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 宇宙戦艦ヤマト2199(2013)各話レビュー →宇宙戦艦ヤマト2022レビュー

 第10話「大宇宙の墓場」 脚本:大野木寛


あらすじ  (人類滅亡まで325日・異次元断層で4日)

 前回の作戦の失敗を問われ、更迭を伝えられたゲールは汚名挽回のためヤマト討伐を決意する。一方、ワープしたヤマトは異次元断層に嵌り込む。そこで遭遇したガミラス艦がヤマトにある提案をする。

Aパート:ヤマト異次元断層、メルダ登場
Bパート:ガミラスとの共同作戦、ゲール艦隊出現

コメント

 例によってやる気のない前作ダイジェストパート4、今度は13話と15話のダイジェストである。が、ヲタク受けしそうな要素として、名もない捕虜の代わりにガミラス高官ディッツの娘メルダがヤマトに乗り込む。ヤマト同様、彼女のガミラス艦も断層に捕まり、波動砲を持つヤマトとガミラス艦の共同作戦で危地を脱出しようという計画だ。「敵と味方の共闘」というのはこの種の話ではサプライズ話として面白い話のはずだが、どうにも唐突なのは、これまでの所2199ヤマトはあまり苦戦しておらず、「敵との共闘」といっても、これで感慨を感じるような戦いもエピソードもなかったためである。

 さらに唐突なのは、つい一つ前の前話でガミラス機械兵オルタの話が描かれており、この話ではヤマト乗員はガミラスのことは何も分かっておらず、オルタを通じてどうも同じ思考様式を持つらしいくらいしか分からなかったことがある。その次の話で「ガミラス人」がいきなり登場し、「共同作戦しよう」と言われても、前話までの話は何だったのとポカンと口を開けるしかない。ヤマト3では一応ラジェンドラ号はヤマトに身体的特徴や大気成分のデータを送り、互換性のある宇宙人であることを伝えていたが(それを受けてラム艦長のメニューを調製したのが2199でも登場している平田である)、もちろんそういう「説明的」描写はなく、メルダはいきなりヤマトに乗り込んでヘルメットを脱いでしまう。放射能はともかく、異種の「ヤマト菌※」にでも罹患したらどうするつもりか。

 メルダの協力でヤマトは異次元断層を脱出し、再び大宇宙への航海に出る。ゲールとの戦闘で彼女の母艦EX178は艦長もろとも宇宙の塵となり、彼女を監視する山本とのしこりを残しつつ、どうも次の話までヤマトに居座るようである。原作13話が主人公古代の性格を読み解く、いわばキーとなるエピソードであったことを考えると、こんな話で置き換えて良いはずはもちろんない。あと、メルダによる地球先制攻撃の主張があるが、次回もあるので割愛する。

※ このウィルスは実在するらしく、ヤマト後のメルダは古代たちの味方になり、その性格まで変わってしまう。ガミラス人なのにデスラーに反抗を企てるようになり、後にはガミラスファイターで同士撃ちまでする発狂ぶりである。やはり、異星人の戦艦で安易にヘルメットを脱いだ粗忽さが彼女に道を誤らせたようだ。
(レビュー:小林昭人)

カオルのひとこと

 山本に続いて、ガミラス捕虜まで美少女にされてしまいました。そういえば生身のがミラス人と初遭遇なのに大して驚きもしないし、いきなり共同作戦とか、フレンドリーすぎないか?

★★ 全てにおいて尺足らず、説明不足、もっとまじめにやってくれ。(小林)
★★ 古代の影の薄さが際立つ…。なんで、こんなにいい子ちゃんになっているのか?(飛田)


関連レビュー
「宇宙戦艦ヤマト2202第10話 幻惑・危機を呼ぶ宇宙ホタル」


あらすじ

 ノルに訓練をつけるゴーランドは訓練の仕上げのため砂竜惑星に赴く。、一方ヤマトは防衛軍からテレザート途上にある白色彗星の調査を命ぜられる。

Aパート:ノルの訓練シーン、宇宙ホタルとの遭遇
Bパート:キーマン殺虫剤、ヤマト霊界突入

コメント

 前話から「ガトランティスとは何か」という問いに制作者が囚われているようであり、ゴーランド父子の間にある感情をガイレーンから指摘されたズォーダーは不機嫌な顔をする。ガイレーンの言葉「自らの愛情がエゴにすぎなかったことを証明し、ガミラスの艦隊もろとも」やっぱり成仏させる気満々だったようで、たぶん古代が何を選択してもズォーダーは自爆ボタンをポチッとして始末してしまったようだ。

 宇宙ボタルのエピソードはデスラーの復帰一番のエピソードとしてヤマト乗員の動揺を誘うために用いられたが、本作では金属腐食作用に加え催眠作用もあり、催眠術で険悪な様子となった古代と斉藤は一触即発となる。が、キーマン殺虫剤でホタルは除虫され、直後にコスモウェーブを浴びたヤマトは乗員もろとも死後の世界にワープする。どうもホタルを撒いたのはデスラーではなく、色々と事情を説明したかった古代守と沖田だったようだ。共通の霊界体験をしたことでヤマト乗員と空間騎兵隊員の間に絆が生まれる。

 ヤマト乗員と空間騎兵隊の和解は前作ではそれなりに尺が取られたエピソードで、確かテレザート直前まで両者の関係はギクシャクしていたように思われるが、その間に古代との殴り合いや罵り合いなど出自も価値観もかなり違う両者の軋轢は幕間エピソードとしてはそれなりに見物だった。人間関係の溝を埋める両者の葛藤なしに「霊界体験」で和解してしまうのは薄ら寒い上に安易といえ、「異常体験をしないとヤマトの仲間になれないのか」と引いた気分になってしまう。たぶん、まともな人間関係の構築というものを制作者は考えたことがないのだろう。そして、エンディングでデスラーが登場し、姑のようにチクチク古代をなぶっていたズォーダーの代理人としてヤマト討伐の任に赴く。
(レビュー:小林昭人)

カオルのひとこと

 赤い小さな光点にヤマトが包まれ、採取して調べるうちに乗組員たちが「ホタルに似ている」と鑑賞しはじめるが、次第に催眠状態に陥っていく。  真田の機転で脳波に影響を与えた宇宙ホタルの赤い光が青に変わり彼らが催眠状態から抜け出た直後、佐渡先生の「殺虫剤」で退治して一件落着となるのだが、この宇宙ホタルの出どころも正体も、人体に何の影響があるのかも一切説明されずに終わってしまった。原作では確か金属を腐敗させるバクテリアという説明があったが、そういう物理的ピンチよりも精神への作用が描きたかったようだ。
 というのも、この後の展開が強烈だからである。ここにきて、ようやくテレサの姿が現れ呼びかけがなされるのだが、それがまさしく「霊界通信」で、これまでその通信を経験していなかった乗組員に対して、おまえも聞いたか、これで仲間だ、といううすら寒いノリで締めくくられるのだ。テレサの呼びかけは、本作全体の根幹となる重要な要素だが、その呼びかけに応えるヤマト乗組員の思いは、視聴者とともに共有されていた。しかしそれが個別の霊体験に置き換えられてしまったことで、視聴者はある意味完全に「蚊帳の外」に放り出されてしまったのである。

評点
 ホタルの出所不明で間延びした話。(小林)
 制作者もきっと実物のホタルを見たことがないに違いない。(飛田)


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