MUDDY WALKERS 

SPACE BATTLESHIP ヤマト 

SPACE BATTLESHIP ヤマト 2006年 日本 117分

監督山崎貴
脚本佐藤嗣麻子

出演
木村拓哉/黒木メイサ/柳葉敏郎
緒形直人/池内博之/マイコ
高島礼子/西田敏行/山崎努
緒方賢一/上田みゆき/伊武雅刀

スト−リ−

 西暦2194年、地球は突如謎の敵・ガミラスからの攻撃を受け、地球は放射能に汚染された人類の大半が死滅してしまう。滅亡の危機に瀕した地球に、イスカンダルから放射能を除去する装置があるという希望のメッセージが届く。このメッセージに人類の存亡を託し、地球防衛軍の司令長官、藤堂平九郎は残された地球市民に、蘇らせた宇宙戦艦ヤマトの乗組員となって、地球を救うための旅に志願するよう呼びかける。かつてエースパイロットとして活躍していた古代進は軍を離れ、今は放射能に汚染されて危険な地表でレアメタルを回収する仕事をしていたが、この呼びかけを聞いて、志願の人々の列に加わるのだった。

レビュー

 アニメのデザインをヘンに踏襲しようとするとこうなってしまうのか…という典型で、映画そのものが役者のみなさんによるコスプレ大会になっているのはいたしかたあるまい。地割れとともに飛び立つヤマトなど、CGの出来は感涙ものだが、第一艦橋をはじめとするヤマト艦内は戦隊モノの特撮のようなチープな出来で、こうした衣装や美術の完成度が、たとえば時代劇などに比べてまだまだ圧倒的に未熟な点、経験不足は否めないであろう。それでも脚本は、ヤマトの骨子の一つとなる艦長沖田を乗り越える古代の葛藤と成長のストーリーを軸に、映画ならではのオリジナル設定を加味して、娯楽映画ならではの出来に仕上がっており、意外にストーリーに引き込まれるところもあった。キムタク主演というある種のハンディをプラスに変えたことは、評価に値すると思うし、その2年後にスタートしたアニメリニューアル版「宇宙戦艦ヤマト2199」のあまりにオタク的な(オタクにしかウケないような重箱のスミをつつく設定など)脚本演出に比べれば、さすがに万人向けのエンターテイメントとして、それなりにツボをおさえた出来と言っていいだろう。

 国民的アニメといっていい作品で、あまりにもそのキャラクターデザインやメカ、衣装などに至まで、造形が身にしみるように知れ渡っているために、実写となって映し出される映像が、あのヤマトなのだという同一性にこだわっていると受け入れがたい向きもあろう。それは、アニメの実写化が持つ宿命的な課題なのであるが、本作では、アニメ作品をそのまま実写にしようとはあえてせず、2時間という映画の枠の中で、そのストーリーの本質を描くことにもっぱら専念し、その中であるべきキャラクター像を再創作することに成功している。そのため、デスラーやガミラス星人は、原作とはまったく異なった姿になっており、ストーリーは原作をたどりながらも、意表をついた展開から、感動のラストへと導かれていく。この「意表をついた」部分については、ネタバレになってしまうので詳細を省くが、同じテーマ、同じ骨格を保ちながら、映画という枠の中で新鮮な形でこのストーリーを構築し直したことは、高く評価していいと思う。

 しかし、この場面は「ターミネーター」だな、この場面は「エイリアン2」だな、などと、おそらくは制作陣が頭に描いたであろう元ネタが分かってしまのはどうかと思うのだ。原作アニメにはそういう匂いのほとんどない、松本零士オリジナルの世界観がしっかりとあった。コスプレ大会はゆるせるが、やはりオリジナル作品の持つあの雰囲気をこそ、大切にした作りをして欲しい。別にハリウッド映画のコピーを観たいわけではないのだ。その辺りについては、制作者自身が何を目指すか、というところに課題があるのではないだろうか。 

評点 ★★★★

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