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 宇宙戦艦ヤマト(1974)各話レビュー →宇宙戦艦ヤマト2レビュー

 第21話「ドメル艦隊!!決死の挑戦状」


あらすじ (人類滅亡まで、あと215日)

 バラン星の人工太陽落下作戦に失敗し、基地を壊滅させてしまったドメルに対し、ガミラス帝国の軍法会議で死刑が宣告される。しかしその決定をデスラー総統は握りつぶした。ドメルを処刑したら誰がヤマトを潰せるのか、という判断である。デスラーは、ドメルに最後の決戦を挑ませるよう命じる。一方ヤマト艦内では技術班がガミラスのデータを分析していた。真田は古代の問いに対し、彼らは地球への移住を考えているのではないかという推論を披露。バラン星基地を奪われて、そのまま黙ってはいないだろうと予想した。そのころ着々とヤマトとの決戦準備をしていたドメルは、ヤマトに対して挑戦状を送るようゲールに命じる。

コメント

 中間地点バラン星のガミラス基地を壊滅させたヤマト。とはいえ、まだ往路の半分ということは、全行程の4分の1しか進んでいないということである。しかし本作は残すところあと6話、そろそろ終りが見えてこなければならないところである。ここで、ドメルとの決戦がセッティングされた。クライマックスに向かっていこうという、製作陣の意気込みが見えるところである。

 そんな中、今回の見どころは謎の帝国ガミラスの内部事情というところになるだろうか。今までになく、敵将ドメルをメインに据えた構成になっており、決戦を前にその高度な作戦と覚悟のほどを描いて否が応でもワクワク感が盛り上がってくるところである。しかし、微妙にモヤモヤすることの多い話でもある。

 まず最初に繰り広げられるのは、ドメルの軍法会議で死刑を宣告され、それをデスラーがひっくり返すという展開。言うまでもなく無謀な作戦で基地を失ったことが問題視されており、死刑はある意味妥当な判決といえるが、それを握りつぶすデスラーの理由が「他にヤマトを撃破できる人材がいるのか」ということであった。ドメルが有能なのは認めるが、しかしガミラスは思ったより人材がいないのだろうかとモヤモヤするところである。  

 ドメルはデスラーからの命を受け、ヤマトとの決戦の場所を選びはじめる。副官は相変わらずゲール。ゲールの密告でヤマトを仕留め損ねただけでなく、軍法会議にかけられるという憂き目に遭ったにもかかわらず彼を罷免しないとは、寛容にもほどがある。やはり部下の心理には相変わらず疎いのであろうか。これもモヤモヤするところである。

 さらにドメルは、決戦の場を七色星団としたあと、ヤマトを仕留める作戦を披露する。そのために開発された装置・武器が瞬間物質移送機とドリルミサイルである。瞬間物質移送機はその名の通り、戦闘機等を瞬間的に移送させるもので、長年アイデアを温めてきたものだという。そしてドリルミサイルは、ヤマトの波動砲を封じ込めて内部で爆発するというもの。作戦としては、完璧といえよう。しかし、どうも見たところ瞬間物質移送機はドメルの旗艦に据え付けられているようで、同じ空域での瞬間移送ということになる。それなら、べつに4隻集めた空母で要は足りるのではないか、とモヤモヤしてしまう。
 思うにドメルさんは、すごく凝った作戦を考えるのだが、いつもギミックに凝りすぎな気がする。ハイテクによって相手を封じる作戦だが、逆にいうと配下の軍勢の戦闘力をあまり信用していない、という見方もできる。それが彼の将軍としての欠点、沖田艦長にあって彼にないもの、かもしれない。ハイテク戦術のドメル、人間力の沖田。そういう戦いが展開されていくことになるのだろうか。


ピックアップ 「ガミラスの謎」

 今回、バラン星基地を陥落させたことで、ガミラスのデータを入手しヤマトの技術班が解析を始めた描写があって興味を引かれた。そこではじめて、ガミラスの地球侵攻の目的は何かを、真田が推測しているからである。そこで、これまでのストーリーから浮かび上がってくる、ガミラスの謎の部分について、考えてみようと思う。

(1)なぜ地球を侵攻しているのか
 これについては、真田が「地球への移住を考えているふしがある」と言及していた。しかし、それならは不思議なのは、移住先に選んだ惑星を、なぜ放射能汚染させて壊滅的な被害を与えてしまったのかということだ。捕虜を医学的に分析したところでは、地球人と肉体的、生物学的に変わらないというのだから、移住するなら、ありのままの地球であった方がいいはずだ。放射能で人類を滅亡させたあと、すぐに元に戻せる技術も持っているのかもしれない。

(2)なぜあれほどの技術力がありながら、波動砲に匹敵する兵器を持っていないのか
 ヤマトがえっちらおっちら、100日以上をかけてワープを繰り返しながら中間地点バラン星に来たのと裏腹に、ガミラス側はドメルがあっという間にガミラス本星からやってきて、まだ戻って、と頻繁に往復している。ヤマトより格段に進んだ移動距離の長いワープが可能だということだ。しかし、これまでの戦いを見るところ、ヤマトの波動砲に匹敵するような大量破壊兵器を保有していないようである。なぜだろうか。実はガミラス軍は艦隊の戦闘力によって制圧できる、小規模な戦いしかしてこなかったのではないだろうか?

(3)なぜヤマト一隻、スルーして地球を制圧しないのか
 ヤマトがガミラスの冥王星基地を撃破して以来、地球は遊星爆弾の攻撃もやみ、ガミラスの直接的脅威は去ったようである。しかし圧倒的にガミラス軍が優位であることは間違いない。なぜなら地球の軍事力はヤマト一隻を残すのみだからである。それならば、イスカンダルに向かうヤマトなどワープで飛び越して、無防備な地球に艦隊を送り込み、そのまま制圧してしまえばいいじゃないか。
 それではそもそもストーリーが成立しない、という話はさておき、そうしない理由をガミラス側に立って考えてみると、ひょっとしてヤマトが地球を飛び立ったことで、彼らは対話という選択肢がある、ということに気づいたのではなかろうか。ガミラス本国に彼らがたどり着いたとき、その機会を作ることが可能だろう。地球人がそれほどの武力・戦闘力・航海力を持ってガミラス包囲網を突破し得るなら・・・。彼らもまた、ヤマトの来訪を心のどこかで待ち望んでいるのかもしれない。

(4)そもそもガミラス星はどこにあるのか
 ヤマトはイスカンダルに行くことを目的としているのだが、なぜか途中で出会うのはガミラス星人ばかりである。イスカンダル星人には、火星までメッセージを携えてやってきたサーシャ以外誰にも出会っていない。航海長島の不安はさぞかし大きいことだろう。実は薄々見る側は感づいているのだが、ヤマトは推理・謎解きよりもある程度視聴者に事実を開示して、キャラクターたちのリアクションによって盛り上がるという作風であることは、バラン星でも見た通りである。本星ではどんなリアクションを彼らは取るのであろうか・・・?


関連レビュー
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死して大帝にお詫びを、、───── バルゼー

エネルギーが尽きるまで、怒りを込めて撃ち尽くせ!───── 土方竜


あらすじ

 土星宙域でついに激突する地球艦隊とバルゼー艦隊、バルゼーの火炎直撃砲で地球艦隊は窮地に陥り、土星本星に敗走する。一方、ヤマトで彗星を観測していた新米は白色彗星が忽然と消えたことを発見する。


彗星帝国の戦略が冴え渡る話

Aパート:ヒベリオン艦隊の壊滅、地球艦隊の敗走
Bパート:地球艦隊の反撃、土方の最期

コメント

 ヤマト2で最も盛り上がる話、地球艦隊とバルゼー艦隊の決戦だが、彗星帝国の戦略の見事さに感嘆する回でもある。ことこの決戦に至るまで、彗星帝国はいくつかの兵器を秘匿していた。一つは大戦艦の衝撃砲、これまでこの戦艦はでかいだけでヤマトの主砲に為す術もなく串刺しにされる場面しかなかったので、実質的には同艦の主砲とも言えるこの武器の使用はヤマトと同様の宇宙戦艦を持つヒベリオン艦隊を思わぬ苦戦に追い込む。
 もう一つはより強力な武器、火炎直撃砲、これまでこの兵器はあることすら視聴者に知らされていなかった。ガミラスの技術と思われるワープ砲弾を敵陣に送り込む兵器で、その射程はアンドロメダの二倍を誇り、前半はアウトレンジ戦法で一方的に撃破される展開が続く。


次々披露される彗星帝国の超兵器

 土方はヤマトに航空支援を頼むが、もちろんそんなことで対抗できる相手ではない。土方は艦隊に後退を命じる。テレサが提供した情報にはどうもこれらの武器はなかったらしい。が、土方は策を思い付き、バルゼーの艦隊を土星の輪に誘い込む。この戦況で彼にできることはこの程度だったが、氷片漂うリングで火炎直撃砲を炸裂させたバルゼーは土星の輪を一瞬にして蒸発させ、それによって生じた気流で艦列が乱れる。その時には土方の艦隊は気流の影響のないカッシーニの隙間に艦を退避させていた。そして地球艦隊の反撃でバルゼーの艦隊は壊滅、バルゼーも戦死する。ここまでで前半である。


バルゼー艦隊を撃破も即座に彗星本体が攻撃

 三番目の秘密は彗星要塞それ自体がワープできたことである。元より超光速の要塞都市だが、ワープまでできることで前衛艦隊を撃滅して決戦という土方の策は完全に瓦解する。要塞の超重力でヤマトは巡洋艦と衝突して大破し、艦隊も多くが喪われる。が、土方だけはこのことを予期していたのだろう、拡散波動砲で彗星のガス体を吹き払った土方の前に現れたのはズォーダーの要塞都市であった。隠されたいくつかの決戦兵器、そして最強である彗星本体の奇襲と息つく間もない猛攻で、地球艦隊の壊滅は実は戦う前から決まっていたのである。
 白色彗星のワープは映画にもなく、当時でも反則、これはないという声のあったものだが、筆者はこれこそが藤川が第6話から積み上げてきた彗星帝国の軍略の真骨頂と見る。彗星帝国はこの決め手を打つために第6話の緒戦から軍事戦略を進めてきたのだ。圧倒的な「第一撃」で反撃の暇もなく敵軍を壊滅する彼らの戦い方は多くの星々でそうだったように、やはり太陽系でもつつがなく実行されたのである。そういうわけで、筆者は白色彗星のワープは予定の行動だったという見方に与する。


彗星要塞のスケールに驚愕する土方だが、彗星の出現それ自体には驚いていない。

 土方がこの奇襲を予期していたかといえば、これまで見る所、彼は彗星帝国の戦略をほとんど看破していたので、「情報があれば」予期して対応策を打っただろうと思われる。ただ問題だったのは、彼が乗艦していたのが「全自動化戦艦」、ロボット戦艦アンドロメダであったことである。艦の戦闘コンピュータは最も近接する脅威から順番に戦闘を実行していく、バルゼーとの戦闘では艦のコンピュータは大戦艦や敵の旗艦メダルーザに処理を集中しており、はるか離れた彗星の脅威判定は低かったと思われる。最初に彗星の消失を発見したのが「ロボット艦でない」戦艦ヤマトだったことで、土方が白色彗星消失の情報を受けるのはメダルーザ撃沈後に遅れたのである。コンピュータには戦闘「技術」はあっても戦闘「哲学」はない。が、兵は詭道である。
 その間の経緯は映像にはないが、彗星消失(ワープ)の事実を知った時点で土方は発射可能な艦を糾合し、直ちに拡散波動砲の準備を命じている。もし彼の旗艦がヤマトであったなら、彼は彗星への対処を最優先とし、バルゼーと戦いつつ、十分に用意された波動砲列はワープアウトした彗星のガス体のみならず、彗星要塞の本体をも捉えただろう。土方がそうしたという根拠は、突然乱入した彗星に対し、発見したヤマトは波動砲の用意はおろか、僚艦と衝突など為す術もなかったのに対し、旗艦アンドロメダ以下数隻の戦艦は曲がりなりにも彗星に対し、拡散波動砲の斉射に成功しているからである。乗艦の違い、僅かな情報伝達の遅れが致命的な結果をもたらしたのである。


大帝自らが決戦に参加

 しかし、全般としてみれば彗星帝国のズォーダーの知略の方が土方のそれに勝っていたと言えるだろう。戦いは大戦略のレベルでは彗星帝国のペースで進み、土方とアンドロメダは粉砕され、要塞都市は地球への進路を取る。ズォーダーにとってはすでに幾多の星で見てきたこの帝国の戦い方である。
 宇宙戦艦ヤマトのスタッフというのは、特に西崎氏やシナリオなど担当する人間はこういうことは割と真剣に考えていたというのは前作でも見たものであるし、本作でも各所で見られたものである。筆者が彗星帝国の軍略を説明するならやはりこういうものにするし、そもそも「ロボット戦艦」アンドロメダと「人力戦艦」ヤマトの違いは彼らも説明に苦慮する所であった。とどのつまりの最後になって両艦の違いが出たのであり、それは戦闘コンピューターなら正しい判断であったものの、人間にはある閃きや臨機の判断を欠いたもの、それを実行できる艦であったか否か、その僅かな違いが両艦の運命を分けたのである。


アンドロメダは撃沈

 たとえ土方が戦闘中にズォーダーの決め手に気づいたとしても、彼が乗るのがアンドロメダでは艦は形而的な彼の思惟とは無関係にバルゼーとの戦闘を続けたはずで、これではやはり彼は戦闘終了後に彗星要塞のベルトに砕かれる運命にある。あるいはズォーダーはアンドロメダのその弱点を看破した上で、失敗したら自身も戦死の危険(土方が予備の波動砲列を持っていたら第二撃で要塞は崩壊していた)のある彗星本体による斬り込みという戦術を取ったのかもしれない。彼の座右の銘ではないが、ここでは「力(戦闘コンピュータ)に頼る者(地球軍)は力(知略)によって滅ぼされた」のである。軍人であり、地球市民を守る義務のある土方と異なり、彗星帝国は大帝ズォーダー以下全員が日々是決戦の戦士たちなのである。
(レビュー:小林昭人)

評点
★★★★★ ヤマト全シリーズ中最大の艦隊決戦だが、解読する面白さもある。

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