キャプテンハーロック

第38話「さらば!まゆ」

あらすじ
 マゾーン別働隊が地球を襲撃し、帰路を急ぐアルカディア号は全速力で地球に向かう。まゆをハッシ老人に預けることを提案した切田はマゾーンの攻撃を避けつつ、まゆを乗せた戦闘機でアフリカに飛ぶ。

Aパート:マゾーン別働隊、アフリカに飛べ
Bパート:インド洋の戦闘、父との対面

コメント

 この作品の宇宙地図についてはあまり考えない方が良いが、別働隊の襲撃を知り、前線から地球に向かったアルカディア号は太陽風の影響で速度を落とした別働隊を追い抜いて地球に降り立つ。切田の提案を受けた陽動作戦を展開するハーロックだが、あんな戦闘機よりアルカディア号に乗せた方が確実に送り届けられるだろうとのツッコミはともかく、逃亡者のくせに戦闘機まで入手した切田と彼の同志(?)はまゆを護衛しつつアフリカに向かう。戦闘機(?)の操縦席にシートベルトがなく、ビジネスジェットみたいに広いのは当時の作品では良くあることである。
 まゆの存在はアニメ版のみの設定で、ハーロックの拘束条件として良い方向にも悪い方向にも作用したと思うが、ラストの決戦前ではやっぱり始末しておかなければ座りの悪い話である。以降最終回まで登場しないので、父トチロー(機械)との対面はここでやっておかなければ他にやる場所のないものである。
 それにしても情けないのはただの別働隊に簡単に首都を制圧されてしまう地球政府で、議題もゴルフ場やレジャー場が被爆したというもので、市民については一言もなく、この様子では切田の後任も任命されておらず、この安全保障に対する関心の無さ、冷淡さは少し異常な感じもする。
 実はこの時代は戦後民主主義の影響で、というより先の大戦の後始末をGHQ任せで日本人がちゃんとやらなかったせいで、軍事については異常な忌避、不関心の傾向が特に学校教育を中心に非常に強く、描写にも影響あったことは留意されたい。
 軍事に代わって日本人のオモチャになったのは経済で、日本はむしろ企業の方がより軍国的、経済愛国主義的であったことは現在ではいくら批判されても良いことである。はた迷惑な遺産が数多く残っているからだ。
 ただし、自衛隊の装備は当時でも冷戦下で必要十分な実力は持っており、戦術的制約もむしろ今の方が安倍内閣の行った集団的自衛権の拡大解釈で不自由な状況にあることを見れば、当時の為政者が自国の実力を冷静に判断した的確な軍備だったことは記しておいて良い。例えば尖閣や竹島などの問題は当時の政府と自衛隊の実力では起きなかったことには留意すべきである。
 トチローとの対面からラストに至る流れは感動的で心揺さぶるものがある。この作品から学ぶべきはむしろこういうものなのだが、いびつだった時代の反動で、歪んだ鏡にまともな像が映らないのは今も同じである。

評点
★★★★ まゆとトチローの場面は感涙モノ。



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