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 宇宙戦艦ヤマト(1974)各話レビュー →宇宙戦艦ヤマト2レビュー

 第8話「決死のヤマト!!反射衛星砲撃破せよ!!」


あらすじ (人類滅亡まで、あと354日)

 冥王星の海へ沈んだヤマト。艦長の沖田は、艦底を上にしてヤマトを回転させ、「死んだふり」作戦を敢行する。そしてメインスタッフは第三艦橋に移動すると、古代、真田、アナライザーらを反射衛星砲爆破の決死隊として送り出した。しかし決死の攻撃を仕掛けるガミラスとの水中戦で酸素供給装置が破損し、8時間後にヤマトには冥王星を脱出しなければならなくなる。
 一行は排気筒を目標に探索を進めるが、なかなか見つからない。真田の要請で、沖田艦長はヤマトを浮上させ、ガミラスに反射衛星砲を「撃たせる」のだった。一方のガミラス側では、シュルツ司令が、ヤマトの動きの不審さに気付きはじめる…。

コメント

 シュルツ司令の死力を賭けた攻撃と反射衛星砲の前に、あえなく沈む運命かと思われたヤマト。しかし、これもまた沖田の「作戦」であった。7話で「波動砲使わない宣言」をして、初となる本格的な攻略戦を戦い始めたヤマト。8話では、ヤマトの意外な使われ方が一つのキーとなっている。海洋に浮かぶ戦艦という経歴を持つヤマトだが、実は潜水機能も持ち合わせていたのだ。
 第2話で沖田が古代と島に説明していた通り、ヤマトは「宇宙戦艦」とはいいながら、本来は居住可能な惑星への移住を目的にした宇宙探査線であった。あるいは、地球の海のような海洋を持った惑星を想定し、本来宇宙戦艦には必要とされない潜水機能まで、装備されていたのかもしれない。この機能を沖田は生かして、敵の目を欺くことに成功したのである。

 ここで沖田は、古代らを決死隊として冥王星基地へ送り出し、反射衛星砲の爆破を命じる。8時間というタイムリミットが、ストーリーを否が応でも盛り上げていく。一方で、ガミラス側はデスラー総統からのプレッシャーで、ヤマトを沈めなければ生きては帰れない、という状況に追い込まれている。双方とも、生きるか死ぬかの大決戦という展開になってゆくのである。

 反射衛星砲が厚い氷の下から発射されていると見た真田は、発射口のそばに排気筒があるはずだと、それを目印に探索を始める。排気筒を見つけるために、わざと反射衛星砲を撃たせる真田。反射板が開いてヤマトに照準を合わせていることを見抜いた沖田。直撃をまぬがれて、反射衛星砲爆破まで無事でいることができるのか、ヤマト浮上の8時間というタイムリミットまでに、RPGのダンジョンよろしく仕掛けがいっぱいの基地を通り抜け、反射衛星砲に爆弾を仕掛けることが出来るのか、ギリギリの攻防を手に汗握りつつ楽しむことが出来る。

 7話では艦隊とミサイル迎撃による戦い、そして続く8話では決死隊による潜入作戦。多彩なアイデアを盛り込みつつ展開する冥王星基地攻略戦は、まさに太陽系内での戦いのハイライトであろう。そこには、地球に向かって遊星爆弾を発射し続けてきた地球攻撃の最前線基地、という大きな位置づけがある。そして物語の最後には、沖田艦長の「波動砲使わない宣言」が、たとえヤマト乗組員初の戦死者を出す犠牲を払ったとしても意味があったと感じられる、ハートウォーミングな一コマも用意されている。


ピックアップ 「原住生物」

 ヤマトの世界の太陽系は、私たちが知識として知っている太陽系よりもはるかに生命の豊かな場所として描かれている。その一つが、木星の浮遊大陸に生い茂る原生林であり、もう一つが、冥王星に生息しているアメーバー状の原住生物である。私たちの現在の知識では、太陽系内には、地球外生命体は「いない」というのが常識としてインプットされている。そのために、木星や冥王星に動植物が生息している様子が描かれているのを観ると、どうしても作品自体を「古く」感じてしまうということがある。
 しかし、地球外生命の存在が、完全に否定されているわけではない。バクテリアなど、微小な形の生命体が生息している可能性は、まだ否定されていない。
 一方で、ガミラス星人という架空の地球外知的生命体については、今でも特に違和感を感じることなく受け入れることが出来る。これはなぜだろう。いまだ、地球外知的生命体が存在している可能性を示す証拠を人類は得ていない。しかし否定もされていない、というだけのことで、冥王星のアメーバーに比べてガミラス星人がより現実的だ、ということは本当はないはずだ。
 今、この太陽系内の原住生物をどう捉えるか、ということも大切なポイントかもしれない。少なくとも当時はまだ今ほど太陽系の各惑星について、探査が進められておらす、その姿も不明な部分が多かった。そんな中で、製作者は太陽系を、生命のある世界として描き、さらには、これらを「守るべき価値のある環境、生態系」として位置づけた。1970年代には、まだ環境問題という視点も、環境保全、生態系の保護という課題も認識されていなかったように思う。その中で、この先見性には、近い将来に向けた問題提起、というSF作品ならではの提示が見られるという意味で、非常に価値のあるものだと思う。その意味で、原生生物のいる太陽系、というヤマトの世界観は、重要な作品のエッセンスの一つになっているのではないだろうか。


関連レビュー
「宇宙戦艦ヤマト2第8話 宇宙気流!脱出不可能」



あ!白色彗星が! 助けて、早く!───── ゴーランド提督(声色)


あらすじ

 太陽系を離脱したヤマトは本格的にメッセージの主とのコンタクトを開始する。彗星帝国ではゴーランドの艦隊がデスラーの制止を振り切ってヤマト攻撃に出撃する。一方ヤマトはワープ計算を誤り、サルガッソーに艦を突入させていた。


今回が初登場のテレサ

Aパート:ゴーランド出撃、宇宙気流
Bパート:サルガッソー、ヤマト対ゴーランド

コメント

 この話のヒロイン、テレサは強大な超能力者なので、通説ではその力を恐れて彗星帝国は彼女をテレザートに幽閉ということになっているが(映画版)、より優先する目的は彗星本体の侵攻開始前に帝国の情報を被侵略星に与えない、情報封止なのではないかという傾向が大きいのがTV版である。現にサーベラーはヤマトに接触してもテレサが地球に加担するとは考えていなかったし、テレザートを基点に艦隊を配置し、ヤマトを迎え撃つのは地球に連絡しうる文明星が彗星の方向には他になかったという事情に見える。この作品の制作者はこういうことは割とマジメに考えているのは前作からそうである。彗星帝国はヤマト諸勢力中では最も軍事戦略に長けた戦闘集団である。「敵を知り己を知れば百戦危うからず」、まるで武田信玄の軍隊のように、攻撃する前に敵については調べ上げている彗星帝国軍だが、実際にここまでやられたなら、ほとんどの国は為す術もないだろう。
 彗星帝国の科学力はガミラス以上というのが巷の評価だが、冷静に見るとガミラスより少し劣るようであり、ガミラス艦では進入して航行も問題ない異次元空間への進入をゴーランドは避けている。デスラーがゴーランドの上官とされていることから見ても、ガミラス軍の実力は個々では彗星帝国に勝っているのだろう。ゴーランド艦の妨害電波もデスラー艦の装置が易々と無効にできることもある。また、その戦力も本体の彗星と直衛艦隊以外は皆無であることから、実は戦力も大きくなく、情報戦略の必要性はより大きいと言える。これがガミラスだったら、特に2のデスラーだったら先ず宣戦布告して攻撃するだろう。この辺の両者の戦略観の違いがデスラーとゴーランドの対立に発展する。武に偏った彗星帝国より、星間国家にふさわしいポテンシャルを持つのは実はガミラスの方である(本作では流浪の私兵集団だが)。なお、ヤマト諸勢力中でヒロインの声色まで使ってヤマトを罠に掛けたのは彗星帝国が最初で最後である。情報というものがこの帝国に取って重要であること、あるいは彗星帝国それ自体が情報によって立つ帝国ではないかと思わせる一コマである。
 宇宙戦艦ヤマトの謎単位「宇宙キロ」、この尺度の実際は良く分からないが、第1話の説明では1宇宙キロ=1光年ほどであった、が、太陽系内でも頻出しており、どうもこの単位は事情によってかなり伸縮するようである。おそらくは実際の長さに光速度、時間をパラメータとする次元単位なのではないかと思われるが、この伸縮する単位は江戸時代までは我々の生活でもおなじみであり、「不定時法」と呼ばれる。時代劇での「巳の刻」、「辰の刻」などがそれであり、ちなみに「草木も眠る丑三つ時」とは、夏至ならば午前2時半、冬至ならば3時半を指す。おそらくは銀河からの距離や航行速度によって、宇宙戦艦ヤマトの攻撃力(主砲射程)は増減するのだろう。
 制作者もその辺ハッキリさせたかったのか、気流を抜け出たヤマトとゴーランドの戦闘はこの作品唯一の絶対速度戦闘(戦闘に際し自艦の速度を相手に合わせない)である。やはり双方ともあまり命中せず、ヤマトの離脱で痛み分けのような形で戦闘が終わる。そしてテレサが通信し、メッセージ受信後始めてヤマトはテレサとの交信に成功する。なお、このテレサは全裸ではなく、より落ち着いた感じで青いドレスを着用している。この番組が放映されていたゴールデンタイムのお茶の間への配慮である。この点でも2199などとは品格が違う。
(レビュー:小林昭人)

評点
★★★ 空間戦闘など野心的な部分もあるが、テレサのキャラクターは映画とかなり違う。

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