MUDDY WALKERS 

スペースカウボーイ SPACE COWBOYS

スペースカウボーイ 2000年 アメリカ 130分

監督クリント・イーストウッド
脚本ケン・カウフマン
ハワード・クラウスナー

出演
クリント・イーストウッド
トミー・リー・ジョーンズ
ドナルド・サザーランド
ジェームズ・ガーナー
ジェームズ・クロムウェル

スト−リ−

 かつてアメリカ空軍には宇宙飛行士をめざす「チーム・ダイダロス」というテストパイロットのチームがあった。音速を超えて大空を疾走する命知らずの男たち。最初の宇宙飛行士になると張り切っていたが、計画が発表されて愕然。名誉ある座を、メスのチンパンジーに奪われてしまったのだ。結局彼等は宇宙に飛び立つことなく現役を退く。その一人、フランク・コーヴィン博士(クリント・イーストウッド)のもとにNASAのスタッフがやってくる。ロシアが旧ソ時代から使っている通信衛星を修理をしなければならないので、手を貸してほしいというのだ。フランクがスカイラブのために開発した装置がソ連の手に渡って使われており、修理できるのはフランクしかいない。NASAで詳しい話を聞いたフランクは条件を出す。「チーム・ダイダロス」として自分たちが宇宙に行って自ら修理するなら、協力すると。かくて60〜70歳の老人たちの夢への再挑戦が始まった!

レビュー

 意図してそうなっているのかどうか分からないが、この映画、あのハリウッド超大作「アルマゲドン」とほとんどプロットが同じである。NASAが危険な事態を察知して、災難を未然に防ごうとする。そのために協力を要請されるのが主人公のチーム。NASAはノウハウだけを欲しがるが、彼等は自分たちが宇宙へ行くという。そこで、チームのメンバーが招集され、宇宙へ行くための訓練が始まる。いざ宇宙へ行ってみると、そこには予想外の事態が待ち受けていて…という具合。いやー、どう考えてもこれは狙っているだろう。クリント・イーストウッドはしかし「アルマゲドン」に欠けているものが何かを分かっていた。それは宇宙へ行くというチーム一人ひとりの動機であり、宇宙への夢である。

 老人が宇宙へ行くという発想は1998年に77歳のジョン・H・グレンが実現したばかりで、決して突飛な思いつきではない(石油掘削士が宇宙へ行くよりはるかに現実的だ)。フランク、ホーク、ジェリー、そしてタンクというチーム・ダイダロスの4人は、若い時にはエリートであり、ある種の超人的な能力を発揮していた。しかしそんな能力が「老い」によって衰えてしまった後で、チャンスが巡ってくるのである。ここがこの映画の面白いところで、今でもスペース・シャトルというのは超エリートの乗り物だけれども、ただ人々の卓越した能力によってだけではなく、夢の力で飛び立つのだなあと思わされるのだ。

 映画としては、宇宙に上がるまではテンポが遅すぎ、宇宙に上がってからは展開が早すぎる。「なぜそうなるの?」と良く分からないところもあって、少々バランスが悪いのだ。しかしこの手の話につきものの「自己犠牲」でホロッとした後、ラストに思いもかけないようなロマンティックなシーンが用意されていて、「ああ、イーストウッドはこのワンシーンのために、こんな映画を作ったんだな」と納得させられてしまった。こういうものを観ると、細かいことはどうでも良くなってしまう。

評点 ★★★★

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