キャプテンハーロック

第29話「虹の星の決闘」

あらすじ
 まゆ捜索の手がかりもなく、広大なユリシーズ星雲をさまようアルカディア号では乗員たちが暇を持て余していた。マゾーンを追って虹の星に辿り着いた台羽は亡命マゾーンの村でマゾーンの少女キリカと仲良くなる。

Aパート:暇を持て余す乗員、マゾーンの村
Bパート:台羽とキリカ、マゾーン戦士の娘

コメント

 以前にハーロックと40人の海賊たちは賊でもなければ義勇兵でも革命軍でもないとコメントしたが、マゾーンとの戦いで結束していた彼らが方針変更で突然ヒマになり、撤収もできない状況でどうなるかは、ドクターがハーロックに直訴した内容による。
 それによると急性アルコール中毒5名、喧嘩による骨折8名、睡眠不足を訴える者7名、盲腸4名になり、マゾーンと戦ってもいないのに全乗員の6割が戦闘不能である。ドクターは対策を訴えるが、実は対策らしいことはハーロックはそれなりにしている。

@普段より慎重な情勢観察・・・・・マゾーン艦隊の動向や目的を時間を掛けて推察。
A乗員に無理をさせない・・・・・・戦闘に勝利している戦闘機隊をすぐに撤収。
B自分の問題は自分で片付ける・・・乗員の助けを借りずに一人でシラクと対決。
C仲裁をしない・・・・・・・・・・目の前で乗員が殴り合いをしていても知らん顔。
D常に泰然自若・・・・・・・・・・起きている間は艦長席に腰掛けて微動だにしない。
E海賊島への入港・・・・・・・・・まゆ救出に焦るトチローを説得している(らしい)。

 普通のリーダーならおそらくヒマを作らないことに留意するはずで、何かしら理由を付けて船の掃除や戦闘訓練に乗員を駆り出したり、ユリシーズ星雲で畑作して自給自足を試みたり、反抗した乗員の処刑など綱紀の厳格な適用がありそうな話だが、それで士気が維持できるかというと、少々心もとないように見える。
 聞いた話では、例えば遅配や設備の故障、注文の減少などで工場のラインが動かせなくなった場合に職長が何を指示するかといえば、どうも職場の掃除のようである。勤務時間は決められており、減給もできないので時間中それをさせるということだが、全日あるいは操業時間の半分に及ぶこともあり、その間は生産性ゼロの状況が続く。 
 これはいっそハーロック式に操業開始までに帰社することを条件に従業員を解放すれば、社屋を出た彼らはそれぞれ好きなことをしているはずで、それが飲食や買い物、映画鑑賞なら周囲も潤う。昇給等に資する内容で勉強会でも良く、陰気に掃除などしていては士気が下がるだけである。
 もう少し複雑な例、例えば航行中の艦隊についてはノビコフ・プリボイの「ツシマ」の記述が参考になる。ロジェストヴェンスキー提督はやはり頻繁な訓練や整備作業を行い、乗員に暇を作らないよう留意したが、無目的な作業は乗員の士気をだだ下がりにし、些細な事件を提督自らが一々処断したことは、司令部への不信や士官と兵の対立さえ生じた。これらは日本海海戦敗戦の原因にもなり、組織は人間を効率よく動かす手段であるが、弱点もあることをこの話は示唆している。

評点
★★★★ ハーロック労務管理の失敗例。



>>第30話へ


since 2000