キャプテンハーロック

第33話「たった一人の突撃!」

あらすじ
 マゾーンの危機を首相に訴えた切田は町の酒場でかつての上官大田原と再会する。切田に長官の座を追われた大田原はマゾーンの存在に最初に気づいた一人だった。マゾーンの先遣隊が地球に迫る中、戦闘機を奪った大田原は単身で敵艦隊に突撃する。

Aパート:危機感のない地球、大田原との再会
Bパート:先遣隊迫る、愛の大漁節

コメント

 おそらく42話中随一の浪花節回、ハーロックらはまゆ捜索でユリシーズ星雲から動く気配もないが、少数のマゾーン先遣隊に太陽系は撹乱され切っており、襲撃されたステーションの情報も掴めぬ有様である。長官切田は地球攻撃が間近なことを実感するが、首相は女子プロ野球に興じていて関心を持つ気配すらない。
 しかし、普通こういう映像は国民の戦意を刺激するもので、政府にとっては戦意高揚のために放送して損はない。それを全く流さないというのは取材陣もマゾーンにやられてしまったのか、政府の提灯持ちでジャーナリズムが死に絶えてしまったかであるが、おそらく双方だろう。それに戦意高揚といっても防衛隊の隊員さえ逃げ出す体たらくでは戦争準備などとてもおぼつかない。
 ハーロックにも悪いところはある。強力な戦艦に乗り、防空圏などお構いなしにドクロ旗を靡かせて頻繁に現れるこの海賊にあっては防衛軍は歯が立たないので無視を決め込んでおり、切田もかなり長い間ハーロックとマゾーンの仕業を区別していなかった。情報があっても厄介事を恐れた防衛軍の官僚が握りつぶしていたことは想像に難くない。そして太陽系の地球施設を掃討した先遣隊が地球近くまでやってくる。
 視聴後の印象としては、この話、何か中身があったのだろうかというもので、話の後半は大田原の特攻と彼と元恋人マスさんの人情話で占められる。だらけ切った地球に戦闘機1機で特攻しても士気高揚の効果があるとは思えず、また現役を退いた大田原がどうやってマゾーンの接近を知ったかなど、いろいろとツッコミ所はあるが、妙な盛り上がりと回想シーンの相乗効果で意味もないのに泣ける話になっている。
 おそらく、無駄な言葉が一つもないのだろう。的確な表現と緊迫した時間の演出、古い演歌のメロディを重層的に組み合わせ、畳み掛けるような浪曲の技法をフルに使い仕上げた話である。感情を揺さぶられることはまるで手品のようであるが、それが可能なのもこのスタッフと作品あってこそである。

評点
★★★★★ 浪花節とはこういうものという見本のような話。



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