宇宙戦艦ヤマト2199(2013)各話レビュー →宇宙戦艦ヤマト2022レビュー
■第9話「時計仕掛けの虜囚」 脚本:村井さだゆき
■あらすじ (人類滅亡まで339日・グリーゼ581あたりで4日)
グリーゼ581付近を航行するヤマトでは岬百合亜がラジオを始める。捕獲したガミラスの機械兵オルタを分析していたアナライザーはオルタに人格のようなものを感じる。
Aパート:百合亜ラジオ、オルタとアナライザーの交流
Bパート:オルタ脱走、アナライザー対オルタ
■コメント
恒星を脱出したヤマトはまだグリーゼ581(地球から20光年、まだそんな所にいるのか)の近くにおり、艦内では森雪の交代要員百合亜が非番の時間にラジオを始める。投稿名シロシンタ(真田志郎)のリクエストで百合亜が朗読するのは2199世界の古典「観測員9号の物語」、そして、自らの存在を問いかける9号の話に影響され、オルタが自分探しに研究室を脱走するという話は2199にしては珍しくGdGdにならずに最後まで観れたが、見終わると「果たしてこの話はヤマトに必要か」と思わせる話でもある。実は原作16話の代わりの話である。前作のアナライザーは原始的なビーメラ星人に叩かれたりこづかれたりして自分をロボットと自覚するが、2199のアナライザーは最初からロボット以外の何物でもない存在で、戦艦ヤマトのサブフレーム、備品の一つと自覚しているので、元からこんな話は要らないのである。
話自体はこれがヤマトではなく、何かのOVAなら(今までよりは)見れるという程度だが、本筋である宇宙戦艦ヤマトの話を端折るとかダイジェストするとかして原作を散々愚弄しておいて、挿話の1つだけが「まとも」でも困るのである。それに、そもそもこのガミロイドが必要になったのは、衛星エンケラドゥスでの地球人・ガミラス人初の遭遇(ヤレタラ氏)を亡き者にしたいからである。たったそれだけのためにこれだけ大仰な挿話が必要とは思えないし、そんなことなら冥王星にいたのは2等ガミラス人の部隊で、本物(青タイプ)ガミラス人には地球人はまだ接触していないのだと捕虜尋問とかその他で分かっていたでも説明できた。そもそもの最初から、地球軍はガミラス機を撃墜していたり、残骸を集めたりとヤマト出発以前からその種の情報は集めていたのだから。
偵察機の着艦時にクレーンが誤作動するというオルタの影響については、これがオルタが悪意を持って着艦を妨害したのならともかく、単にアナライザーとのデータ送受信がネットワークに負荷を与え、それでクレーンが壊れたとの言い分には少し呆れる。いくら23世紀の科学でも、クレーンくらい手動で操作できないのか。「何のために機械のバックアップに人間がいるのか考えろ!」と、遠山らを叱責する榎本も、機械と人間の順位が逆だと言いたくなる。こういう描写に、何というか現実にある物や人に直接触れたり作業したりすることを毛嫌いするオタク体質(と、筆者が思っているもの)が垣間見えて嫌だ。2199は技師長の真田も前作と違って率先してスパナを振るうのではなく、高学歴者としてただ机に座って理屈を垂れている描写が多いが、こんな感じでは2199ヤマトに艦内工場がないのはむべなるかなである。これを作っているヲタクは現実の科学者、技術者ではなく、自分らにはない高学歴とそのポーズに憧れているように見えるが、そんなものは本物の科学者でもなければエンジニア(創造する人)の姿ではないのである(そういえば2199の真田は前作と異なり何も発明しなかった)。それに9号の物語に出てくる少女も見てくれといい、結末といい、広井王子から拝借してきたような、いかにもヲタクが好みそうな美少女でうっとおしい。 (レビュー:小林昭人)
カオルのひとこと
これは原作にはなかった話。なのでつい見入ってしまった。それにしても、自動航法装置って何だろう? アナライザーじゃなくて、真田さんが自分で分析してれば良かったのに…。
★★★ ヲタク趣味全開だが、宇宙戦艦ヤマトには全く不要な話。とりあえず眠らずに見れはする所は評価した。(小林)
★★★ 意外に面白い話だったけど、本編にはいらないでしょ。(飛田)
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