レビュー
感想は、…一言では言い表せない感じですが、一言で言うと、「全世界の人の夢と希望を背負おうとしたエンターテイナーの、最高の舞台の予兆と犠牲的な死」(長いよ!)」といったところでした。
映画は、ものすごいオーディションを勝ち抜いてきたバックダンサーたちの、この舞台に賭ける夢と意気込み、そして夢を与えてくれたマイケルへの感謝の言 葉から始まります。このフィルムを撮影している時点では、彼らはその先何が起こるのか、知らなかったんですね。観客である私たちは、彼らが語るその夢が、 マイケルの死によって永遠に中断されてしまったことを知っています。そこからもう、涙がにじんでくるのでした。
マイケル・ジャクソンはとてもやせ細っていたけれど、それを感じさせないパワフルなダンスと歌唱で、完全に、巨大なショービジネス、巨大な舞台装置の真 ん中に立ってすべてを指揮し、これまでで最高のショーをクリエイトしようとしていました。リハーサルの様子からはダンス、音楽、すべてに対してプロフェッ ショナルな姿勢が伺えました。と同時に、ライブを支えるダンサー、ミュージシャン、スタッフ一人ひとりに対して、指示するときにも謙虚な言葉で、こういう 指示をするのは、“愛”なんだよ、と優しく接していたことがとても印象的でした。
そうした、マイケルの素晴らしさとは別に、感じたことがありました。それは、このマイケルの死はある意味必然だったのではないか、ということです。
映画の最初に、マイケルが、ロンドンで最後の公演をするという記者発表をしたときの、ファンの熱狂的な様子が映し出されます。そして、マイケルと共演す ることに憧れて、熾烈な争いを勝ち上がってきたダンサーたちが映し出されます。観客も、共演するアーティストたちも、みんな、マイケルによって楽しみ、幸 福感を味わい、今よりももっとよいどこかへ引き上げられることを、期待しているんです。その背後には、何億、何十億という世界中の人々の期待があります。
「私を楽しませて!」
「満足させて!」
「もっと素晴らしい歌とダンスを見せて!」
「みたことのない世界に私を連れてって!」
そんな期待に、完璧に応えようとするマイケル。しかし、それは一人の孤独な人間に、出来る事なのでしょうか。人に背負い切れないものを、背負ってしまった人の悲劇。そういうものを感じました。
この映画を観た友だちにメールを送って、返ってきた返事がまた、印象的でした。マイケルは、公演の最後にメッセージとして、地球環境の保護を訴えようとしていました。そのために、大掛かりなイメージビデオも作成されていました。
そのことを、私の友だちは言っていました。
「世界じゃなくて、マイケルが癒されたら良かったのにね(涙)」
そうそう、マイケルってわかってるな〜、と思う一言がありました。ギターだったか、バックミュージシャンの一人に、こう言うんです。
「ここは、オリジナル通りに演奏してほしい、ファンはそれを望んでいるんだから」。
そうよね。ライブに行って、バックミュージシャンのヘンなアレンジとか聞きたくないもの!
評点 ★★★★★ |