レビュー
アメリカ映画「トップガン」から4年。日本は「バブル」という流行病に冒され末期状態だった。アメリカと同じ土俵に立っても、上を行くことさえ出来るよう になったのだ。そんな妄想に浮かれていた。トップガン? そっちがFー14なら、こっちはFー15だ! トップガン? さらに上をいくベスト・ガイという 称号があるのだ〜!
という状態で作られた、トップガンをそのままパクって舞台を千歳空港&航空自衛隊に置き換えた映画。当時考えられる最高の「オシャレ」な舞台を用意し て、イキでキザな台詞、クールでイカしたキャラクターたちの繰り広げる青春群像を描いた…つもりなのだろうが、その寒さは尋常ではない。あまりも寒くて、 遭難するかと思ったぐらいだ。ラストで織田裕二とそのライバルが互いを「トップガン」「ベストガイ」と呼び合うところで、心肺停止状態に陥った。
そもそも、なぜこんな映画を作ったのだろうか。アメリカ映画の上映を禁じられている北朝鮮のような国ならともかく、同じ映画をリアルタイムで楽しめる (一応)自由の国、日本なのだ。「トップガン」に触発されて自衛隊を舞台にしたスカイアクション映画を作るのも、別に悪くはない。しかし、ストーリーや人 物設定まで同じにすることはないではないか。事実、アメリカと日本では、軍事分野での行動原理はまったく異なっているのだ。自衛隊には自衛隊の、トップパ イロットを目指す物語があっただろうに。
もう一つの疑問は、かっこよくて絵になる場面をつないでいけば、それで一本の映画に仕上がる、と思っているかのような制作の姿勢だ。映画というより、当時 流行ったミュージックビデオにしか見えない(それとて、アメリカのパクリだが)。カッコイイ、おシャレな絵が撮れることは分かった。だけど、それだけで人 の心を動かせるほど、世の中甘くはないのだ。
評点 ★ |