レビュー
35歳妻子ありの高校教師ジム・モリスが、メジャーリーガーになるまでを描いた実話ベースのストーリー。ディズニー映画らしく、生徒との心の交流、家族 愛、そして男の夢を実現するまでの葛藤と、手堅くまとめられていて安心して見られる一本である。最後にはほろりとさせられるのもいいところだ。
しかし、どうもいまいち私的には盛り上がりに欠ける淡々とした話とうつった。ジム・モリスという人のキャラがつかみどころのないままに終わっているのだ。 実話ということで、ジム・モリスと周辺の人々との関わりに重点が置かれている反面、野球についての描写は表面的。現役時代130キロ代の球しか投げられな かったジムが、肩を手術したあと投げていないのに、どうして156キロの速球を投げられるようになったのだろうか。野球における夢の本質は、だれよりも速 い球を投げるというその点にあるのだから、ここをもう少し描いてほしかったかな(むしろ野球のファンタジーは、150キロでバカスカ打たれる投手がいる一 方、130キロ代でくるくると三振させる投手がいることだ)。彼が監督しているダメダメな高校野球部が急に強くなるのも、単に「夢」を持てばそれで上手くいくという精神論でおわっていて正直ありきたりな感じがする。ここでしっかりとした野球理論を語ったりなんかしたら、ジムの野球に賭ける消えない情熱が表 現できたと思うのだが。しかし逆にいうと、野球のことにあまり興味のない人には、入りやすくて感動的な野球映画かもしれない。
また実話だから仕 方がないが、入団テストを受けるチームがデビルレイズだったり(タンパベイ・デビルレイズは野茂英雄が所属する(2005現在)チームだが、1998年に できたばかり。日本で言えば楽天イーグルスみたいなポジションにいる)、最初の登板が敗戦処理だったりとものすごく現実的。その辺りの事情が見てしまった ので、感動も半減だ。そもそもこれは1999年にあったばかりの話なのだから「伝説」として扱うには、ちょっと話が新しすぎなのではないか。
メジャーの試合のシーンはサム・ライミ監督の「ラブ・オブ・ザ・ゲーム」に比べると格段に落ちる。観客席からフィールドを見下ろすシーンはあまりにも高 い所から撮りすぎで現実味が感じられなかったし、スタジアムが映る場面では観客席が満員なのに、マウンドに立つジム・モリスのバックに映りこむ席がガラガ ラ。このヘンの詰めの甘さも気になった。
ちなみにタンパベイ・デビルレイズの3A、ダラム・ブルズは「さよならゲーム」というケヴィン・コスナー主演の野球映画で取り上げられている。マイナー暮らしの悲喜こもごもはこちらの方が面白く見られるかな。
評点 ★★★ |