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レッド・オクトーバーを追え  The Hunt for Red October

レッド・オクトーバーを追え 1990年 アメリカ 190分

監督ジョン・マクティアナン
脚本ラリー・ファーガソン
原作トム・クランシー
「レッド・オクトーバーを追え」

出演
ショーン・コネリー
アレック・ボールドウィン
スコット・グレン
サム・ニール
ジェームズ・アール・ジョーンズ

スト−リ−

 CIAの分析官、ジャック・ライアン(アレック・ボールドウィン)は、ソ連軍のこれまでにない新型潜水艦「レッド・オクトーバー」の情報をキャッチする。その大型潜水艦はキャタピラー推進装置を搭載しており、無音潜航が可能だという。その潜水艦の動きを、米軍の潜水艦ダラスがキャッチしていた。その頃アメリカの軍中枢部は、別の情報を捉えていた。ソ連海軍の大多数の艦艇が、レッド・オクトーバーを追っていたのだ。艦長のラミアスは、この新型潜水艦とともに、アメリカへの亡命を企てていたのだ。ラミアス艦長の企てに気付いたジャック・ライアンは、レッド・オクトーバーを捉えた米軍の潜水艦ダラスへ乗り込み、この試みに手を貸すことを決意する。

レビュー

   トム・クランシー原作のベストセラー小説「ジャック・ライアン」シリーズの第一作。本作では、ジャック・ライアンをアレック・ボールドウィンが演じている。(二作目、三作目で演じるのはハリソン・フォード)。  潜水艦を扱った軍事色の強い内容で、その特性がストーリーに色濃く反映されている。私自身はそういった知識をほとんど持たないが、潜水艦ダラスのクラシック音楽マニアのソナー員の何気ない会話を通して、その「音」の解析が潜水艦の策敵に重要な役割を果たしていることを知り、ソ連の新型潜水艦「レッド・オクトーバー」の無音潜航のスゴさ、その特性を生かしたラミアス艦長の企てを理解してゆくことになる。特殊な世界へすんなりと観客を導いて行く導入がすばらしい。

 これらを「解説」してくれるのは本作の主人公であるジャック・ライアン博士だが、ドラマを編み出してゆくのは、もう一人の主人公である「レッド・オクトーバー」艦長のラミアスである。ショーン・コネリー演じるこの熟達した艦長は、心を通じた士官たちとともに、この潜水艦でアメリカへ亡命しようとするのだ。しかもその意思を、アメリカではなくソ連の提督へ手紙で書き残して。ラミアスは、ソ連軍の不穏な動きを米軍は必ずとらえ、自分たちを追ってくるはずだと信じ、またそのことに望みを託したのだ。

 遠く離れたアメリカで、ジャック・ライアンはそのラミアス艦長の思いを受け取る。大規模な演習か、それとも大きな戦いを起こそうとしているのか。それが政府中枢の捉え方だったが、ライアンはふとしたことに気付き、艦長はアメリカに亡命しようとしている、と懐疑で言及。一笑に付されるが、大統領の国家安全保障補佐官の後押しで、「レッド・オクトーバーを追う」ことになる。

 推測にすぎないパズルのピースが組み合わされ、ついに、「レッド・オクトーバー」に追いつき艦長と邂逅を果たす瞬間。ドラマは次のステップへと進んでいく。ラミアスとライアンが演じるのは、ソ連軍に見せるためのドラマだ。

 この映画の原作は、東西冷戦の最中の1984年に出版された。映画化されたのは1990年だが、その翌年にはソ連が崩壊。40数年に渡る東西冷戦に終止符が打たれ、スクリーンの上からも、東側の強大な敵は姿を消してゆく。「レッド・オクトーバー」は、そうした歴史の中で、映画で描かれた「ソ連」の最後の姿の一つであり、今見ると、歴史を回顧させてくれるという一面も感じられた。「007シリーズ」で長くイギリスの諜報部員ジェームズ・ボンドを演じ、ソ連をはじめ東側諸国を相手にしてきたショーン・コネリーが、ソ連の名艦長を演じるというのも、その意味で感慨深いものがある。冷戦時代を代表するサスペンス・アクションの傑作。

評点 ★★★★★

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