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 宇宙戦艦ヤマト2199(2013)各話レビュー →宇宙戦艦ヤマト2022レビュー

 第23話「たった一人の戦争」 脚本:森田繁


あらすじ  (人類滅亡まで211日・収容所惑星から19日)

 サレザー太陽系にワープアウトした戦艦ヤマト、目前に二重惑星ガミラスとイスカンダルを見出したクルーだが、すでにその時デスラーは究極兵器デスラー砲の射程にヤマトを収めていた。

Aパート:デスラー砲の攻撃、ヤマトバレラス突入
Bパート:森雪の破壊工作、バレラス2崩壊

コメント

 旧作で言うガミラス本星決戦だが、2199のスタッフは心優しいせいか、旧作のあのヤマトが惑星の火山脈を撃ち抜き、星そのものを崩壊させる大決戦は「残虐すぎる」ということでやりたくなかったようである。旧作と異なり、ガミラスの諸将校についても応分の尺を割いている2199の場合、個々のキャラにはスタッフの側にも感情移入があり、旧作のように善人も悪人も共に滅ぼしてしまう決戦はやりたくなかったという気持ちは分かるが、旧作でも2199でもデスラーを権力の座に着けたのは他ならぬガミラス国民なのである。デスラーの帝国はその後宇宙の所々に侵略の手を伸ばし、地球などは半ば滅亡されかけた。国民がその暴虐のツケを支払うことは当たり前のことで、旧作はこの場合説明になっていたが、2199の場合はデスラー一人にツケ回しをしてガミラスはほぼ無傷という、これはこれで納得の行かない筋立てである。2199の大決戦の生ぬるさ、煮え切らなさの原因は大部分この場所にある。生き残ったヒスを含むガミラス国民は戦争の被害者ではなく、デスラー共々侵略に加担した当事者なのである。

 それは置くとしても、ヤマトがデスラービルに突入する場面は、第一話では東電に配慮して放射能設定を無理やり除去したスタッフだが、この場面はどう見ても911同時多発テロ事件における旅客機突入の場面にしか見えない、別の意味で無神経な映像である。実のところ、筆者はこれを見て気分が悪くなった。放射能が東電への配慮から除かなければいけない設定だというなら、同様にこのテロで肉親を失ったアメリカ国民の痛みにも配慮すべきなのである。これではアメリカでも売れないだろう。ヤマトがビルに突っ込む場面で思うのは、制作しているスタッフが過去にテロの映像を見て、「これカッコイイだろ」というバランスの欠けた自己満足である。この映像は話の中の位置づけはともかく、視聴者にそう思わせてしまうからダメなのだ。

 動けないヤマトにデスラーは宇宙要塞バレラス2の633工区を落とし、首都もろともヤマトを破壊しようと目論むが、これは波動砲で阻止され、要塞も一人潜入した森雪の破壊工作であっけなく破壊されてしまう。要はこれだけであり、これでヤマト最大の敵は話から退場してしまう。本当にこれだけのお話である。

 あと、冒頭のデスラー砲の攻撃で巨大惑星エピドラが破壊されるが、惑星系でこんなことをした場合、ガミラスもイスカンダルも軌道が狂い、仮にヤマトが星を救っても、その後の両星には恒星サンザーに呑み込まれるか、軌道を外れて宇宙の放浪者になるかの悲惨な運命が待ち受けているはずである。ストーリーでは全く触れられていなかったが、少なくも現代の惑星科学の知見を持っているなら常識として知っていなければいけないことで、ここでも見せ場重視のスタッフの歪んだ心証が垣間見えて気分が悪い。
(レビュー:小林昭人)

カオルのひとこと

 デスラーのご乱心と、突然ガミラスを救う使命?に目覚めたヤマトに驚愕。ガミラスのビルに突っ込むヤマトにも、突っ込まれてもびくともしないガミラスのビルにもびっくりするが、そのあと波動砲をぶっ放すなら、突っ込む前に撃てば良かったのに?! 支離滅裂さに、もう、ついていけません! 

 デスラーの変心も変なら、話も変、これで決戦と言われても、、(小林)
 ここまでのヤマトの旅を全否定するようなお話。悪を描けない制作陣に失望。(飛田)


関連レビュー
「宇宙戦艦ヤマト2202第23話 愛の戦士たち」


あらすじ

 デスラー艦でデスラーとミルと対峙した古代とキーマン、森雪が撃たれ、ミルの言葉に古代は戦争終結の希望を見出す。地球に到達した彗星は地球人に全面降伏を促す。

Aパート:森雪負傷、ミルの死
Bパート:デスラー去る、彗星地球へ

コメント

 すでに多くの指摘があるが、説明台詞のウザ長さと飛び飛びの画面展開はもはや作品の体をなしていない。森雪はどこを撃たれたのか分からないし、ミルは小難しいことを言い始めたので終わる前に撃たれるなと思ったらやっぱり撃たれたし、それに場面の三分の二がデスラー艦の艦橋で、一場面にこんなに長く尺を取っては見ている側がダレてしまう。おかげで大帝継承の奥義というガトランティス最大の秘密が何の感傷もペーソスもなく流されてしまう。

 実は脚本の福井晴敏がその能力もないのに私物化して継承したとしている作品、機動戦士Ζガンダム以降のガンダム作品には、監督の分裂症から背景につき「まじめに説明をしない」という悪癖があった。重要な場面でも説明はせいぜいが10秒か20秒、すぐに銃弾が飛んできて講師が死ぬか行方不明になるかの場面は富野アニメでも最悪の演出の一つで、この種の場面を見る度に筆者などは「あ〜あ」とアクビが出るものでもある。そういうものだけはしっかりと踏襲しているので、実にヤマト的でないミル射殺の場面は文字通り「ミルまでもない」ものになっている。

 実は過去の作品では、リメイクして語ってもらいたいことはもっと他にあった。地球人と異なるがかなり似たところもあるガトランティス人の暮らしとか、首都が宇宙を超光速で疾駆している彗星帝国がどういう方法で帝国を維持しているかなど、前作では尺の都合で端折られ、説明不足の部分は他にあった。が、このスタッフはこの作品を再構築するのに必要な要素を全く分かっておらず、安直にどこかの作品からの登用借用で済ませてしまう。
(レビュー:小林昭人)

カオルのひとこと

 デスラー艦とヤマトとの白兵戦で、ミルがズォーダーの後継者であることが明らかになる。引き金を引くかどうかの心理テスト、そこに古代が乱入し、ミルに和平交渉を申し入れる。引き金を引くか引かないかの話で逡巡する中ミルが引き金を引き、古代をかばって雪が負傷するお約束展開。その姿に何かを感じたらしいミルとズォーダーらの屁理屈が延々続くが、彼らの会話の何にフォーカスすればいいのかさっぱりわからず。結局ミルは古代と和解に至るが、その矢先ガミラスの雑兵に撃たれて死んでしまう。
 こうして、和平の道は絶たれ、どちらかが滅びるまで終わらない戦い、となっていくわけだが、そもそも地球は白色彗星帝国に比べて圧倒的な弱者である。和平などとは、それなりに対等な戦いをしている相手でなければ成り立たないであろう。
 そうこうしているうちに、白色彗星艦隊は地球全土を席巻する。ここにきて、地球の人々の「そうだ、我々にはヤマトがあるじゃないか」という展開。今も時間断層で宇宙戦艦を絶賛量産中なんですけど?!

評点
 構成が悪くアニメ作品として意味不明。(小林)
 話になっていない。福井某の作品構想を聞かされている感じ。(飛田)


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