった。ところが、この回で特攻して果てるのはヤマトではなくドメルである。
 その不思議な展開をもたらしたのが、真田によるドリルミサイルの逆回転作戦である。戦艦大和が最後にすがったのは精神主義だったが、ヤマトが頼りにしたのはテクノロジーだった。技術に技術で対抗したのだ。そして、劇的な逆転現象が起こる。逆回転をはじめたドリルミサイルは波動砲から抜け出てそのままドメル艦隊の空母へ直進。大爆発を起こして4隻の空母を全滅させた。


 その直前、ドリルミサイルで波動砲の発射口を塞がれたヤマトを見て、ドメルは思わずこう叫ぶ。「よくやったヤマト、褒めてやるぞ」と。
 ヤマトを窮地に追い込みこの台詞を口にしたドメルは、プロデューサーの西崎義展氏ではないかと思うが、これはヤマトというよりも、ヤマトに投影された戦艦大和に向けた手向けの言葉ではないだろうか。この戦艦大和の最期に対して、(ガミラス帝国が象徴する)西洋諸国からかけてほしかった言葉であり、戦後驚異的な復興を遂げて高度成長期まっただ中にいた当時の日本人が、心の底から欲していた言葉であった。
 しかし逆回転で、状況は一変する。この場だけではない。すべてが逆転したのである。ヤマトは波動砲を使わずして敵のミサイルで敵を滅ぼし、ドメルは最後の手段としてヤマトもろとも自爆する。この逆回転によって、水上特攻作戦で「死」を背負って出撃した戦艦大和は宇宙戦艦ヤマトとなって逆のベクトルを与えられ、過去を払拭し「生きて帰る」船となったのである。

 ドメルは自爆の直前、ヤマトの沖田と通信によって言葉を交わす。この回の沖田はドメルが言うほど素晴らしい艦長には見えなかったが、しかし総合的に見れば、沖田はヤマトを率いてここまでの航海を成功させ、度重なるドメルの罠を打ち破ってきたのである。その間、この決戦も含めて波動砲を、直接敵に向けたことは一度もなかった。木星の浮遊大陸を、デスラーの仕掛けたガス生命体の罠を、ゲールの調教したバラノドンを、そしてドメルの仕掛けたバラン星の人工太陽を撃破してきたが、それは敵を抹殺するためではなく、自らの血路を開くためであった。しかし、ここで立場は入れ替わる。沈まなかった大和=ヤマトは、その最終兵器を何のために使うだろうか・・・?


関連レビュー
「宇宙戦艦ヤマト2第22話 ヤマト、徹底抗戦せよ!」



遅い!報道官が今発表したばかりだ!───── 地球連邦大統領


あらすじ

 大破しガニメデ基地に漂着した戦艦ヤマト、地球艦隊は全滅し、白色彗星は悠然と地球に飛来し、月を破壊する。降伏を決めた地球政府に古代はヤマトの徹底抗戦を決意する。


恐慌する地球市民

Aパート:ヤマトガニメデ漂着、彗星帝国の降伏勧告
Bパート:月の壊滅、ヤマト再出撃

コメント

 前話に引き続き彗星要塞の圧倒的な強さが際立つ展開である。すでに地球艦隊は喪われ、唯一隻生き残った戦艦ヤマトもガニメデで修理中である。彗星要塞は月を砲撃し、その砲撃で月は全球火球に包まれる。しかし、防御幕でもあるガス体を取り払った姿のままというのは、このガス体は構築に時間がかかるのか、艦隊の壊滅した地球軍など敵ではないと見くびっているのか。バルゼーが戦死したので、ズォーダーはラーゼラーを使いに送り、地球政府に降伏を勧告する。
 この時期のSF諸作品の政体にはユニークなものが多いが、ヤマトもご多分に漏れず、宇宙戦艦ヤマトの地球政府は当時の(そして現在も)日本の政体である議院内閣制ではなく、ドイツなどと同じ象徴大統領制である。どうも白人らしい大統領はパート1では存在すらしなかったが(パート1から引き続く地球側幹部は長官だけである)、地球では尊敬を集める行いをした人物なのだろう。大統領の下には首相が主宰する内閣があり、長官は閣僚の一員である。これもまた藤川らの関わる当時SFアニメの特徴なのだが、これらは文官であるにも関わらず大統領を初めとして全員が軍服のような服を着ている。と言うより、作り手はこれを軍服と思っている。
 筆者も別のレビュー(機甲艦隊ダイラガー)で藤堂長官に比肩する人物(若狭長官)が年中軍服のような服を着ているので難儀した記憶がある。正義のヤマトやダイラガーを送り出す政府がイラクのような軍事独裁国家では困るではないか。なので、当時作品を視聴する場合、政府の場面だけは登場人物は全員スーツを着ていると脳内補正することにしている。ただ、ヤマトの場合は大統領の服だけは軍服ではなく、カーネルサンダースの服かコンビニの店員服に見えなくもないので、その点で救いがあるといえる。


どうしてこの服装なのか(地球連邦大統領)

 実を言うと、年齢的な問題でヤマトの制作者も当時の視聴者も太平洋戦争の影響などあり、本当の意味で民主的な社会、豊かさというものを実感できる形では経験していなかった。だから、本当なら理想の国として描かれるべきイスカンダルは前作でも住人一人しかいない寂しい王国として描かれたし、そういう光景は日本沈没など当時の破滅物ではさほど珍しいプロットでもなかった(小松左京の話は筆者には陳腐さすら感じる)。理想の星を描きたくでも、作り手にはそれに対する現実感が決定的に不足していたのである。
 正直、第一話から見てきた身としてはこの状況なら彗星帝国に降伏しても良いのではないかと思える所もある。これがヤマト2199のような地球政府なら文句なしに降伏である。2199が描いたような政府と星、命を賭けて守るほどの価値はない。それに1話ではズォーダーは地球の美しさより人的資源により関心を示していた。どうせ星間戦争に巻き込まれるなら、負けの決まった銀河の一辺境勢力としてのそれよりも、彗星帝国軍の一員として戦った方がまだ見込みがある。地球人もガトランティス兵士として健闘すればデスラーのように同盟者として認められるかもしれないではないか。地球をヤマト2199や2202のように描いたなら、筆者はこれらの作品を全く認めていないが、この選択もアリである。2199では現に藪はガミラスに寝返っている。
 地球政府の降伏を知った古代はヤマト一艦での徹底抗戦を決意する。すでに政府が降伏を決めているのにそれを無視する古代の行動は、これも現在では非難の的にされているものだが、相手があの彗星帝国では降伏した結果は奴隷(第1話)しかないので、これはやむなしといえる。そもそも地球政府は降伏したが、長官はまだ防衛軍に停戦と武装解除を指示していない。
(レビュー:小林昭人)

評点
★★★★ 強すぎる彗星要塞に愕然。

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