■第10話「雪」
あらすじ
北杜に雪が降り、礼子は小熊を雪原での雪遊びに誘う。防寒対策に小熊はスキーウェアとヘルメットシールドを買い、冬の防寒対策を万全に整える。そんな日々のある夜、ねこみちで椎が遭難し、小熊に助けを求める。
Aパート:初めての雪、冬のキャンプ場
Bパート:ねこみち、椎の遭難
コメント
小熊や礼子が遊んだ雪原は夏季にはオートキャンプ場として使われている場所で、礼子の家は真原桜並木の入口近くの別荘地にある。高校からの距離は約3キロ。椎の家は小熊が礼子の家やカブを購入したバイク店に行く途中で、高校から県道を西に約1キロの場所。小熊の家は七里岩の台地の上、日野春駅近くの県営住宅がモデルである。高校からの距離は3人の中でもっとも遠く、約3.5キロある。
三人の中でも礼子の家は手がかりとなる描写が少なかったことから、牧原交差点を起点に県道を小熊の家と反対方向なこと、椎の家が途中にあり、いつも昼食に食べているサンドイッチをブールで買っていることしか分からなかったが、本話でようやく自宅の位置が分かった。
防寒対策の仕上げにと小熊が選んだのはヘルメットシールドとスキーウェア、前者はともかく後者は少々大げさと思えるもので、礼子は軍用ツナギとゴツいワークブーツ。フライトスーツはアラミド繊維の高機能素材で作られているが、これは航空機搭乗時の破片による裂傷や火災に備えるもので、与圧暖房された機内で用いることを前提としているため防寒性は厚手のコートやオーバーオールに劣る。色褪せしやすく紫外線にも弱い。どうしてこの人たちは、いつも非実用的な選択ばかりするのだろう?
七里岩
山梨県の岐北地方にある、八ヶ岳から韮崎まで続く溶岩台地。左右を釜無川と塩川に侵食され、切っ先のようになった先端の形状がニラ(韮)の葉先に似ていることから、この場所を韮崎(にらさき)と言い、北杜市を含む峡北の中心地である。岩塊の比高は釜無川側では100メートル以上あり、韮崎から富士見町(長野県)に至るまで、これを登るためのつづら折りが道路や中世以来の古道として各所に開削されている。台地上には七里岩ラインがあり、韮崎から長坂まで南北に通じている。
台地北部は八ヶ岳南麓高原湧水群という全国有数の湧水地帯で農業が盛んである。水質が良いことから近年はパン屋、そば屋を開店する例も多い。カフェ・ブールのモデルになったバックハウス・インノはこの湧水群の一角、大泉町にあるベッカライである。
特徴的な地形はアニメにも生かされており、イベントの多くが台地とその周辺の地形の影響を受け、町田や春日部など東京周辺ではありえない光景や展開を可能にしている。そのため11話のように作者の都合で地形を変えると、話そのものにどうしようもない矛盾や欠落が生じることになり、それを正すことはほとんど不可能である。
パウダースノー
礼子が案内した甲斐駒ヶ岳の見える雪原はスキー場と見紛うほどの広さで、パウダースノーで転んでも人もバイクも傷一つ付かないというものであったが、多少とも地元を知っている者から見ると、描写に首を傾げるものがある。というのは、北杜を含む八ヶ岳山麓は体感温度は寒いものの、冬季の実気温はそれほど低くなく、地元では富士見や小淵沢のスキー場はアイスバーンと湿気を含んだ重い雪で知られており、中級者以上のベテラン、あるいは白馬や志賀高原に行く予算のない者が行くB級スキー場という印象だからである。
筆者のイメージとしても、ここのスキー場には映画「私をスキーに連れてって」のような華やかなムードは微塵もなく、低予算の運動部のスキー特訓場のような汗臭いイメージで、難易度の高いコースで怪我をしたくないので初心者は近づかないという印象である。だから映像を見るとかなりの違和感がある。
パウダースノーの条件は気温マイナス10度以下の低温、低湿度の乾燥した気候で甲信では志賀高原や斑尾など2千メートル近い高地に限られる。冬とはいえ、たかだか高度700メートルの養鶏場で降ることはありえず、降ったとしてもザクザクとした湿り気の多い重い雪のはずである。作者は冬の北海道に行ったことがないのではなかろうか。
評点
★ 寒冷地は冬も取材しないと片手落ち、あんな雪あるか。
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