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 宇宙戦艦ヤマト2199(2013)各話レビュー →宇宙戦艦ヤマト2022レビュー

 第2話「我が赴くは星の海原」 脚本:出渕裕


あらすじ  (人類滅亡まで365日)

 古代らが見た赤錆びた戦艦は朽ちた主砲を旋回させ、上空のガミラス空母を倒す。国連宇宙軍ではヤマト乗員が選抜され、古代らは新造された宇宙戦艦ヤマトに乗り組む。しかし、その頃すでにガミラスの大型ミサイルが地球に迫っていた。

Aパート:大和上空の空中戦、スターシャのメッセージ
Bパート:山本玲登場、ヤマト発進

コメント

 何だか以前の話をそのままダイジェストしたようなやっつけ仕事の話である。実は前作の2話と3話のダイジェストで、前作2話にあった戦艦大和のエピソードが省かれている。そのかわり、戦死した上級士官に代わって2階級特進で戦術長に任命された古代の葛藤が描かれるが、島同様最下位の三尉でしかない古代がなぜ上官の加藤(二尉)や同期生で戦艦キリシマにも乗り組んでいた平田(一尉)を差し置いて戦術家のチーフになれるのかが不思議である。そして、古代以上に念入りに描かれているのが加藤の前に正座する赤瞳白髪のクールビューティー山本、すでに主計科への配属が決まっており、彼女は加藤に不服そうである。彼らはパレードもなしに艦に乗り組み、そこにはるばる冥王星から飛来したミサイルがやってくる。

 本当はエキサイティングな話のはずが、2199になると始まって五分で眠気がというのは、やはり脚本や構成に問題があると感じる。この場所では視聴者は見る影もなく打ちのめされた地球が見たいのであり、計り知れないほど強大なガミラスの恐怖であり、別に若年すぎる古代の躊躇や引退寸前の徳川が家族に止められる話を見たいのではない。徳川については、あと1年で地球が滅びるというのに、定年も何もあるのだろうか。宇宙戦艦ヤマトという話の中には元々日常性というものはないのであり、2199のスタッフが話を曲げてまでしてなぜそういう要素を作品に求めるのか理解に苦しむ。

 1話で古代らが回収したカプセルは同時に波動エンジンを完成させる波動コアであった。波動エンジンはこれがないと始動できないのであり、エンジン自体はさらに以前に飛来した別のイスカンダル人の手によって完成していたというのが2199の説明だが、これはこれで有りとしても、この話は別のところで退屈で、破綻と穴が大きすぎる。
(レビュー:小林昭人)

カオルのひとこと

 この宇宙戦艦ヤマトは、別に過去に沈んだ戦艦ヤマトと関係ないようだ。坊主の加藤はともかく、ヤマトの女性ファンに大人気だった山本を女性キャラにしてしまうとは…。

★★ 地球人もこれだけ戦えるのなら、イスカンダルに行く必要はないのでは?(小林)
★★ 放射能汚染の話がないのはなぜ? という疑問がムクムクと。(飛田)


関連レビュー
「宇宙戦艦ヤマト2202第2話 緊迫・月面大使館に急行せよ」


あらすじ

 査問会の審問を受けた古代は森雪と再会し、ガミラス武官キーマンの接触を受ける。異様な速さで軍備拡張を進める地球政府に疑問を持ちつつ、古代はキーマンの誘いで月に向かう。

Aパート:アンドロメダ(型)進宙、英雄の丘
Bパート:テレサのメッセージ、キーマンとの接触

コメント

 2話から新オープニングが始まるが映像が前話のバンクの使い回しで見るからに白けてしまう。新見らがガトランティス兵士を取り調べている際に画面の端に映っている、「参謀本部検閲済」の文字、この世界には現代の中国と同様、法の支配も人権もないらしい。細部に凝るのは結構だが、専門分野の技術用語や官僚的修辞に惑わされ、事の本質を見失うのをヲタク、又はバカという。軍規違反を犯した古代を審問した裁判所は「大法廷」、普通は大法廷とは15人(国による)の裁判官が出揃い、判例変更を言い渡す場合に開かれるものである。裁判の間に自爆したガトランティス兵士により新見が負傷する。

 英雄の丘の場面は前作通り、赤穂浪士の南部坂の別れと同じ型通りの映像だが、会合を主催する佐渡の服装は少々だらしない。靖国神社の戦友会の会合で元軍医がドテラに下駄の格好で出席するなどあり得るだろうか。宇宙戦艦ヤマトという物語が戦前と戦後の地平にある物語である以上、粛然と哀愁のパトスはこの物語の背骨にあるものである。「ダンス・ウィズ・ウルフズ」で主人公のコスナーが出立に際し、軍服のボタンを磨き上げる場面があるが、この自律と挟持こそ、一部戦前を引きずったヤマトの宇宙戦士たちにはあったものである。が、彼らは大戦艦との戦闘中に見たという謎のテレパシー(霊話)に興じていく。どうも謎の宇宙人がテレパシー通信をヤマト乗員に送ったらしい。なぜか森雪だけが通信を受けなかったが、この特別扱いは2199の同様の演出のマネである。

 「中身の薄い話」というのが正直な感想で、旧作で説明された部分については別に聞かなくても内容は分かるし、新たに付け加えられた部分については掘り下げがない上に興味の沸かない内容でそのまま見過ごしても良いような散漫さであった。ナレーションが廃された影響も大きく、前作では視聴者の頭の中に精密に位置付けされた侵略者と関係者の人間関係や立ち位置はアバウトに画面から想像するしかなくなっており、これも興味の沸かなさに拍車をかけている。 (レビュー:小林昭人)

カオルのひとこと

 真田との連携でナゾの大戦艦を撃退した古代を出迎えるユキとの会話は、織田裕二の代表作「ベスト・ガイ」を彷彿させる寒さで神経がやられる。説明不足は相変わらずで古代とユキとの関係も曖昧なままである。霊界通信でヤマト乗組員を召集しているのは宇宙の彼方の裸族の祈り人らしいことが示されるが、作者の関心はむしろ月面でのドッグファイトにあるらしい。ナゾのメッセージの発信源を追究という展開になっていかないもどかしさに、どんどん心が物語から離れていく。
 それでもここまでは作者の感性の問題だが、怪しいガミラス人の男に、月面大使館に招待される古代という展開には疑問符をつけねばならない。大使館とは通常首都に置かれるもので、都市機能の見当たらない月面など日本で言えば釧路湿原のようなものだ。しかも「領空侵犯」とか、それは大使館ではなくガミラスの占領地ではないのかとツッコミたくなる。現在の時間軸の先にこの物語があるのなら、こういういい加減な設定は「SFだから」では済まされない。制作陣は誰も、大使館の機能について下調べをしなかったのだろうか。

評点
 ここまで改悪しかない話も珍しい(小林)
 話があちこちに振れて少しも筋が見えてこない。霊界通信にはドン引き(飛田)


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