■第31話「アルカディア号建造秘話」
あらすじ
バッド鉱山から数年、惑星ヘビーメルダーに拠点を構えたトチローは地球からの流れ者を集めて自治を行い、彼らの街は活況を呈していた。が、妖星ガンダがヘビーメルダーに近づき、トチローは脱出船の建造を開始する。
Aパート:惑星ヘビーメルダー、まゆの誕生
Bパート:エメラーダ対切田、アルカディア号誕生
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ハーロックの友人トチローが登場するのは前話とこの話だけだが、ハーロックやエメラーダを凌ぐ才人ぶりが明らかになる回である。トチローの専攻はロケット工学だが、描写ではむしろ材料工学の方が造詣が深そうで、彼の指示の下、ハーロックは資材集め、エメラーダは惑星の防衛と役割分担ができていることが伺える。トチロー自身はたぶん市長として住民を束ね、開拓や工業生産に尽力していたのだろう。
ただ、画面ではかなりの規模のあるヘビーメルダーの工場地帯だが、周辺惑星との関係が不明なため、外宇宙経済圏の中でこの惑星の占める位置が明らかでない。販路開拓もトチローの仕事なら、彼には商才もあったことになる。
地球人の大部分は堕落して地球に引きこもっているものの、地球の人口は50億しかなく、かなりの人数が宇宙に出て行ったことが伺える。個々の植民星の規模は小さくても、開拓には工業製品や衣類、食糧などが必要で、その小経済圏においては必需品の生産を行うハブとなる惑星の存在が必要である。ヘビーメルダーは自星の需要を賄うには大きすぎるプラントなどの描写から、開拓を行う周辺諸惑星の中心星と思われる。
惑星ヘビーメルダーは妖星ガンダに破壊され、脱出船アルカディア号を建造したトチローも過労で死亡する。まゆを託されたハーロックは後に地球の聖ジョパンナ学園に彼女を入学させ、海賊と保護者の二足のわらじを履くことになる。
以前にアルカディア号の乗員には惑星ヘビーメルダー出身者がいると書いたが、これは本話の惑星防衛隊のメンバー、つまりエメラーダの元部下で、主要なメンバーとして顔は出さないものの、ハーロックやトチローと価値観を共有する人間は少なからぬ数いることになり、これがアルカディア号乗組員の真の核を構成していると考えられる。
なお、この話ではハーロックの出自も明らかになる。彼の故郷はオーストリアの温泉地ハイリゲンシュタットで、武闘派の印象が強いハーロック一族だが、先祖はドイツの温泉旅館のオヤジでユンカーの地主貴族である。こういう設定なら、なぜ放映時にバスクリンがスポンサリングしなかったのだろう?
評点
★★★★ まゆ出生、アルカディア号の建造など物語の鍵になる話。
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