レビュー
「不肖・宮嶋南極観測隊ニ同行ス」という報道カメラマン・宮嶋茂樹の本を読んで、南極大陸というのが「ペンギン・アザラシ・オーロラ」などはほとんど見られず、あるのは真っ白な雪と氷だけという極めつけの退屈な場所であるということは知っていたが、この映画はまさにそんな南極の退屈さをそのまま描きだしたような印象であった。
ストーリーは極めてシンプルで、南極に置き去りにした犬のうち、タロとジロが生きていた!というだけのものだ。しかし、これだけの物語に感動してしまうのは、置き去りにされたにも関わらず、人間を恨むことなく主人のもとに駆け寄ってくる、タロとジロの純粋さに心打たれるからだ。つまり、人間と犬との絆に感動するのだ。だから、犬が主役であってもこれはヒューマンドラマである。それなのに、まるで動物映画のように撮ってしまった。
「南極生まれのタロとジロ」というなら、せっかく劇中に、子犬が生まれるシーンもあったし、他の子犬もいたようだから、2匹が生まれるところから見せてくれたら良かったのにと思う。そうすれば、彼らを一人前の犬ゾリ用の犬として育てるまでの話の中から、隊員との絆が深まっていく過程が、子どもにもわかりやすい成長物語になっただろう。
昭和基地から全員が撤退して、犬が置き去りにされる過程は非常に大事なポイントだけれど、悲しいことに、私がアホなのか、見ていても状況がよく分からなかった。特に犬が置き去りにされたからは、雪原を走り回る犬たちの姿はイキイキしていたので、犬好きとしては楽しかったが、走り回って、一匹が落ちるという繰り返しのようにも感じられ、実に退屈であった。長い時間をついやして、15匹が2匹になるまでを描いているが、それじゃあ彼らが人間のいなくなった南極でどんなふうに生き延びたかというと、どこで寝たとか、エサの調達とか、寒さをどうやってしのいだとか、具体的なことがわかる場面はほとんどない。人間側のドラマもグダグタしていて、もうちょっと短くていいから分かりやすくまとめてくれないかなあと思ってしまった。
まもなくディズニーでリメイクされた「南極物語」が公開されるようだが、こちらの方は、ワイドショーで見たワンシーンだけで、もう涙がちょろりんと出てきたゾ。一体この差は何なのか。ヴァンゲリスの音楽と、ロケの大変さを考慮して、辛うじて★3つ。
評点 ★★★ |