キャプテンハーロック

第40話「その時天使は歌った」

あらすじ
 マゾーンの本隊と対峙したアルカディア号は旗艦めがけて突撃を開始する。敵味方入り乱れての激しい戦闘の中、トカーガ船を誤射したハーロックは船に若い夫婦とその妻に宿った新しい命を見る。

Aパート:艦内巡検、決戦開始
Bパート:トカーガ船の妊婦、旗艦ドクラス

コメント

 いや、最終回一歩手前でこのエピソードはちょっとという40話、病院船に偽装したマゾーン艦とか妊婦のエピソードはもっと前にやる話だが、おかげで凝った話の割に話が間延びしてしまっている。そのため戦闘も細切れで、アルカディア号が勇ましく突撃しては中断すると流れも悪い。おそらく制作途中で出された未完プロットを脚本の上原正三が「俺に任せとけ」と、まとめて突っ込んだんじゃないだろうか。この作品に技巧を競う傾向があることは前に少し書いた。が、上原の筆力をもってしても無理ありすぎる話である。そもそもマゾーン艦が赤十字マークを使っているのがすでにおかしい。
 ハーロックが妊婦を収容したのを見て市民マゾーン船がアルカディア号を庇う描写も今までハーロックとマゾーン市民の間には誤爆以外には一点の接点もなかったために唐突に見える。また、それを見てマゾーン艦隊も攻撃を止めるが、たかが一子の出産に大艦隊が躊躇するのはおかしいし、しかも妊婦はマゾーンではない。マゾーンは樹液から生まれるので、人間のような出産のプロセスを必要としないのだ。それに船内でトカーガ人が何百人も血を流して倒れていたのはハーロックが誤爆したせいだ。
 この場面も例えばテシウスのような文官マゾーンが武官や女王と折衝する描写などを加えれば説得力があるのだが、尺の都合で難しいだろうし、話も詰め込み過ぎで、とにかくスッキリしない話である。制作現場が混乱していた様子もなく、唐突な打ち切りでもなかったことから、むしろ丸く収めようとして変になってしまった感じである。
 妊婦が片付いた後、大波の幻影と共にラフレシアの旗艦ドクラスが姿を現す。今までの光り輝く姿は擬態で、デザインは同時期に制作されていた「さらば宇宙戦艦ヤマト」の彗星要塞の原案の一つといった感じだが、タジン鍋を伏せたような見てくれは彗星要塞ほどの迫力はなく、ボツは仕方ないなといった様子でおずおずと登場する。宇宙海賊はヤマト乗員のような公務員ではないので、この巨艦はハーロックがラフレシアと斬り合う剣戟の舞台であればそれで良いのである。

評点
★★★★ 無理筋を脚本家の力業で押し通した話。



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