MUDDY WALKERS 

ウォーク・トゥ・リメンバー A WALK TO REMEMBER

ウォーク・トゥ・リメンバー 2002年 アメリカ 102分

監督アダム・シャンクマン
原作ニコラス・スパークス
「奇跡を信じて」

出演
マンディ・ムーア
ショーン・ウェスト
ピーター・コヨーテ
ダリル・ハンナ

スト−リ−

   高校の不良グループのメンバー、ランドンは、仲間になりたいと言ってきた生徒に重傷を負わせた上、自分もケガをして高校から処分を受けた。土曜日の課外授業と個別指導のボランティア、それに演劇サークルに参加すること。そこでジェイミーという同級生の女の子と出会う。彼女は牧師の娘で信仰を堅く守っていたが、地味でダサイ服装で化粧もせず、4年生の時から同じカーディガンを着ていると、みんなからからかわれていた。そんな彼女を、ランドンも冷ややかな目で見つめていた。しかし、演劇サークルで次の公演の主役を務める羽目になったランドンは、不良グループの友達を相手にセリフの稽古をするが茶々を入れられてばかりでどうにもならず、ジェイミーに練習相手になってくれるよう頼む。そして、公演当日。歌手の役として舞台に現れたジェイミーの美しさに、ランドンは言葉を失ってしまう。不良グループとの縁を切り、ジェイミーと付き合うことを選んだランドン。二人は恋に落ちるが、ジェイミーにはまだランドンに伝えていない重大な秘密があった…。

レビュー

   不良少年が清純な少女との出会いを通して成長してゆく青春学園ラブストーリーの定番である。しかも、その少女は不治の病にかかっていた。手垢のついた、まるで新鮮味のないストーリーなのだが、それでも心を動かされてしまう。良い脚本や地に足のついた演技もさることながら、何を伝えるかがはっきりしていることが、感動を呼ぶのだと思う。マンディ・ムーアという歌姫を主演にしたアイドル映画ではあるのだが、そのクオリティは高く、多くの人に見てもらいたい作品である。

 マンディ・ムーア演じるジェイミーは単なる引っ込み思案ではなくしっかりとした人格を持った少女だということが、ランドンとの絡みを通してわかってくるのだが、文字通りとにかくダサイ。アイドルにこんなダサい格好をさせるとは、さすがだ。シェーン・ウェスト演じるランドンと、やがて惹かれ合っていくんだろうなということは読める展開だが、二人のギャップは外見的なことだけではなく、生き方そのものに大きな違いがあるので、二人の心が近づいていく過程を見るのがとても楽しかった。ランドンは警察につかまりたくないがために、自分のせいで重傷を負った同級生を見捨ててしまう自分勝手なヤツであり、ジェイミーの車に乗せてもらって不良仲間のそばを通るとき、からかわれたくないために身を低くして隠れるというデリカシーのないヤツなのだが、そんなランドンが、ジェイミーの毅然とした態度と信念を持った生き方に触れて、変わってゆく。そして、本当の愛とは何かを、経験を通して学んでゆくのだ。

 演劇部の舞台で歌うマンディ・ムーアの歌はすばらしいが、それ以上に、彼女の美しさに言葉を失うシェーン・ウェストがいい。彼女の「実現したいことリスト」を一つひとつ叶えていくのも、初々しさがあふれていて良かった。ジェイミーが実は病気でもうすぐ死にゆく運命なのだということがあとからわかると、なぜジェイミーがこのようなリストを作っていたのか、なぜずっと同じカーディガンでも平気なのか、ということも違った視点で見ることができる。限りある命を懸命に生きようとしつつ、どこか諦観してしまっていた彼女の複雑な心境があったかもしれない。こうした細かい一つひとつのことが絡み合って、ありきたりのストーリーに深みが与えられていると思う。

 人を赦すこと、人を信頼すること、人の気持ちを考えること、父との和解など大切なことがたくさん描かれているが、全体を貫くテーマは「愛」である。それは自分よりも人のことを優先させ、大切にしようとする行動なんだな、とつくづく思わされた。私たちは愛というと、甘ったるい言葉や性的なつながりの中にこそそれがあるのだと感じがちだし、映画でも、そう思わせる作品はとても多い。この映画では、牧師の娘で身持ちの堅い子というジェイミーの設定が生かされて、安易な展開に陥ることなくひたむきな愛を描ききった。ストーリーはありきたりかもしれないけれど、その中の、ありきたりではない愛に、私たちは心打たれるのだ。

評点 ★★★★

<<BACK  NEXT>>

 MUDDY WALKERS◇