MUDDY WALKERS 

yamato

 宇宙戦艦ヤマト(1974)各話レビュー →宇宙戦艦ヤマト2レビュー

 第18話「浮かぶ要塞島!!たった二人の決死隊!!」


あらすじ (人類滅亡まで、あと260日)

 イスカンダルへの中間地点バラン星を目指すヤマトは、なぞの宇宙要塞の出現で足止めされてしまう。偵察機を飛ばしてみると、なんとその要塞に近づいたとたん、機体がバラバラに分解してしまったのだ。その原因は、要塞から発信されているマグネトロンウェーブであることを突き止める。宇宙要塞はヤマトの動きにあわせて追随しており、この要塞によって「バラバラ」にされてしまわないためには、要塞内部から爆破する必要があった。技術班長の真田は早速シームレス機を開発し、自ら要塞に爆弾を仕掛ける決死隊に志願する。

コメント

 バラン星に着くまでには、いろいろとガミラス軍の罠が仕掛けられているようである。なぞの宇宙要塞もその一つ。偵察機がバラバラになってしまうことで、これが、ヤマトの航行を阻止するための仕掛けであることがわかる。
 この要塞の仕掛けであるマグネトロンウェーブを見つけ出し、その対策としてシームレス機を開発、宇宙要塞に向けて決死隊が出発するまで、あっという間に話が進む。見るべきところは、一人で行くという真田に対して、古代が偵察に出した隊員を一人死なせてしまった責任を感じ、「あなたを二人目にしたくない」と同行を申し出るところだろう。サクサクと話が進むのは、今回の主眼が真田の過去の回顧談にあるからだ。そして真田と古が二人でヤマトから出撃するまで、開始からわずか5分である。

 宇宙要塞に接近した真田機は、マグネトロンウェーブの発射口に向けてレーザーガンを発射するが、即座にシャッターが閉じて攻撃は跳ね返されてしまう。内部から爆破する必要があると悟った真田と古代は、宇宙要塞内部へ侵入することを決める。要塞内部は不気味な洞窟の迷路のようになっている。そこで真田の語りが始まる。  最初の語りは、古代の兄、守を死なせてしまったことを進に詫びる目的で語られる。宇宙戦士訓練学校の同期で親友だった真田だが、冥王星会戦に向かう古代守の乗艦「ゆきかぜ」を完全に戦えるまで整備できなかった。そのことで、守の死に責任を感じているのだ。
 二つ目の語りは、偵察機の残骸を見て思い出した、という姉の死についてである。月のレジャーランドに遊びに行ったとき、小学生だった真田はロケットカーを自分で運転し、事故を起こして同乗していた姉を死なせてしまったのだ。肉親の死を思い出して動揺するのは、古代だけではなかったのだ。

 宇宙要塞の心臓部に二人がたどり着いた頃、ヤマトはワープの準備を始めていた。マグネトロンウェーブの影響で、船体から装甲がはがれるなどの損傷が出てきたのだ。沖田艦長は島にワープを命じる。そうとは知らない真田は、心臓部爆破の準備をしつつ、次の語りを始めていた。
 三つ目の語りは、科学は人間の幸せのためにこそある、という信念についてである。しかし爆弾をセットしたとたん、周囲から触手が伸びてきて、真田が心臓部に吊るし上げられてしまう。身動きが取れなくなった真田、二人を置き去りにしてワープしようとするヤマト。真田の過去話から、えもしれぬ緊迫感の中へと投げ込まれていく。
 真田が選んだ決着の付け方は、彼の過去話の最初の姉の事故とつながっている。真田も事故によって手足を失っていたのだ。手足に仕込んだ爆弾を起爆することで、宇宙要塞の心臓部を破壊しようともくろむ真田。そのために、古代は真田を置き去りにせねばならなかった。
 そのときの、科学を恨む、という科学者真田の口から出た意外な言葉をどう捉えたらいいのだろうか。科学技術の力で姉は命を落とし、真田自身は生き残った。科学技術によって地球は滅亡の危機に瀕し、また別の科学技術によって救いの道を見いだそうとしている。科学とは、一体何なのか。命を奪うことも、救うこともできるもの。それを使う者の見識が問われる、ということなのだろう。そんな問いかけを、真田の生き様から感じるのだった。


ピックアップ 「群像劇」

 通常テレビアニメは1年を通しての放映であれば50話前後が制作されるが、ヤマトはその半分の話数しかない。1話当たりの制作費をかけすぎたために、当初39話で予定していた構成を、26話に再構成して予算を使い切った、というのがその理由のようである。そのため、全体を通した構成では、地球を発信してから銀河系を出るまでに10話、中間地点バラン星をめざし、到達するまでに10話を費やし、ガミラス本星での死闘、最終目標であるイスカンダル到達から地球帰還までが6話とややバランスが悪くなっている。再構成で縮められたのは、イスカンダル到達以降の話ではないだろうか。
 では、10話を費やした中間地点バラン星までの話に、そこまで重要な展開があったかといえば、戦いという点でみると、異次元空洞やビーメラ星人、宇宙怪獣バラノドンなど、ガミラス軍というよりもSF風味の仕掛けによってひき起される試練という意味合いが強く、ややもすると「あまり重要でないパート」のように見えてしまうことがある。事実、本作のリメイク版である「宇宙戦艦ヤマト2199(2013)」では、この辺りのエピソードは割愛されたものが多かった。


 では、なぜ制作者は、中間地点バラン星周辺にこれほどの話数を割いたのか。18話のコメントを読んでいただければ分かる通り、この辺りのエピソードには、それぞれのキャラクターの内面に迫る話が盛り込まれている。13話では戦禍で両親を失った古代進の過去、14話では島と古代という正反対の性格の二人の友情、15話ではスターシャのメッセージによる使命の再確認、16話ではアナライザーの「恋」を通して描かれる森雪の一面、17話では沖田不在の中での古代の成長、というように。このように、一人ひとりのキャラクターを掘り下げるエピソードを展開することによって、ヤマトは単にイスカンダルの科学によって武装したカッコイイ宇宙戦艦が活躍して人類を救う、というだけの話ではない、多くの人々のそれぞれの戦いと成長を描いた「群像劇」を造り上げることに成功したのだ。
 それは、それまで一人のヒーローを輝かせることだけを目的にしたアニメ作品を、「ひょっとしたら大河ドラマさえ可能ではないか?」と思わせるほど質の高いドラマ性を持ったものへと引き上げていくことになった。その意味で、ヤマトはまさに「金字塔」という言葉のふさわしい作品ではないだろうか。


関連レビュー
「宇宙戦艦ヤマト2第18話 決戦、全艦戦闘開始!」



君は私の作戦参謀ではないのかね、そしてこれは私の命令なのだ。   ───── 土方竜

大ガミラスの総統には、この部屋は少し狭すぎる。   ───── デスラー


あらすじ

 テレサにより進路を妨害されたズォーダーは彗星の増速と地球侵攻作戦の開始を命ずる。接近する艦隊に土方はタイタンに地球艦隊の全艦を集結させる。


集結する地球艦隊と戦艦アンドロメダ

Aパート:バルゼー艦隊来襲、地球艦隊集結
Bパート:焦燥する島、デスラー脱走

コメント

 いよいよ白色彗星の侵攻が開始されたが、前衛艦隊だけでもその規模は地球艦隊の倍を超え、進撃するバルゼー艦隊を見た土方は独断で防衛計画を変更してタイタンに全艦を集結させる。そもそも地球防衛軍の防衛計画がどんなものだったか分からないので、土方の行為のどこが問題か分からないが、古代同様の命令違反を今度は古代を見逃した土方が行ったことで、参謀は長官に司令官の罷免を要求する。「彗星に対しては別の戦略を考えれば良い」という土方だが、後の展開はその彼の予想も超えてしまうのだった。
 いずれにしろ、帰路を急ぐヤマトの艦上で森雪はヤマトのレーダー手や看護婦だけでなく、2で判明したヤマト農園の耕作や乗組員の衣料洗濯に加え、航路計算までやらされていたことが判明。1では山菜採り、3では食料製造工場の工場長までしているが、ヤマト世界の人は多芸多才である。それにしても2の古代は少し空々しい。航路計算はパート1では太田の仕事だった。この古代の未来の嫁に対するサディスティックさはブラック戦艦ヤマトの面目躍如である。
 なお、雪はこのように極めて優秀な女性なので、復活編ではサディスト古代との別居後、艦隊司令にまで昇進している。これは古代よりも早く、旧ヤマトの乗員で司令にまで昇進したのは古代とこの森雪が唯一だが、この場合は古代が防衛軍の退職金を自身の宇宙貨物船「ゆき」に注ぎ込んで旅立ってしまったので、一人残された愛娘の養育費を稼ぐためだろう。とにかくこの人は何でもできるのである。


脱走するデスラー

 多芸な人はもう一人いて、デスラーの副官タラン、彗星が地球に侵攻したことを見て、デスラーはサーベラーを人質に脱走するが、監獄の入り口で「たまたま」居合わせたタランがデスラーを戦闘機に乗せ自ら操縦して彗星を脱出する。しかし、この時、あの場所にこの人物がいたということは、拘禁中のデスラーは牢内での待遇に不平などこぼしているので、チューブカーや戦闘機の操縦のほか、衣類の差し入れとか、シーツの洗濯とか、囚人との面会とかデスラーのために色々していたことが伺われる。あと、剣呑となった彗星帝国とガミラス艦隊の仲介とか。
 デスラー拘禁後も彗星帝国とガミラスの同盟は解消されなかったらしく、この副官は銀河突入パーティーに呼ばれたり、都市要塞を徘徊するなど割と自由だったようである。もはや尺がないが、彗星要塞での生活がどんなものだったかは興味深い。白色彗星の描写は後半の彗星要塞や超巨大戦艦など軍事的機能ばかりが描写され、都市帝国の「都市」の部分にはほとんどスポットが当てられていない。話数があるなら補完が望ましい部分である。
(レビュー:小林昭人)

評点
★★★★ 土方の決断とデスラー脱走は痛快。

<<BACK  NEXT>>

 MUDDY WALKERS◇