機動戦士ZガンダムDefine 第9話

ストーリー

 エウーゴの戦艦アーガマを追う地球連邦軍の戦艦ボスニアから、ライラ隊が発進。ライラはティターンズのジェリドに、宇宙での戦い方を教えつつ、隊を2つに分けてアーガマに迫る。アーガマでは、ブレックス准将とクワトロ、ブライトの会議でカミーユをそのまま実戦に投入することが決定される。ライラ隊迎撃のためにクワトロらは出撃。カミーユは独自の感性で、ライラが来ることを察知する。

レビュー

 前回が戦闘が終わって一休み、というお話しだったので、今回は次の戦闘へ出ていくお話しです。だいたい、こういうパターンで進んでいきそうですね。ボスニアVSアーガマの戦闘へ入っていきますが、双方のモビルスーツ隊隊長ライラ・ミラ・ライラとクワトロ・バジーナの新人教育に対する姿勢は対照的です。「苦しいときは私の背中を見なさい」と言ったなでしこジャパンのキャプテン、澤穂希選手のごとく、ジェリドに己の戦いを見せつつ宇宙での戦い方を学ばせようとするライラ。対するクワトロは、素人を訓練もせず実戦に投入して「こんな序盤で命を落とすようではとても逸材とはいえません」と、無情な宣告をしてカミーユを出撃させます。さあ、あなたならどっちの隊に入隊しますか? 答えは明白ですよね。
 ブライトは、そんなクワトロを「実戦主義」だといいますが、リーダーの仕事は、人を訓練してその人の可能性の実現に手を貸すことだ、とドラッカーは言っています。その意味で、彼らはカミーユがニュータイプであるのをいいことに、リーダーの役目を放棄しているともいえるでしょう。ニュータイプって何なのかは本作を読んでもちっともわかりませんが、どうやら彼らは、訓練なしで使えてレーダーみたいな役割も果たす便利なパシリ、ぐらいにしか思っていないようです。

 思えばテレビ版Zガンダムの制作現場というのは、そのままこんな感じだったのかもしれません。ファーストガンダムのスタッフで引き続き制作に関わった人といえば、富野監督の他にはキャラクターデザインを手がけた安彦良和氏ぐらい。他は大方、新人かまだ駆け出しで、ベテランと言えるような人はいませんでした。で、クワトロのような「実戦主義」で作られたのが、あの作品だというのは、本サイトの「Zガンダム」全話レビューで見て来た通りです。
 北爪氏はその現場の惨状を見て来たご本人だと思うのですが、彼もクワトロやブライト同様に、それを何とも思っていないかのようですね。

 こういった戦闘になる展開はお得意らしく、まあまあそれなりに読める話にまとまっていますが、上記のように無責任なリーダーが仕切っているにもかかわらず、カミーユの特殊能力で彼は無能なリーダーを有能に見せかける助けをこれから延々していくことになっていくわけですよね。日本の社会では、このように他人の才能で自分を飾って才能ある人材を潰す光景は日常的に頻繁に見られるものです。それと同様のものをマンガで読んで、ワクワクしろという方が無理ですよね。80年代には、まだそういう光景ははっきりと現われていなかったのかもしれないけれど、現在は、その結果荒廃した風景が目の前に広がっているという時代です。同じ内容を差し出しても、もう誰もついてきてはくれないでしょう。

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