MUDDY WALKERS 

ポカホンタス POCAHONTAS

ポカホンタス 1995年 アメリカ 81分

監督
マイク・ガブリエル
エリック・ゴールドバーグ
脚本
カール・ビンダー
スザンナ・グラント
フィリップ・ラゼブニク
トム・シトー
出演
メル・ギブソン
アイリーン・ベダード
デヴィッド・オグデン・スタイアーズ
ラッセル・ミーンズ
リンダ・ハント
クリスチャン・ベイル
ジュディ・キューン(歌)

スト−リ−

  1607年、イギリスから開拓者たちを載せた船が新大陸へ向けて出向する。一行を率いるのはラトクリフ提督(デヴィッド・オグデン・スタイアーズ)。新大陸に夢を賭ける若者たちの中には、ジョン・スミス(メル・ギブソン)もいた。目的地のヴァージニア植民地では、先住民のパウアタン族が暮らしていた。首長の娘、ポカホンタス(アイリーン・ベダード/歌・ジュディ・キューン)はある日、不思議な夢を見る。そのことを森の精霊に相談した彼女は、ちょうどその地に到着した船を目撃。上陸したジョン・スミスと出会うと、互いに反発しながらも、不思議に引かれ合うものを感じるのだった。しかし、この地を開拓すべく活動しはじめたジョン・スミスら一行とパウアタン族は、やがて衝突するようになり…。

レビュー

  そうだ、あのレビューを書こう、と「ポカホンタス」のことを思い出したとき、たちまち頭の中に、ポカホンタスがジョン・スミスとの出会いの場面で歌ったテーマ曲が流れ出し、目の前に、その場面の美しい光景と初々しい二人の姿が浮かんできた。音楽、歌、背景、アニメーションと人々の演技、そして脚本。すべてが調和した作品には、たちどころにその世界に心を引き戻すような磁力が働く。そんなことを改めて感じた一瞬だった。

 本作は、ディズニーが出かける長編アニメの第33作で、実に初となる「歴史もの」、実在の人物を描いた作品である。アメリカ建国の中で重要な役割を果たした伝説的な存在である先住民の少女ポカホンタスと、開拓団の一員としてやってきたジョン・スミスとの運命的な出会い、そして先住民と開拓団との対立から和解に至るまでの出来事を、ディズニーアニメが得意とするミュージカル仕立てで描いている。

  これまでにない、東洋的な顔立ちのヒロインに一瞬違和感を覚えるものの、そのキャラクター造形は素晴らしいものがある。父の決めた許嫁の青年に対する反発心、ヴァージニアの美しい大地と自然を愛しつつ、それだけでなく一人の人として、もっと自由で広い世界を夢見て羽ばたきたいと願う心。そんな少女の姿の中に、新しい大陸で、新しい人生、これまでになかった新しい国を建て上げようとした、建国の志を垣間みる。それは、決してただ、旧大陸から来た入植者だけのものではなかったのだ。そうしたアメリカ建国の歴史の神話的ともいえる一場面に触れることができるということに、この作品の大きな価値がある。

 とはいえ、子どもから大人まで、多くの人が楽しめるように作られた娯楽作品としての粋が尽くされており、小動物たちの繰り広げるコミカルなやりとりから、ある事件を機に衝突することになる先住民の連合軍と開拓団の荒くれ者たちとの戦いに至るまで、キャラクターの情感豊かな表情と動き、そして楽しい歌と美しい音楽で流れるように見せてくれる。特にポカホンタスの心を映し出す表情と仕草は魅力的で、とても引きつけられるものがあった。映画は総合芸術といわれるが、まさにすべてが融合して作り上げられた、美しい芸術のように輝く作品となっている。それは、多くの人種、民族の融合によって建国された国、アメリカを象徴しているようでもある。

 ディズニー映画としては異例かもしれないが、ラストは必ずしもハッピーエンドとはいえず、悲しい別れが待っている。ずっとこの美しい大地で描かれるポカホンタスの物語を見ていたい、と思っていた私にとっても、映画が終ることがなんだか悲しく感じられた。

評点 ★★★★★

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