レビュー
ベストセラーは、映画化される運命にある。本作も、そんな運命によって生まれた映画である。原作本は売り上げ累計488万部を突破。押しも押されもせぬミリオンセラーであるからして、映画化されても不思議ではないとはいえる。これがレシピ本でなければ・・・。
はかることを通じて健康づくりに寄与する、という経営理念を実践する場としてタニタに社員食堂が開設されていることは事実だが、本作のストーリーはフィクションである。「おいしくて、お腹いっぱい食べて、自然にやせられる」がウリのレシピ本のコンセプトを生かし、ダイエットを新商品のキャンペーンのために行う、そのために社長の息子である優柔不断で肥満体の主人公と、主人公と同じく体脂肪率が40%を超える男女をまじえた3名が、自然にダイエットできるような社食の献立を考える、というのがストーリーの核となる。
そうした設定がうまく出来ているだけに、なかなか面白く、ちょっと笑えて、ちょっと泣かせる話にはなっているが、やはり、ベストセラーに便乗してノリで作った感のある映画だけに、ドラマの奥行き不足が否めない。主人公の幸之助をはじめ、ダイエットに挑戦する体脂肪率40%超えの3人、そして過去には肥満だったという栄養士の奈々子には、それぞれに「食べることに走る」理由があることが伺えるのだが、いつから、どんなことをきっかけに、どのようなときに「食べる」ことに走るようになり、それが心の安らぎをもたらすものとなっていったか、そういった、内面を掘り下げるところまでもう少し突っ込んでもらえると、単なるノリを超えた作品になったのではないか、と思う。その意味では、素材を生かしきれないやや残念な出来、といえるだろう。献立のカロリーは抑えるのはいいけれど、ドラマのエッセンスを削っては、映画は面白くならないのだ。どうせなら、とことん「なぜ太ってしまうのか」に向き合ったドラマづくりに挑んでほしかった。
あと、せっかくの体脂肪計がほとんど登場せず、機能の説明もなかったのももったいない。とはいえ、この映画を見て、昔買った体脂肪計(オムロン製)を押し入れから引っ張りだしてきて、また体脂肪チェックを始めたのだから、この映画はそれなりの役割を果たした、といえるかもしれない。
評点 ★★★ |