MUDDY WALKERS 

ラヂオの時間 Welcome Back,Mr.Mcdonald

ラヂオの時間 1997年 日本 100分

監督三谷幸喜
脚本三谷幸喜

出演唐沢寿明/鈴木京香/西村雅彦
戸田恵子/細川俊之/井上順/布施明
奥貫薫/モロ師岡/近藤芳正/藤村俊二
並樹史朗/小野武彦/渡辺謙

スト−リ−

 脚本コンクールで賞を取った主婦みやこの作品が、ラジオドラマ化されることになる。パチンコ店でアルバイトをする女性と漁師とが恋におちる「運命の女」というタイトルのラブストーリーだったが、主演の大物演歌歌手、千本ノッコは台本を見るなり「主人公の名前はメアリー・ジェーンがいい。職業は女弁護士にして」とわがままを言い出す。ノッコの機嫌を損ねたくないプロデューサーはこの条件をのんで台本の書き換えを命じ、物語の舞台はニューヨークに変更されてしまう。しかし相手役の男性の言い分は聞き入れなかった。本番スタート直前、ADが「マシンガンなら舞台はニューヨークでなくシカゴ」と言い張ったため急遽シカゴに変更されるが、ここから話は大変な方向に向かうことに。主人公は海で溺れて漁師の助けられ恋に落ちるのだが、シカゴには海がない! さて、どうする?

レビュー

   脚本コンクールで賞をとったみやこの台本で、ラジオドラマが制作されることに。タイトルは「運命の女」。パチンコ店でアルバイトをする女性と漁師とのラブストーリーである。ところが主演の大物演歌歌手、千本ノッコがいきなり「主人公の名前はメアリー・ジェーンがいい、職業は女弁護士で」と言いだし、機嫌を損ねたくないプロデューサーがその条件をのんでしまったことから、ストーリーが当初の台本からどんどん変わっていくことになる。

 上司の顔色ばかり見る、スポンサーの機嫌を損ねたくない、とにかく言われた通りにやっていればいいんだ、という、情熱のないスタッフばかりのラジオ局。クライアントやスポンサーがらみの仕事をしている人にとっては、他人事ではない情景だろう。私もラジオの仕事にかかわっているので、「わかる、わかる」と思いつつ、存分に笑わせてもらった。脚本家としてテレビの世界で活躍してきた三谷幸喜の、経験が生きているのだろう。日常に起こっていることを、うまくひねって一流のシチュエーション・コメディに仕立て上げた。その手腕はお見事。

 キャスティングもまた絶妙。唐沢寿明、西村雅彦、戸田恵子といった常連組に加えて、おちゃらけキャラの井上順、深刻そうなのにめちゃくちゃ可笑しい細川俊之、ふけば飛びそうな軽いノリの布施明、思わぬ爆笑をもたらす近藤芳正、おろおろした様子がぴったりはまる鈴木京香、「素」のままみたいに思える藤村俊二など、一人ひとりのキャラがツボにはまって、全体がもう勝手に動き出した、そんな感じだ。ラストにからむ渡辺謙のトラック運転手が思わぬ感動を生み出しつつ、笑いながらも最後に大切なメッセージを残すという、コメディの王道をゆく作品となった。ある種の密室劇でもあり、絵的に映画的な広がりがない点がちょっと残念かな。

評点 ★★★★

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