◇MUDDY WALKERS
■K2 愛と友情のザイル(ハロルドとテイラー)
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スト−リ−弁護士のテイラー・ブルックス(マイケル・ビーン)と物理学の大学教授ハロルド・ジェームソン(マット・クレイヴン)は親友である。しかし二人の性格はまったく違う。テイラーは女遊びの激しい独身で、仕事でも趣味でも、汚い手を使ってでも自分の望みを果たそうとするエゴイスト。一方のハロルドは妻子ある身で家庭を大切にしようとしているが、家に仕事を持ち帰る勤勉家でもある。そんな二人をつなげているのが「登山」という趣味である。2人でアラスカ・マッキンリーの登頂時間記録更新に挑もうとしていた。岩場でトレーニングをしているとき、億万長者クレイボーン(レイモンド・J・バリー)が率いる6人のパーティに出会う。メンバーの一人ダラス(ルカ・バーコビッチ)はテイラーの法学部での同級生であった。彼らは近く行う遠征にそなえて、急斜面の雪原にテントを張る実験をするという。雪崩の危険性を訴える2人の声を彼等は聞き入れず、ハロルドとテイラーは安全な岩の下にテントを張った。しかし上空を飛行するジェット戦闘機の振動で雪崩が起き、クレイボーンのテントの1つが飛ばされてしまう。もう1つのテントは、ハロルドが万が一に備えてロープをかけていたために無事だった。クレイボーン、ダラス、ジャッキー、タカネの4人を救出する2人。テイラーは死んだ2人の葬儀の場でクレイボーンをつかまえて、遠征隊に欠員が2人出たから、自分とハロルドをメンバーに入れるように言う。彼らの目標は世界2番目の高峰で最も登頂が難しいとされるK2だったのだ。クレイボーンはテイラーの強引さと傲慢さに辟易しつつも、2人を遠征隊に加えることを認めた。大喜びするテイラーだったが、この話を聞いたハロルドは「君一人で行け」という。妻のシンディと、6か月は山に行かないと約束してしまったのだ。 | ||
レビュー
映画の中には山岳映画と呼ばれるジャンルがあるようだ。要するに山を舞台にした映画で、これもその一つであろう。しかし劇場公開時のタイトル「K2 ハロルドとテイラー」が示すとおり、これはハロルドとテイラーの物語である。K2へのアタックはクライマックスであってメインではない。その点で、山岳映画としては物足りないのかもしれないが、私はひどく感動してしまった。K2で窮地に陥ってからの2人のやりとりが見終わってからも心に残り、思い出すたびにぐっとくるのだ。この映画は低予算で作られたらしいということが、オープニングや前半部の映像にそこはかとなくただようチープさから伺い知ることができるし、物語の展開もある意味、予想どおりで意外性に欠けるのだが、“死”を予感したハロルドとテイラーが交わす言葉には、それを補って余りある美しさがあった。 | ||
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