MUDDY WALKERS 

ロマンシング・ストーン 秘宝の谷 Romancing The STONE

ロマンシング・ストーン 1986年 アメリカ 106分

監督ロバート・ゼメキス
脚本ダイアン・トーマス

出演
マイケル・ダグラス
キャスリーン・ターナー
ダニー・デビート
ザック・ノーマン
アルフォンソ・アウラ
マヌエル・オヘイダ

スト−リ−

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 人気ロマンス小説家のジョーン・ワイルダー(キャスリーン・ターナー)には、コロンビアで暮らす姉がいた。破天荒な生き方をする姉に対して、ジョーンは内気で冴えない感じの女性である。自分が頭の中で思い描く理想の男性像を追い求めながら、ロマンス小説を書いているのだ。一作書き終わったジョーンは飼い猫と乾杯をし、そのままソファで眠り込んでしまう。翌朝無言電話で飛び起きたジョーンは、書き上げた原稿を慌てて編集者の所に持っていくが、郵便ポストに姉からの封筒が届いていた。そして姉から電話が入る。誘拐されてしまったので、その封筒を持ってコロンビアのあるカルタヘナ・ホテルまで来て欲しいというのだ。ワケがわからないまま、ジョーンは姉を救いたい一心でコロンビアの空港へと降り立つが、実は彼女をつけている怪しい男がいた。カルタヘナへ行くバスを探していたジョーンにウソを教えて違うバスに乗らせると、その怪しい男は一緒に乗り込んでくる。何も知らないジョーンは長距離バスの中でうとうとし始めるが、気が付くとものすごい山の中を走っている。本当にこのバスであっているのか不安になって、運転手に聞こうとしたそのとき、山道に停めてあったジープと衝突。ジョーンは山の中に取り残されてしまう。途方にくれるジョーンの前に、ジープの持ち主ジャック・コルトン(マイケル・ダグラス)が現れた。渡りに船と、ジョーンはこの男に助けを求めるが…。

レビュー

   本の世界には「ハーレクイン・ロマンス」という独特のジャンルがある。アメリカのハーレクイン社という出版社が出している小説なのだが、これがすべて、結末は必ずハッピーエンドという恋愛小説なのだ。ジョーンはヒロインがハッピーエンドを迎える小説のラストを、涙を流しながら書き上げる。「ああ、すてきだわ」と自分で書いた恋愛小説のヒロインになりきって、彼女はいう。現実的な見方をすると、自分の妄想に酔っているイタイ女ということになるのかもしれないけど、そんなジョーンにこの映画が注ぐ視線はそうではなくて、温かい。いくつになっても理想の男性を思い描いて夢を見る、そんな女性を可愛く見せてくれるのだ。

 そんな夢見る少女をとうに過ぎた人気小説家のジョーンが、姉の誘拐事件に巻き込まれてコロンビアに行くことになる。きっと、彼女が小説で描いてきたような体験をするんだろうなあ…という期待は、ジョーンの乗ったバスが衝突した挙げ句一人山中に取り残されたと思ったら、最初からつけてきた怪しい男に銃を向けられ危機一髪!というときに崖の上に現れた男の姿を見つけたとき、最高潮に達する。そうそう、この男がきっと、ジョーンが小説で描いていた憧れのジェシーみたいな人なんだわ♪ 
 ところがそこに現れたのは、マイケル・ダグラス扮するジャック・コルトン。ショットガンを撃って怪しい男を退散させたはいいものの、なんか違うのだ。彼が理想の男なら、脅えて隠れるジョーンを助け出して、安心させてやるんじゃないの? しかし期待に反してジャックはジョーンに目もくれず、「電話のある所まで連れていって」と言う彼女にガイド料を請求する始末。もろくも夢は崩れてゆくのかと思いきや、突然の鉄砲水に二人とも吹っ飛ばされて泥まみれに。そこから2人は本格的に、ジョーンの描くような小説の世界にはまりこんでいくことになる。

 だからといって、ジャック・コルトンがジョーンの思い描く理想の男性になっていくわけではない。ジャックはむしろ、ジョーンが描く「男はこうあるべき」の逆をゆく、現実的な男である。そこにこの映画のもう一つの面白さがある。ジョーンが体験している冒険と、ジャックが体験している冒険との微妙なズレが笑いになるのだ。

 キャスリーン・ターナーは強面のお姉さんというイメージがあったが、どこかあか抜けないロマンチストをコミカルに演じていて、とてもかわいい。一方のマイケル・ダグラス。「危険な情事」あたりからすっかりエロオヤジ化しているが、この映画のマイケル・ダグラスは実にカッコイイ。どこか胡散臭いがタフで実はロマンチストの一面も併せ持つという、複雑なキャラクターを楽しそうに演じている。白いシャツとパンツという王子様のような出で立ちで現れたときは、不覚にもときめいてしまった。監督は「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のロバート・ゼメキス。そこはかとないB級ノリをただよわせながらもテンポよくアクションを織り交ぜて、一気に物語の世界に引き込んでいく。そしてラストも決して期待を裏切らない。ブーツとヨットの名前を見せるだけで、その後何があったかすべてを説明してみせる、その力量はお見事!

評点 ★★★★

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