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 宇宙戦艦ヤマト2199(2013)各話レビュー →宇宙戦艦ヤマト2022レビュー

 第20話「七色の陽のもとに」 脚本:森田繁


あらすじ  (人類滅亡まで245日・七色星団あたりで1日)

 イスカンダルへの最短距離を進むヤマトの目前に立ち塞がるドメル老朽艦隊、恒星風の吹き荒ぶ複雑な空間でドメル機動部隊とヤマトの決戦が行われる。一方、ザルツ人特務部隊を載せたフラーケンの潜宙艦は損傷したヤマトの背後に迫りつつあった。

Aパート:ドメル艦隊の攻撃、ザルツ特務部隊の潜入
Bパート:森雪誘拐、ドメル自爆

コメント

 つくづく余計なことをしてくれたというのは、ヤマトとドメル艦隊のこの大決戦、デスラーが戦闘中のヤマトからユリーシャを拉致しろなどという余計な指示をしてくれたおかげで話が間延びしてしまったことがある。そもそも拉致が目的ならヤマトは撃沈せずに拿捕すべきだし、そうなればドメルとドメル部下たちが「チャレンジ」よろしく、あの手この手でヤマト撃沈に勤しむ必要もなくなる。ドリルミサイルも原作ではドメルに散々やられてほぼ戦闘不能の時にとどめとして使われた兵器だが、この拉致プロットのせいでまだヤマトが健在のうちに投入され、爆撃機は撃墜され、古代に「何なんだ」と言われる体たらくである。そして、この大決戦にもかかわらず百合亜の「保科くん、いやーっ!」で話はいつものGdGdモードに突撃していく。誰もこんな話見てえんじゃねえ。

 戦闘シーンは金が掛かるので思いの外短い、一応、宇宙戦艦ヤマト最大の戦いなのだが、第一空母は話の半分までに撃墜され、また、空母の壊れ方の安っぽいことちゃちいこと。ポリゴンをパラパラ飛ばすなんざ、まるでプレステのゲームである。前半部分も半分はザルツ特殊部隊の活躍の場面で占められ、後半も出撃する雷撃機のキャノピーが閉まる場面は絵がカクカクしていてローコストを感じる場面である。ホントは制作者たち、原作準拠のこの話はお義理で実はあまりやりたくないんじゃないだろうか。

 ヤマトの戦闘能力が失われていないので、ドメルが艦隊で総攻撃と言ってもヤマトはあまり追い詰められておらず、一応ヤマトより強いはずのドメラーズIIIも以前の強さはどこへやら、ヤマトとの砲撃戦で大破して沈んでしまう。さらにドメルは自爆するが、復旧した波動防壁のおかげでヤマトは大して傷つくこともなく戦場を後にするのだった。

 沖田と対面したドメルの台詞が棒読みで、これは「ホントはこんな話じゃないんだけどな」と思いつつ、仕事だからしゃあないという大塚明夫のため息が聞こえてくるような熱のない場面である。そして、最後にメガネを光らせたり、美少女がポツリと漏らしたり、ユリーシャが名乗ったりして締めるのは、もう見飽きたいつもの2199のパターンで、これは中学生の書く、ラストになると夕日が沈む小説と同じような陳腐な作劇である。筆者もそういうのを添削したことがあるが、ハッキリ言って初心者レベルの演出であって、こんな作品に付き合わされる声優やアニメータが気の毒である。
(レビュー:小林昭人)

カオルのひとこと

 一番盛り上がるはずの七色星団の大決戦、なのにユリーシャと間違えて森雪誘拐がメイン。松本零士の女性キャラがワンパターンというのをこんなネタにするなんて、ヒドイわ。

 絵にも演技にも力が入っていないので、見ていてもそんなに感心しない。
  18話の半分でも力を入れてくれれば。(小林)
★★ 地球人とイスカンダル人の見分けもつかない特務部隊隊員に、−1点。(飛田)


関連レビュー
「宇宙戦艦ヤマト2202第20話 ガトランティス、呪われし子ら」


あらすじ

 ゼムリアの遺跡でキーマンらは大帝ズォーダーの秘密を知る。ガミラス軍が合流し、数百隻のアンドロメダ艦隊が出撃し、戦いは人間対クローンからAI対クローンの消耗戦に陥る。

Aパート:アンドロメダコピペ艦隊、ゼムリアの秘密
Bパート:ガミラス艦隊出撃、滅びの方舟への道

コメント

 外惑星での戦いは三話前からダラダラ続いているが一向に終わる気配がなく、彗星要塞に粉砕された主力艦隊には補充がなされ、膨大の数のAI戦艦が次々と波動砲を乱射して戦線に投入される。こうなると先の戦いはヤマトやアポロノームなど戦艦や貴重な人的資源をムダにしただけで、これは時間断層の存在を明かして無人のAI戦艦を先に突撃させた方が良かったように見える。痛恨の戦略ミスだが、作者の福井には言い訳はあっても知略はないので、司令部の芦沢はヒステリックに突撃作戦の継続を命じる。が、怠惰な消耗戦による精神の腐食は芦沢のみならず地球軍の将兵をも侵し始め、操縦術の未熟を指摘されたギンガ操舵手の市瀬は「腕を取り替えればいい」とうそぶき島を呆れさせる。

 AIに戦略立案機能があるのなら、彗星が接近する前に時間断層でAI戦艦を大量生産してズラリと並べ、より以上の超兵器(宇宙破壊爆弾など)も開発してガトランティスの侵攻を戦う前に食い止めることができたし、たぶん、それが最適解だろう。いくら無尽蔵に量産できるとはいえ、兵力の逐次投入は愚行であるし、1隻しかないCRS搭載艦を未熟な若い艦長に与えて最前線に投入するなどはどういう合理性のあるものだろう?

 ヤマトが不時着したゼムリア星は木星ほどの大きさのある彗星要塞の内部の小宇宙にある火星大の星で、かつてのガトランティスの母星だが、先住民は発達させすぎた戦闘民族に滅ぼされる。キーマンが起動した記録媒体によるとズォーダーの年齢は一千歳以上と鎌倉大仏と同じで、時代はエジンバラ城の建設が始まった頃で、視聴者の大半、後醍醐天皇や牛久大仏よりも年長者である。妻を殺されたことでゼムリア原人に復讐したズォーダーは「愛」を持つ知的生命体の抹殺を企み宇宙に旅立つが、それは数万年に及ぶ大事業であった。
(レビュー:小林昭人)

カオルのひとこと

 ゼムリア星に墜落したヤマトは、地球で埋もれていた状態のヤマトと同様の状態になっており「これがやりたかったんだな」という構図に大いにしらける。ところで本作はテロップなど一切ないため、彼らがどこにいるのかさっぱりわからない。アンドロメダは地球に戻っているが、一体それなら彼らはどれだけ離れたところにいるのだろう?
 ゼムリア星探索に出かけたキーマン、斎藤、永倉とアナライザーは、ガトランティスの遺物を発見。ゼムリアがガトランティスを作った、という過去の歴史を延々と聞かされる。子供の学芸会のような芝居でズォーダーとサーベラーの過去の経緯を語られるが、正直、こんな話を見たいのではなかった。断片的に過去の記憶を語られても筋がつながらないし、見ている側はちっとも物語に入っていけない。ガトランティスの過去とか、ヤマトのストーリーに必要?

評点
 ガトランティスの侵略企図が薄弱すぎ。(小林)
 過去を断片的に語られるだけでストーリーになっていない。(飛田)


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