MUDDY WALKERS 

ジュリエットからの手紙 LETTERS TO JULIET 

ジュリエットからの手紙 2010年 アメリカ 105分

監督ゲイリー・ウィニック
脚本
ティム・サリヴァン
ホセ・リベーラ

出演
アマンダ・セイフライド
クリストファー・イーガン
ガエル・ガルシア・ベルナル
フランコ・ネロ
ヴァネッサ・レッドグレイヴ

スト−リ−

 ソフィー(アマンダ・セイフライド)はニューヨーク在住で雑誌「ニューヨーカー」の調査員として働きながらライターを志望している。婚約者のヴィクター(ガエル・ガルシア・ベルナル)はシェフで、イタリアン・レストランのオープンを1か月に控えていた。2人は婚前旅行としてイタリアのヴェローナに向かうが、観光を楽しみたいソフィーそっちのけでヴィクターはレストランの食材探しに明け暮れる。付き合い切れなくなったソフィーは別行動を提案し、一人で「ロミオとジュリエット」の舞台となったジュリエットの家を訪れる。そこでは世界中から訪れた女性の、恋の悩みをつづった手紙が壁に張りつけられ、「ジュリエットの秘書」が一つひとつに返事を書いていた。そこでソフィーは、レンガに埋もれて回収されずにいた50年前の手紙を発見する。興味を覚えたソフィーは秘書たちに願い出て自分で返事を書いた。すると数日後、手紙を受け取ったイギリス人女性クレア(ヴァネッサ・レッドグレイヴ)がやってくる。50年前に落ち合う約束を破ってしまった恋人ロレンツォと再会しようというのだ。ソフィーはその旅に付き合うが、一緒にやってきた孫のチャーリー(クリストファー・イーガン)はのっけからソフィーに対する反感を隠さずにいた・・・。

レビュー

ニューヨークの出版社で働くソフィーと、イタリアンレストラン開店に燃えるヴィクターは婚約中だが、レストランの開店後は休みが取れないから、という理由で結婚前に2人でイタリア旅行に出かけることに。だが旅行直前になってもヴィクターはオープン予定のレストランのメニュー考案に心を奪われており、のっけから暗雲が立ちこめる。旅行中も食材生産地めぐりで、ソフィーはうんざりといった様子。どうも、結婚後も彼のレストランを一緒に切り盛りするという意識は皆無のようだ。むしろ破局を早めるための旅行とさえ傍目には見え、「うーん、この先どうなるの?」と先の展開が見えない序盤はやや退屈。

 別行動を取るようになったソフィーが訪れた「ジュリエットの家」でようやく、先の展開はこれかな?というものが見えてくる。ジュリエットにあてた恋の悩みの手紙。壁に張り付けられているものだが、ソフィーはレンガの間にはさまって気付かれずにいた50年前の手紙を見つける。イギリス人の少女が書いたもので、両親の反対で、恋に落ちたイタリア人のロレンツォ・バルトリーニと落ち合う約束をしたものの、会う勇気のないまま帰国するという心境を綴ったものだった。ソフィーがこの手紙に返事をかくと、なんと当の本人クレアが孫のチャーリーとともにやって来たのだ。クレアは50年後に届いた手紙を読んで、この出来事にけじめをつけたいのだという。孫のチャーリーはそれに付き添って来たのだが、「余計なことをしてくれた」とソフィーに対して反感いっぱいである。婚約者のヴィクターは相変わらず自分の食材探しに夢中な様子を見たソフィーは、この2人の旅に同行し、「ロレンツォ・バルトリーニ」探しを始めることになる。ここまできて、ようやく展開が見え始めて、面白くなってくるのだが、それはクレアを演じるヴァネッサ・レッドグレイヴという女優の存在感が圧倒的だからだ。ロレンツォと落ち合って、彼と生きて行く決断ができなかった若いころの自分を振り返り、この思いがロレンツォにとっても真実であったかどうかを今、確かめようとする決意。静かで優しい人柄ながら、秘めたる情熱というものを感じさせ、ともすると生温く感じるこの展開をぎゅっと引き締め、もり立てた。まさに彼女の秘めたる情熱が、若い2人を牽引していったといってもいいだろう。

 そうすると、がぜん楽しみになってくるのが、彼女が恋に落ちたロレンツォ・バルトリーニが一体どんな人物なのか、・・・というより、この彼女と釣り合うほどの存在感を持った役者なら、相当のオーラがあるに違いない・・・ということである。後半は、このロレンツォ登場に望みをかけるワクワク感がある。だが同時に、ソフィーとクレアの孫のチャーリーもいい雰囲気になっていく。こちらの方は、正直、ソフィーが婚約者との旅行中であるだけに、見ていてモヤモヤしてしまうのである。一方でワクワク、一方でモヤモヤというギクシャク感がもったいない感じがした。

 というわけで、本作が一番盛り上がるのは「本物のロレンツォ登場!」で、詳細は避けるが、とにかく期待を裏切らない、いや、期待以上のロレンツォに私たちも出会うことができる。ロレンツォ役のフランコ・ネロとクレア役のヴァネッサ・レッドグレイヴは実生活でも40年越しの関係を実らせて結婚したというカップル。まさに、本作はこの2人あってこそというべきだろう。
 それはいいのだが、ヒロインとその周辺は、ふたりの大御所にかすんでしまって、その後の話もどうでもよくなる。ストーリーとしては、ソフィーの心情を深く描こうとしておらず、せめて、この2人の老カップルから、自分と婚約者の関係を見直す・・・という前向きな内省があればと思ったのだが、安直なハッピーエンドに流れてしまった。恋愛映画だからこれでいいのよ、ということもあるかもしれないが、いやいや恋愛映画だからこそ、ヒロインはもっと自分の恋愛感情が本物なのかどうか、50年ごしの恋を追いかけたクレアを通して見つめ直さなければいけなかっただろう。ソフィーなら、どんな手紙をジュリエットに書いただろうか? そこまで踏込むエンディングでなかったことが、悔やまれる。

 そして最後にこれだけは言っておかねばならない。ヴィクター、かわいそう過ぎるよ、ヴィクター!!! 

評点 ★★★

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