MUDDY WALKERS 

yamato

 宇宙戦艦ヤマト(1974)各話レビュー →宇宙戦艦ヤマト2レビュー

 第17話「突撃!!バラノドン特攻隊」


あらすじ (人類滅亡まで、あと263日)

 ヤマトが目指す中間地点バラン星は、恒星のない単独の浮遊惑星で、地表では活発な火山活動があり、地熱によって生息する生物もいるという。そしてそこには、地球侵攻のためのガミラス軍の最前線基地があった。ドメル将軍の赴任によって基地司令から副司令に降格となったゲールは、戦功をあげて失地を回復しようとたくらむ。バラン星に生息する原生生物バラノドンを調教し、大量の個体に1つの隊形を組ませて巨大な宇宙怪獣に仕立てあげ、ヤマトを攻撃しようとした。一方ヤマトでは、沖田艦長の病状が悪化。ついに手術することになるが・・・

コメント

 毎回「中間地点バラン星」として紹介される、黒々した不気味な惑星がどんな所なのか、今回冒頭で詳しく紹介される。前回に引き続き今回も異星の生物が登場するが、それはかなり原始的な生物のようである。恒星のない惑星だから、バラン星は暗黒の惑星ということになるが、そんなところでよくぞ生命が誕生し得たものだ。ガミラス基地の様子を見ると、なにがしかの光が地表に届いているようなので、人工太陽が打ち上げられているのかもしれない(※のちの話で登場するが、この回では特に説明はされていない)。
 ドメル将軍の赴任で副司令に降格させられたゲールは、この原始生物バラノドンを戦いの道具にしようと調教にいそしんでいる。バラノドンは1匹1匹はそれほど大きな動物ではないようだが、無数の個体を集め、1つの巨大な怪獣型の隊形を組んで飛行させ、ヤマトに向かって特攻させようというのだ。このアイデアがどこからきたのかは分からないが、私は見るたびに「スイミー」という絵本を思い出す。大きな魚に食べられないように、小さな魚たちが集まって巨大な魚の隊形を組んで海を自由に泳ぎ回る、というお話だった。しかしヤマト版スイミーは悲惨な結果に終わりそうな予感が早くも高まる。

 このバラノドンを使った特攻作戦をゲールはドメル将軍に提案するが、ドメルはそれよりも地球移住計画の会議だ、とまったく取り合わない。ヤマトの出現によって、ガミラスの地球移住計画は大きく後退した、というのだ。確かに冥王星前線基地はやられてしまったが、宇宙は広大だ。ヤマトを追い越して先に地球へ行ってしまうのもアリだと思うが、そこが彼らの律義さであろうか。ドメルとゲールとの会話からは、ヤマトのもつ潜在力の認識に大きな差があることがわかるのが面白い。

 一方のヤマトでは、日程の遅れを取り戻そうと、何回もワープを繰り返しながら順調に航行を続けていた。しかしその連続ワープが体に大きな負担となったのか、宇宙放射線病という病魔に冒されている沖田艦長がついに倒れてしまう。医務室に運び込まれた沖田は意識を取り戻し、ついに佐渡先生の執刀で手術を受けることに。もしゲールのバラノドンが攻撃してくるとすれば、ヤマトは艦長不在での戦いを強いられることになったのだ。

 そこに現れるガミラス艦。ナゾの宇宙生物が放出され、群れとなってヤマトを襲った。逃げるか、戦うかの選択を迫られる中、古代は戦闘配置につくよう命令を出し、戦う構えを見せる。最初はショックカノンで攻撃し命中したかに見えたが、バラノドンは攻撃されると分離し、また合体して巨大になるという技で立ち向かってきた。
 古代は「自分が責任を取る」と、波動砲を使うことを決意。巨大化し宇宙怪獣となったバラノドンを、見事撃退した。手術を終え、命をつないだ沖田に報告する古代の言葉には、かつてはなかった響きがあった。リーダーの不在という状況ではじめて、責任を負うことの重さを知ったのだろう。
 もう一つ、前回に続いて今回も、地球人とガミラス人以外の宇宙に生きる生命が犠牲になったことがある。バラノドンも命ある存在であった。この戦いに彼らは利用され、そして宇宙の藻屑と消えていった。命あるものを撃つ。そのことの重さを古代自身が知るのは、もう少し先にことである。


ピックアップ 「権限委譲」

 この回ではヤマト側の沖田艦長と古代進、ガミラス側のドメル将軍とゲールという、ともに上司と部下である二人の関係が対照的に描かれている。そこで繰り広げるのは「権限委譲」をめぐるドラマである。
 ドメル将軍の着任で、副司令に降格させられたゲール。ヤマトを撃沈して殊勲を上げることでこの屈辱を晴らそうと、独断専行でバラノドン特攻作戦を実行に移す。しかも事前にドメルに作戦を提案し、速攻で却下されてしまったのを無視して出撃するのである。
 基地指令としての権限がドメルにある以上、命令違反は重大な失点だと思うが、ドメル将軍のリーダーシップにも問題がないとはいえない。彼は着任早々ゲールの誂えた調度品を気に入らないという理由で破壊し尽くすなどパワハラの気のある上司で、ゲールの作戦がヤマトには通用しないと察していながら、その理由を彼に説明して分からせようとはしなかった。もちろん、説明したところでゲールは納得しなかっただろうが・・・。  

 ヤマトの側では、沖田艦長がいよいよ病魔に倒れ、一時的に艦長が不在となってしまう。そこへゲール率いる「バラノドン特攻隊」が襲撃してくる。ナゾのガミラス艦の出現に、艦長のいない艦橋では、逃げるか戦うかで島と古代の意見が分かれた。15話の異次元空洞で「逃げよう」と島の意見に賛同した沖田はここにはいない。そして古代は戦闘配置につけ、と命令する。責任は自分が取る、と口にして。誰かが艦長に代わって責任を負い、命令しなければならない。その権限を彼は自ら担うことを決意したのだ。これまで独断専行が過ぎた古代だったが、このときはそうではなかった。古代の選択に、各班の班長たちは同意したのだ。

 戦いは、波動砲の一撃で決着した。そのときにヤマトはエンジンが損傷してしまう。無事手術を終えて古代や島と面会した沖田に、古代は勝手な判断で攻撃し、ヤマトを損傷させたことを沖田に謝罪した。そこには、権限の重さを感じた男の顔があった。そんな古代に沖田は感謝の言葉を述べる。この先の航海に、自分にもしものことがあったとしても、彼ならば任せられる。老いた男の顔には安堵の表情があった。こうしてヤマトは、イスカンダルへ近づくにつれ大きく成長してゆく彼らを、さらなる試練へ導いてゆくのだ。 


関連レビュー
「宇宙戦艦ヤマト2第17話 テレザート、宇宙に散る!」



あなた方を、阻止します!───── テレサ


あらすじ

 テレザートを離れたヤマトは行路の遊星帯に進路を阻まれる。ヤマトの離脱が遅れていることを見たテレサはズォーダーとの対決を決意する。


テレザートを自爆させるテレサ

Aパート:テレザートの遊星帯、テレサ対ズォーダー
Bパート:テレザート爆発、生きていた彗星

コメント

 白色彗星がテレザートに迫るがテレサは動く気配がない。そもそもこの彗星、第1話のデーニッツの説明だと50万光年を250日で航走できるので、一日の移動距離は2000光年、ヤマト世界の単位である宇宙ノットだと50宇宙ノットだが、この計算法だと1宇宙ノットは約1.67光年/時となり、これは実際のメートル/マイル法の1マイル=1.609キロに近いため、これに換算し直すと彗星帝国の時間は1日25時間と分かるが、ヤマト世界の尺度は伸縮するため、デーニッツらの報告するテレザートとの距離は「まだ」10万宇宙キロ(第1話の説明だと10万光年)である。
 いずれにしろ、「さらば」、「ヤマト2」では白色彗星の速度は超光速であることが前提なので、このあたりどうなっているのだろうと思うが、とにかくうかうかしているとヤマトも追いつかれてしまう速度のようである(ヤマトの最大速力は非ワープ時で光速の99%である)。ヤマトが彗星に捕捉されたことを見たテレサはズォーダーとの対決を決意する。
 「テレザートのテレサにはとかくの噂」、ラーゼラーの言葉だが、どうも幕僚団の様子を見るとテレサについてはその能力を実見した者は大帝ただ一人らしい。サーベラーなどは見くびり切っており、戦いには人や武器が必要だがテレサには何もないと高言するが、「お前たちには分からん」とズォーダーは幕僚らを退ける。覇道についてズォーダーと問答した後、テレサはテレザートを爆発させ、彗星要塞を大破させる。
 実はこの場面、宇宙戦艦ヤマトという作品は映画でもテレビでも完全主義者の西崎氏が始終カットを差し替えたので、放映当時の「本当の」映像が分からないことがある。たしかこの場面はもっと激しい曲だったはずだがと思いつつ、記憶とは違うお通夜のようなテレザート爆発を見て首を傾げる。実は当時はビデオ時代だったので総集編もあるのだ。VHSからDVDへの切り替えは主としてメーカーの都合による強引なものだったので、下請け業者のいいかげんなやっつけ仕事で失われた名作は数多い。
 ヤマトの場合は地球艦隊決戦のシーンも現在のDVDより反撃に際し、「明日への希望」が高らかに流れた放映当時の方が良かった記憶がある。あと、ヤマト完結編のラストシーンも何度も差し替えたため、最終的にはベッドシーンは半減し、クィーン・アクエリアスが説教するという、えらく抹香臭いものになってしまった。とにかく、前話で丸々一話を島とテレサの恋愛話に費やしたのはテレサがその能力を用いてついにズォーダーと対決する、この話のためだったのである。
(レビュー:小林昭人)

評点
★★★★★ ズォーダーとの対決などヤマト2で最も見応えのある話だが、間奏曲が変更されている。現在のDVD版のみの評価なら★3つがせいぜい。

<<BACK  NEXT>>

 MUDDY WALKERS◇