レビュー 1982年に放映された特撮ドラマ「宇宙刑事ギャバン」の30周年を記念して製作された劇場作品。同年1月に公開された「海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバン THE MOVIE」の出来た非常に良かったので、気をよくして次は単独作品を、ということになったのだろう。しかしこちらは、誠に残念な出来であった。
河井衣月、十文字撃、大熊遠矢の幼なじみ三人組は宇宙飛行士になることを夢見ていた。大人になった彼らはその夢を実現し、撃、遠矢の二人は火星への有人飛行探査に飛び立つ。しかしその後消息を断っていた。ある日、衣月は職場でナゾの組織の襲撃に遭うが、銀色のコンバットスーツに身を包んだ戦士に助けられる。それは、消息不明になっていた撃だった。なんと彼は二代目ギャバンになっていたのだ!
と書くと何となく面白そうに思えるだろう。だが、全然面白くない。二代目ギャバンの正体がすぐにバレたと思ったら、そこから始まる回想シーンのオンパレード。幼なじみの彼らが宇宙飛行士を夢見るようになったきっかけやらなんやらかんやら、本編そっちのけで回想シーンと昔語りが延々続く。しかし、そもそも宇宙刑事って何ぞや?という者にとってはその辺りの話などどうでも良く、主人公の過去や恋愛話などさして興味も持てないままに、だんだんとグダグダ、ダレダレしてきて見るのがイヤになってきてしまう。敵の戦士ブライトンの正体も、そうであるからして何の意外性もなくバレバレ。バレバレなのを、また念入りに回想シーンでしっかりネタバレしてくれるうえ、裏切りの理由も「アホか」と思える内容、それに、その場面がいかにも安っぽい造りで見ていて悲しくなってくる。
この手の特撮アクションムービーから「テンポの良さ」を取ったら致命的だ。そういうことを分かっていない作り手が多すぎるのではないか。この作品で一番大切なのは、「なぜ彼が二代目ギャバンたる資格を得たか」ではないのか。そこがすっぽり抜け落ちている。「宇宙戦艦ヤマト2199」でも同じ過ちが繰り返されたが、どうも、この手の「父」から「子」への継承、という王道ストーリーが苦手らしく、その手合いはすぐ「恋愛話」に逃げてしまう。
ギャバンの銀色のコンバットスーツや、「蒸着!」の場面など、それなりにかっこ良い出来だっただけに、この脚本、構成のダメさが恨まれる。これによって、二代目ギャバンの夢も潰えたのであった。
評点 ★
■関連作品:海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバンTHE MOVIE
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