キャプテンハーロック

第39話「壮絶!長官死す」

あらすじ
 膨大なマゾーン前衛艦隊を迎え撃つため、ハーロックは木星の気象変動を利用した作戦を立てる。包囲され集中攻撃を受けるアルカディア号に2千人のマゾーン戦士が白兵戦を挑み、艦内で銃撃戦が繰り広げられる。

Aパート:切田の回想、小惑星帯
Bパート:コンピュータ室の死闘、切田の最期

コメント

 この作品の宇宙描写については添え物程度に考えた方が良いが、話のコアになっているのでリメイクするなら直したい部分である。なお、合成重力というのは天体AとB〜以下の吸引力のスカラー積だが、元々空間に作用する重力は微弱で、合成といっても鎌倉時代の元冦襲来みたいなものすごい絵になるわけがなく、それでマゾーン前衛艦隊は小惑星にぶつかって壊滅してしまうのだが、「そんなことないだろ」とツッコミを入れるしか為す術のないものである。
 白兵戦というのは武装した水兵が敵艦に乗り込むもので、船の防御力に対し大砲の威力が不十分だった時代には衝角同様良く用いられた。1805年のトラファルガー海戦でネルソン提督が戦死したのは旗艦ビクトリー(HMS Victory)がフランス艦ルドゥタブル(NM Redoutable)と白兵戦の最中だったし、日本でも1869年の宮古湾海戦では新選組が装甲艦甲鉄に白兵戦を挑んでいる。歴史上はおそらくこのあたりが最後であろう。
 作品のアルカディア号は堂々とした外観の超弩級戦艦で、これは接近する前にパルサーカノンに粉砕されてしまい(現に今まではそうだった)、悠長に白兵戦などする余地はなさそうに見えるが、この回は切田長官に死に花を咲かせる回なので、マゾーンに乗り込まれた艦内では切田がマシンガン片手に奮戦することになる。なお、切田のほかアルカディア号の乗員も格納庫で9人、通路で3人の計12人が犠牲になっているが、切田以外は次回で平然と職場復帰しているので、あの大勝軒ラーメンみたいな服装は防弾仕様になっているのかもしれない。どう見ても死んだはずの乗員も少なからずいたが。
 この話では切田が軍人を目指した動機が興味深い。大田原や切田などの存在で、腐敗した連邦政府にもメリットクラシーがあり、下層階級の彼らにも階級上昇する余地があったことが分かるが、ここでの実力主義は控えめに言って権力者の走狗以上のものではなかった。そこに真の意味での自由はなく、どこにもなかったことから、その構図に見切りをつけたハーロックらはアルカディア号に乗り込んだのである。
 死んだ切田をハーロックは海賊島の砂浜に葬る。トチローが作った人工の砂浜について語り、死んだ長官と親友の願いが同じものだったことを語ったハーロックは瞑目し、最後の決いに臨むのだった。

評点
★★★★★ 原作の切田は若いエリートだが、おっさん切田の渋さが熱い。



>>第40話へ


since 2000