キャプテンハーロック

第26話「はるかなる長い旅」

あらすじ
 大宇宙を行くマゾーン軍団、ハーロックらはそこでマゾーン軍の虐殺の現場を目撃する。マゾーンの市民と兵士に対立が生じ、文官テシウスは市民を率いて船団を離脱する。それは女王ラフレシアには許すべからざる反逆であった。

Aパート:テシウスとクレオ、ラフレシアの友
Bパート:サイネスの死、テシウスの最期

コメント

 ある意味、全42話の中で最も重要な話。女王を頂点とし、市民と軍人からなるマゾーン社会の大枠を描いており、ギャラクティカ(リ・イマジニング)のようにその対立だけで何クールも書ける話だが、日本ではこういう話はやや不得意で、この話だけで全てを語っているのでダイジェスト感が強く、物足りなさが残る。
 マゾーンにいくつかの種族があることは作品でも度々言及されているが、ほとんど掘り下げられず、やはり原作の中途半端さ、松本零士の構想力に緻密さが欠けていることが作品の限界を画している。映像技術や演出の巧拙はあるにせよ、作品で最も重要なのは原作で、作者があらゆる問いに答えられることである。
 以前のNHKは司馬遼太郎の作品を良く大河化したが、それは司馬が日本では数少ないそれができる作家だったことによる。司馬の文体は短切で後の知見や演出を容れる余地があったし、加えて他の作家とは段違いの資料収集で演出家の疑問に答えていたからである。司馬自身、歴史小説は事実に拘束されることが100%近いとし、リサーチ重視の姿勢を明確にしていた。
 武闘派の司令カサンドラが科学者サイネスを粛清した後、ラフレシアの命令でテシウスは自殺し、これでマゾーンに良識派はいなくなったことになる。が、今までも良識派の存在は影も形もなかったし、分裂の背景も語られず、ラフレシアとテシウスの友情もナレーション以外ではほとんど描かれなかったため、アルカディア号がパルサーカノンを連射する活劇シーンもない本話はお子様にはやや食い足りないものになった。
 鬱憤の溜まったラフレシアは水浴の後、ホログラムで日課のハーロックいじめに現れる。が、ここでもハーロックに「論破」されてしまい、少々情けない体ですごすごと退散する。女王の面目丸つぶれだが、以降の戦いでハーロックたちがマゾーンに対し多少なりとも「人道的」になったことで、本話は全42話の転換点になった話である。

評点
★★★★ 話のまとまりは悪いが、内容の重要性は本作随一。単作とせず、作品全体のモチーフとして扱うべき話。



>>第27話へ


since 2000