レビュー
清須会議とは戦国時代、信長が本能寺の変で倒れた後、後継者をどうするかを決めるために主立った家臣が清洲城に集まって開かれた会議。これを題材に、三谷幸喜監督がお得意の密室系コメディに…というところだろうが、結論からいうと、全然面白くなかった。
歴史モノを現代劇風に、という狙いは、試みとしては悪くないと思う。題材も確かに三谷幸喜向き。だが、秀吉が、信長の孫の三法師を担ぎ出して「あっ！」と言わせることや、出戻りのお市の方が柴田勝家に嫁入りすることなどはある意味周知の事実で、この手の題材の作品を見る人はだいたい知っていることだ。だからこそ、政治的、人間的なウラの駆け引きや、それを画策する裏舞台のドタバタが面白いお話になる、と思うのだが、本作にはそうした歴史的考察の片鱗も見られない。ただ、意見を異にする二人（秀吉・勝家）とその間で揺れる２人（池田恒興、丹羽長秀）がいて、その二人がどっちにつくかというだけの話だ。舞台をどこかの大企業に変え、場所を会社の役員室かどこかにしても成り立つようなくだらない話で、しかもそれが「１日目」「２日目」などと繰り替えされるので、見ていて退屈してしまった。
役所広司の柴田勝家はさすが、のキャラ。対する秀吉を演じる大泉洋が小者すぎてバランスが悪い。役所の勝家と、揺れ動く佐藤浩市の池田恒興の演技が退屈しのぎにはなる、という程度。歴史考証もひどく、織田信忠に、武田信玄の娘のまつが輿入れしたことになっているが、あくまでそういう説もある、という話にすぎず、そんな話を発展させすぎなのも気になった。
本能寺の変後の焼け跡風景や、清須にあつまる大名の行列のショボさも目に余る。テレビドラマレベルで、これを映画館で見るのは辛いだろう。三谷幸喜には、いろんな意味で映画のスクリーンは「広すぎる」のではないか。
評点 ★★
| 
