レビュー
何を隠そう、私が生まれて始めて映画館で観た洋画がこれ、「スター・ウォーズ」なのだ。小学5年生の夏だった。その時受けた衝撃はすさまじく、私はSFの世界に足を踏み入れるようになり、「宇宙戦艦ヤマト」や「銀河鉄道999」「機動戦士ガンダム」などSFアニメの世界に傾倒していくことになったのだ(りなみに、ご存知のとおりヤマト・ガンダムはいずれも、スター・ウォーズの影響が非常に強くあらわれている)。どの作品も面白く、ガンダムに至っては考察サイトを運営するに至ったが、DVDで改めてこの作品に触れて思う。やっぱり、これが私にとって、すべてのはじまりだったのだなあと。1960年代生まれの私にとっての、娯楽映画の原点である。
Long time ago,in a Garaxy far far away... ではじまるオープニングは、音楽とともにあまりにも有名だが、ジョン・ウィリアムズ作曲のあの壮大なテーマ曲が流れてくると、もうそれだけで胸が一杯になる。スター・ウォーズのテーマ、そして宇宙に吸い込まれていくように流れるプロローグとともに、心はもう遠い昔の別宇宙へとトリップしているのだ。そして、いきなり宇宙空間を逃げる宇宙船、追う戦艦は画面手前から奥へずずーんと伸びて、ずーーーーーんといつまでたっても船尾があらわれず、長〜〜!とまずその巨大さに圧倒される。今までに見たことのない映像に、もうお口があんぐりだ。(・・・私は幼い頃から、集中すればするほど口が開く癖があった。今もそうだ、多分。自分では気付かないけど)
ストーリーはすごく単純。出生の秘密を持つ主人公、囚われのお姫様、個性的な従者、金に目がない悪党だが実はいいヤツが仲間になり、偉大なる師によって己の力に目覚め、巨大な敵をやっつける。当時本格派SFファンからは「舞台を宇宙にしただけで、話は単純なおとぎ話か西部劇」と酷評されていた記憶があるが、そんなことは問題ではないのである。映画において、まったくこの地球とは別の世界、別の銀河を描き、それが人々を楽しませる極上のエンターテイメントになるのだということを、ジョージ・ルーカスによって私たちは発見したのだ。
わかりやすいストーリーの一方で、日本の鎧や着物から発想したというファッション、別の惑星の不思議な風景、住居やインテリア、ライトセーバーなどの小道具から地上での乗り物、宇宙船にいたるまで、すべてこの映画のためにデザインされたアートワークもまた、すばらしい。それまでにも特撮はあったが、スターウォーズではハン・ソロの宇宙船ミレニアム・ファルコン号など、いかにも使い込んだ感じが演出されていて、作り物とかセットという感じがしなかった。CGのなかった当時、特撮だけでここまで作り上げた心意気にも驚く。
テンポよくすすむストーリーは面白いが、全体的にかけ足で、辺境の惑星で、おじに預けられて暮らす主人公ルークの心情など、もっと描きこんでもいいなあと思うところがいくつかあった。ルークが自分の出生に疑問を持ったり、フォースに対して最初は疑問視しながらも、次第にそれを信じて自ら獲得しようとするようになるプロセスなど、もう少し深いところまで描かれているといいなあと、大人になった今は思ったりする。 こういうことを深く描き込んだのが、「機動戦士ガンダム」なんだなあ、今にして思えば。とにかくスターウォーズと、舞台や背景は違うけどすごく似ている。パクリといえないのは、モビルスーツなどのオリジナリティがあることと、SFなのに人物を深く描くという手法で、これはこれで時代をかえた作品になった。 のちの映画をはじめとする映像界に与えた影響の大きさで、これに匹敵する作品はあるのだろうか。映画の楽しいエッセンスがたっぷりつまった、映画の王様ともいえる一本である。
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