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 宇宙戦艦ヤマト2199(2013)各話レビュー →宇宙戦艦ヤマト2022レビュー

 第24話「遙かなる約束の地」 脚本:大野木寛


あらすじ  (人類滅亡まで211日・収容所惑星から19日)

 ついにイスカンダルに到着した戦艦ヤマト、しかし、女王スターシャは彼らにコスモリバースシステムの引き渡しを拒絶する。途方に暮れるクルーに看護婦の原田はイスカンダルの海での水泳大会を提案する。

Aパート:イスカンダル到着、水着大会
Bパート:リバースシステムの謎、古代守の遺言

コメント

 盛り上がらない大決戦の後、ヤマトはガミラスを後にしてイスカンダルに到着するが、彼らを出迎えたスターシャの態度はつれないものである。渡した設計図を悪用し、波動エネルギーを転用した兵器を持つヤマトは彼女には許せない存在であった。リバースシステムの引き渡しを拒否された古代らは看護婦原田の提案でイスカンダルの海で憩いの時を持つ。ユリーシャは森雪にリバースシステムの秘密を明かすが、それはただの環境再生システムではなく、稼働に「星のエレメント」を必要とする機械であった。そのためにヤマトにイスカンダルまで来てもらう必要があると言った彼女は雪を抱擁する。

 ヤマトのスーパーガール、森雪の正体がまた分からなくなる挿話である。2199でのこの女性は旧作のような良家の子女ではなく、記憶を失った人形のような存在である。一応土方により、彼女に両親がいたことは示唆されているが、ユリーシャの接し方はかねがねファンの間で噂されていたもう一つの説、雪が彼女のクローンでリバースシステムの人柱、エレメントとして生まれた女性なのだと示唆するものになっている。そうでなければ、彼女がわざわざ雪だけ呼び出して秘密を説明する理由は不明であるし、抱擁も意味のないものである。いずれにしろ、スターシャは迷った挙句にシステムの引き渡しを決めるので、この辺はロクに説明もされずにサラリと流れてしまう。

 イスカンダルでのもう一つのサプライズは旧作でも第一話で戦死したはずの古代守の生存だが、2199では守は冥王星でも死んだが、運ばれてきたイスカンダルでももう一度死んでおり、ヤマト到着時には草葉の陰である。介抱したスターシャと彼の関係はユリーシャには思わせぶりな挿話を入れるスタッフも適当で、実は良く分からない。スターシャが守の元恋人新見を知っていたというのも、またメアリー・スーかよと余計な夾雑物を入れられた気分になる。守は死んだ後、イスカンダルの科学でリバースシステムの核にもなる光の玉にされてスターシャに愛玩されていたようだが、システムの光の玉予定者はすでに森雪という別の女が確保されていたので、この余計な地球人古代守の存在は別に死ななくても良かったじゃないかというものである。改造に伴い波動砲は封印され、戦艦ヤマトは最大の武器を失うが、ガミラスはすでに敵ではないので、この兵器ももはや無用の長物である。
(レビュー:小林昭人)

カオルのひとこと

 あっちが「たった一人の戦争」なら、こっちは「たった一人の王国」だ。なぜこうなってしまったのか、ヤマトのクルーが誰も不思議に思わない不思議。スターシャの冷たさに心も凍る。 

 まるで墓場のような陰気なイスカンダルに辟易。(小林)
 なんだかんだで、遊びに来たようなお気楽な話に拍子抜け。(飛田)


関連レビュー
「宇宙戦艦ヤマト2202第24話 ヤマト、彗星帝国を攻略せよ」


あらすじ

 トランジット波動砲を彗星都市に撃ち込んだヤマトはガミラス艦隊の協力を得て要塞都市の内部に潜入する。次々とクルーが倒れる中、ヤマトと古代はズォーダーの玉座に迫る。

Aパート:ウルトラ波動砲の攻撃、ガミラス艦隊来援
Bパート:土方ほか死亡、ズォーダー対古代

コメント

 テンプレ通りにヤマト乗員が敵の攻撃に倒れていくが、「さらば」と違い何の感慨もペーソスも感じないのは各々のキャラにつききちんと物語を積み上げてこなかったからである。これもテンプレ通りに天井が崩れて下敷きになる土方も「あ、そう」で済まされてしまうような軽さである。あと、加藤が長々と独白した後に死に、アナライザーが壊れるが佐渡は死なない。が、ロボットを愛惜する佐渡の心情も前作2199から実は描写もなかった。

 それと、物語と関係ないこととして、設定担当の小林誠が再構成した彗星帝国の軍事力がなんとも見にくく分かりにくく、それゆえフラーケンらの行動や土方の遺言も意味が分からず、絵としてもゴチャゴチャとして見にくいものになっている。この作品の脚本と副監督は才能のない者の常として前作についてはあれが悪いこれが悪いと誹謗するくせに、いざ自分で作るとなると前作すら実は理解しておらず、乗り越えられないことがある。

 クローンであるガトランティス人が古代やデスラーの説得により人間であることに目覚めるという展開は、正直、この壮大なスペースオペラの基本的な筋にしては陳腐で単調すぎるものである。前回のレビューでリメイクしたら書くべきこととして、旧敵ガトランティスの補完を提案したが、それですべきはガトランティス帝国の単純化、ボッチ星人化ではなかった。
(レビュー:小林昭人)

カオルのひとこと

 白色彗星前面に出たヤマトはトランジット波動砲を発射する。そのすさまじい威力によって白色彗星にダメージを与える。そこへガミラス艦隊が多数ワイプアウト。潜宙艦を使ってヤマトを白色彗星中枢部へ送り込む。徳川機関長、アナライザー、突然の苦戦で死傷者多数。落ちてきた沖田の銅像で頭を打った土方は次の艦長に古代を指名して果てる。
 そんなヤマトを導くのは桂木の念力という相変わらずのオカルト展開。超兵器ゴレムまで連れていってくれるという親切設計だが、さすがにそれでは容易すぎると思ったのか、桂木がやられて古代は苦境に。ヤケを起こしたズォーダーがゴレムを破壊して自決モードになってしまう。
 時折見られる原作準拠の場面やセリフが、かって唐突ツギハギ感を強めている。有無を言わさぬクライマックスだが、相変わらず何が起ころうとしているのか、見ている側は置いてけぼりである。

評点
 キャラの死が軽い軽い。(小林)
 メカメカがメカメカしすぎで、決戦場面なのにあまり人の気配がない。(飛田)


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