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 宇宙戦艦ヤマト(1974)各話レビュー →宇宙戦艦ヤマト2レビュー

 第20話「バラン星に太陽が落下する日!!」


あらすじ (人類滅亡まで、あと253日)

 いよいよ中間地点バラン星に到着したヤマト。沖田艦長は古代と加藤、アナライザーを偵察に出す。アナライザーは、バラン星が惑星の周りを太陽が回っている変わった星だと指摘する。古代と加藤は基地を発見、敵の攻撃を受けるが、そこで無数の動物の死骸や奇妙な植物を発見した。帰艦した古代は、ガミラスの攻撃に利用され虐殺されたバラノドンのためにも基地を叩くべきだと主張。島は40日以上の遅れが出ているために基地攻撃に反対する。沖田は古代の意見を聞き入れ、後顧の憂いを絶つためとして基地攻撃を命じる。しかしそれは、ドメルの罠だった・・・。

コメント

 中間地点バラン星を目指す旅は長かった。その間、じわじわとヤマトに対して攻撃を仕掛けてきたガミラスのドメル将軍。彼はゲールなどの凡将とは違ってヤマトの「波動砲」という最終兵器を有するがゆえの比類ない強さを率直に認め、それに対応した戦術をすでに繰り出してきていた。その一つが、いかに波動砲を撃たせないか、ということでであり、もう一つが心理的な揺さぶりである。バラン星は、その総仕上げとなる場所となるはずであった。

 目指していたバラン星にガミラスの基地があるとは知らずにいたヤマト側では、古代と加藤が偵察のために出撃。そこでバラン星の「太陽」や奇妙な植物、そしてゲールが使った「バラノドン」の無数の死骸を見た。さらにガミラスの基地を発見。義憤に燃える古代は、犠牲になったバラノドンのためにも基地を叩くべきだと主張する。
 しかし考えてみれば、基地があるのにやすやすとバラン星上空を飛行できたことじたいが奇妙である。本当であれば、それ以前にバラン星の前で艦隊を率いてヤマトを叩くのが筋だろう。基地があった!ということ自体が、ヤマトにとっての心理的揺さぶりとなったのは間違いない。まだ行程は半分を残している。しかしここに基地があるということは、この先はガミラスの勢力下にあるということになるからだ。

 沖田は後顧の憂いを絶つためにも基地を叩こう、と古代の意見に賛同し、ヤマトはバラン星のガミラス基地に向けて進撃を開始する。そこにも実はドメルの心理作戦があった。バラノドンの無惨な姿を見れば、救世主のごとく使命感に燃える彼らは、必ず敵を討つために戦いを仕掛けてくる、というのだ。ゲールがバラノドン作戦を提案したときは鼻で笑って即却下していたのに、ちゃっかりそれを利用するとは驚くべきしたたかさである。それはともかく、ガミラスの勢力圏に入ったということ、そこで見たか弱い生き物の無惨に虐殺された姿に、地球で彼らの帰りを待つ人々の姿を重ね合わせて、ヤマトの面々がいきり立つことを、ドメルは見越していたのである。

 ヤマトが波動砲を撃つ前に撃破する。それがドメルの作戦であった。ヤマトが義憤に導かれてバラン星基地へ進撃してきたところに、人工太陽を落下させるというのである。基地もろとも、ヤマトは爆発霧散するであろう。その罠に、ヤマトはまんまとはまってしまった。しかし古代は、あの太陽が人工太陽であることを見抜いていた。異変に気づき、波動砲を撃つべく艦首を転回させることを命じる。ヤマトが勝つか、ドメルが勝つかは時間の問題となった。

 しかし悲しいかな、ドメルのようなパワハラ系上司は、相手方の心理には聡い一方で、なぜか身内の心理には鈍感である。基地を犠牲にしてヤマトを撃つ、というその作戦を知って、ゲールは青い顔をさらに青ざめさせたにちがいない。彼はドメルにネチネチと嫌みを言われていた。それは確かだ。しかし今回、基地を犠牲にすることをデスラー総統に報告するという行動に出たのは、そんな積もり積もった鬱憤を晴らすためだけではないだろう。ドメルが赴任するまで、あの基地の司令官はゲールだったのだ。彼自身が指揮して、基地を構築してきたに違いない。デスラーの意を受けて心血を注いで整備してきた基地を、ヤマト一隻しとめるために潰されるなど我慢できないことだったのだ。そうした部下の心理を考慮に入れることのできなかったドメル。結局のところ、彼の敵は身内の中にこそいたのである。

 しかし、もしこのゲールの造反がなければ、ヤマトは宇宙の藻屑となって消えていただろう。好敵手として、沖田とドメルは互いを意識するようになる。決戦に向けて、舞台は整いつつある。


ピックアップ 「艦長代理」

 病気療養中の沖田艦長は、このドメルとの最初の直接対決のあと、古代進を艦長代理に任命する。それは、これまでの古代の振る舞いは当然だが、今回のこの戦いにおける古代の働きを見て、その資質が艦長代理に値するとして、任命に至ったということだろう。では、沖田は古代の何を見て、彼を資質ありと判断したのか。3つのポイントをあげて、私の見方を披露したい。その3つとは(1)使命感 (2)決断力 (3)ピンチでの強さ である。

(1)使命感
 艦長代理候補としては、古代か島かというところが上がっていただろう。この二人のものの見方の違いが、バラン星基地を攻撃するかどうかの意見の相違によく表れている。古代はバラドノン虐殺に対する義憤から基地を叩くべきと主張したのに対し、島は行程の遅れを上げて、基地はスルーしてイスカンダルに急ぐべき、と反論した。
 島の考え方は、イスカンダルへ行って地球に戻るというヤマトの任務を考えれば、当然ともいえる冷静な判断である。しかも古代の義憤はドメルに見抜かれており、結果的に彼の罠にかかることになってしまった。
 にもかかわらず、古代の、この義憤による戦いという主張は艦長代理に必要な資質を示すものだったと私は思う。島は航海長としての自分の任務には忠実だが、その枠を越えた視点で全体を見ることを苦手としている。艦長代理としては、その点がネックとなると感じたのだ。

(2)決断力
 今回の古代は卓越した決断力を見せている。偵察行では基地からの攻撃を受けて自分も偵察機で攻撃しようとするが、アナライザーの助言もあって、結局加藤に後を任せて帰艦した(いつも一言多いアナライザーが、古代の指示に無言で従う場面が印象的である)。古代の成長を感じさせる一場面であった。もともと彼は判断の速い人間で、それゆえ自分の判断が正しいと信じて独断専行してしまう、というところがあった。しかし彼の決断力そのものは、秩序の中で生かされるべきものである。人工太陽の落下という非常事態を迎え、即、艦首を人工太陽へ向けさせて波動砲を撃つ決断を下した古代。その決断力もまた、島の弱いところである。古代の成長が、決断力を長所として生かせるまでに至らせたといっていいだろう。

(3)ピンチでの強さ
 決断力とも関わってくるが、古代の強みはピンチのときにこそ発揮される。数字に強く冷静な島は、それが強みである反面、数字に導かれる結果が悪ければ、まだ実際にそれが起こっていない段階でも対処法を失い「ダメだ」と意気消沈してしまうところがある。これは一長一短であるが、古代はある意味直観的である分、数字から導かれる「ダメ」を跳ね返すだけの強さを持ち合わせているのだ。そこに、リーダーシップが取れる者とそうでない者の差異がある。さいごまで希望を失わないこと。このヤマトの任務遂行の上で、それが沖田艦長の一番重視した点ではないか。それに一番叶うのが、荒削りではあるがこの素質を最もよく発揮する古代だったのだ。

 こうして艦長代理を古代に委ねた沖田艦長。ただ、それ以上に彼は、古代の中に自分と似たものを感じていた、ということがあるかもしれない。肉親を亡くして天涯孤独となった者。だからこそ湧き出てくる闘志と熱意。沖田の秘めたる思いを率直に表す古代こそ、代理にもっともふさわしいと思ったにちがいない。


関連レビュー
「宇宙戦艦ヤマト2第20話 ヤマト、奇襲に賭けろ!」



第一次攻撃隊、発進!───── 地球空母艦長


あらすじ

 地球艦隊に数倍するバルゼーの空母艦隊、決戦前にこれを排除すべく、土方はヤマトと空母艦隊に出撃を命じる。一方、ゲルン率いる彗星帝国の空母艦隊は地球艦隊への攻撃を準備していた。


今回は活躍の南部康雄

Aパート:作戦会議、空母艦隊出撃
Bパート:敵空母発見、ゲルン艦隊の壊滅

コメント

 制作も佳境に入った折、脚本家の言い分も割と聞いてもらえているようだ。基本的には藤川戦略(〜第10話)の考えで話が進む。「敵は正面から来る(土方)」というのは白色彗星の戦略の基本思想を読み切った人間の台詞である。映画では地球艦隊には拡散波動砲をぶっ放す以外の戦略がなかった。いずれにせよ、制作者の考えが明快なので、2話構成のこの土星決戦はラスト以外は見やすい話である。しかし、テレザートに5話も割いておいて艦隊決戦に2話とは。
 本邦初登場として地球艦隊に空母があったことが判明する話、しかしこの空母、もう少しマシなデザインにならなかったのだろうか。主力戦艦の半分をぶっだ切って格納庫をくっつけただけといういいかげんなデザインはデコトラか族車のようであり、ヤマトではガミラスが初登場の戦艦空母は史実では巡洋艦を改装した最初の空母フェーリアス、日本の戦艦伊勢などに起源があり、すでにこの時代にさえもっと流麗なデザインの空母は存在していたことから、全く期待してないが2202にはぜひ「普通」の空母を登場させてもらいたいものである。だいたい着艦に失敗したら艦橋に激突するかエンジンに飛び込むしかないなんてデザインは軍艦としてまともじゃない。


いくら一発メカとはいえ、何とも言えない(ひどい)デザインの地球側宇宙空母

 が、2199や2202を作っている連中と筆者とでは軍事的センスがかなり違うので(筆者が下とは思っていない)、どうせアンドロメダに飛行甲板をくっつけたようなくだらないメカでも登場するのだろう(2202は制作予算が乏しいのでヤマト2の軍艦は全部出せない)。シナリオで意地を見せた藤川桂介の爪の垢でも煎じて飲ませたい気分である。あと、デザインが小林誠ならプレステや復活編での罪科、二段式飛行甲板もある。これも実用性皆無のへぼっちいアイディアだ。
 話の進行は2の二年前にチャールストン・ヘストンが主演した映画「ミッドウェイ」に準ずる。まず空母部隊の所在を巡り双方の偵察戦があり、発艦直前の空母に攻撃隊が襲いかかるという展開は日本人にはミッドウェイ海戦でトラウマがあるものであり、この場合は地球空母がやられるのではなくヤマトが勝つので爽快感もある。どうせやるなら映画のように彗星帝国の反撃で地球空母の一台や二台壊しても良かった。なお、格納庫に火が入ったと部下が司令官に退艦を促すのはやはり同海戦を描いた「連合艦隊」。この辺の戦争映画は題材が豊富である。。


なんとも萎える次回のタイトル

 次回のタイトルは「壮烈!土方艦長の死!」、映画のようにやはり負けるのかと見る前から萎えるタイトルである。あの凡作Zガンダムみたいなこのタイトル、もう少し何とかならなかったのだろうか。
(レビュー:小林昭人)

評点
★★★★ 手本にした映画はあるが、爽快感のある話。

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