■トランスフォーマー　Transformers

2007年　アメリカ　144分 監督■マイケル・ベイ 脚本■ ロベルト・オーチー アレックス・カーツマン 出演■ シャイア・ラブーフ ミーガン・フォックス ジョシュ・デュアメル タイリース・ギブソン ジョン・ヴォイト ケヴィン・ダン ジュリー・ホワイト

スト−リ−

　中東の米軍基地が、ある日突然謎の兵器によって壊滅状態に陥る。また、大統領専用機エアフォースワンにも何者かが侵入。国家機密がハッキングされ、国防省は緊急事態に対処せざるを得なくなる。その頃、高校生のサム・ウィトウィッキー（シャイア・ラブーフ）は歴史の授業で、北極探検に赴いた祖父のことを発表し、彼の遺品のメガネを売りさばこうとしていた。車を買うためにどうしてもお金が欲しかったのだ。何とか中古の黄色いシボレー・カマロを入手したサムだが、その車がある夜、突然勝手に走り出し、巨大なロボットに変身するのを彼は見る。さらに、その仲間たちが姿を現し、彼は、メガトロンとオートボットという異星からきた金属生命体が繰り広げる壮大な戦いに巻き込まれていくのだった。

レビュー

　アメリカの玩具メーカー、ハスブロと日本のタカラトミーが業務提携して展開したという変形ロボットが主人公のアニメ「戦え！超ロボット生命体トランスフォーマー」を原作とする実写化作品。原作アニメは、あの「機動戦士Ｚガンダム」の裏番組であった（が、実はこちらの方が「表」だったのかもしれない）。日米双方でかつて子どもたちが楽しんだ名作アニメである。そして、アニメや玩具シリーズの世界を、最新のＶFＸで実写映画化するという一連の動きの先駆けとなった作品が、この映画「トランスフォーマー」である。監督は、バカバカしくてド派手な映画を撮らせたら右に出るものはいない、という、マイケル・ベイ。本作は、彼のそんな持ち味が最大限に生かされた映画である。

　そういうわけで、映画のふれこみはＳＦアクション超大作となってはいるが、間違っても「スター・ウォーズ」や「スター・トレック」などと並べてはいけない。対象は、変形ロボット「トランスフォーマー」で遊んで楽しむ世代なのだから、むしろ「ゴーカイジャーＶＳギャバン」のような特撮戦隊ものと並べるべき作品といえよう。その意味で、とても良くできた映画である。

　非モテ系の少年サムが、必死のあがきでなんとか手に入れた、古いシボレーカマロ。それが、実は異星から来た金属生命体オートボット「バンブルビー」の仮の姿だった、という設定。そんなバンブルビーと、オートボットのリーダー、オプティマス・プライムとの出会いから戦いに巻き込まれ、最後には、自ら命がけで戦う強さを身につける。そんな、ロボットアニメの王道ともいうべき展開は◎。 だが、マイケル・ベイの悪いクセも同時に出ていて、主役のトランスフォーマー、オートボットの登場までがとにかく長い。中東での死闘、ペンタゴンでの情報解析、と同時進行の場面をうまく描きわけてわかりやすくまとめているものの、主人公のサムとその周辺の人物以外は、名前もわからないまま終わってしまった。探検家の祖父が北極圏の氷の下で偶然発見した悪のリーダー、メガトロンだが、その座標が刻印されているという祖父のメガネの存在意義が、途中で曖昧になってしまうなど展開が大味のはまあ仕方ないにしても、トランスフォームするオートボット５体のうちオプティマス・プライムとバンブルビー以外はあまり印象に残らないのがもったいない。それぞれを、もうちょっとしっかり見せてほしかった。

　などなど、いろいろとあらを探せば出てくるものの、この映画は批評家を唸らせるためではなく、子どもたちを唸らせるために作られたものだから、その点が評価できれば、それで合格なのだ。

　米軍の全面協力で、オスプレイやＦ―２２ラプター戦闘機なども登場。戦闘シーンの迫力と、トランスフォームのＣＧは比類ない出来ではないだろうか。シボレー・カマロがトランスフォームする「バンブルビー」は、アニメでは黄色いフィルクスワーゲンのビートルだったが、ナチス・ドイツの国策企業として設立されたという背景をもつフォルクスワーゲンから、兵器に変身するキャラへの使用を断られたという経緯があるらしい。そんなわけで、最初にサムが中古車ディーラーに行ったとき、カマロの横に黄色いビートルがあったのは、アニメへのリスペクトという意味があるのかもしれない。

　途中、氷漬けにされる「バンブルビー」の姿には、不覚にもウルッとしてしまった。ロボットだけど生命体、というユニークさが生きている。だが、最後にサムの元に残るのは…ちょっと、イヤな予感を残すところだ。三部作らしいが、本作で伸びしろを使い切ったっぽいダメ少年サムの次作での立ち位置は、難しいものになるだろうな、と思った。

評点　★★★★

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