■第30話「わが友わが青春」
あらすじ
海賊島で補修作業に入ったアルカディア号でトリさんが壊れたメガネを見つける。手に取ったハーロックは親友トチローとの冒険の日々を回顧する。
Aパート:海賊島入港、若き日のハーロック
Bパート:バッド鉱山、戦艦エベレスト爆破
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マゾーンもユリシーズ星雲に向かったアルカディア号を挙手傍観していたわけではなく、ハーロックが船をドック入りさせたことを見た女王ラフレシアは討伐隊を派遣する。
海賊島ではハーロックが昔話に耽っているが、どのくらい前の話かといえば、まゆが7歳なのでそれ以降ではなく、10〜15年ほど前の話のようである。このあたりはかなり適当で、作中ではハーロックの設定年齢が28歳、トチローは1話で22歳没となっているがサバ読んだ方が良く、聞いた話では監督のりんたろうはハーロックの実年齢を40歳、台場正を20歳と考えていたようである。
それだとハーロック25歳頃の話なので、話との辻褄も合い、トチローは生きていれば41歳で、ハーロックより一つ年上ということになる。エメラーダはこの時すでに海賊として名を挙げていたことを見れば、おそらくハーロックやトチローより年上で、出会った時は28歳くらいと思われる。
むしろこの話で注目すべきはハーロックらを買収しようとしたエメラーダをハーロックが断る場面である。
「縛られたくない、金なんかで。」
「同感、僕たちは夢を求めて旅をしているんだ。」
「夢?」
「そう、その夢を実現するには、自由な時間が必要だ。自由と夢さえあれば、金など要らない。」
この言葉は現代ではむしろ青臭いといえるもので、現在ならティーンの若者でも臆面もなくこう言うだろう、「自由を得るためには金がいる」。タヒチ島に行ってレジャーを楽しむのも金がいる。その金は仕事で稼がなくてはならず、実入りの良い仕事ほど価値がある。今や大学でも90%の歳費は収益性のない研究には下りないことになっている。こうした施策が続けられた結果、日本では大学研究の質が劣化し、回復不能のダメージを受け、国際競争力を失ったことが指摘されている。
やはりここで言う「自由」とは、通俗的な「自由」とは違う意味と考えるべきである。実入りの良い仕事は確かに稼げるが、仕事に忙殺された結果、創造に費やす時間がなくなり、実は見た目ほど生産性は良くないのだ。
むしろ世間的に無駄と思われている人間、長期的で収益性の低い研究に従事している学者、世間を離れて出家生活している宗教者、サバティカルを楽しむ学生、ひきこもりやニート、年金生活者の方が創造的で生産的な仕事の種を持っていることがある。それらをどう取り込むかで21世紀の明暗は分かれそうな様子である。
作品全体に通用する価値観として、富(資金や組織、権力)と自由(真理の探求や創造)は相容れないことをトチローの言葉は伝えている。縛られないものが真の「自由」であり、彼らアルカディア号の乗員が仰ぐドクロの旗が意味するものである。このことは作品が作られた時代よりも、むしろ現代の方がより輝きを放っている。
評点
★★★★ ハーロック自叙伝はスピンオフさせたい話。
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