キャプテンハーロック

第23話「ヤッタラン、プラモ狂の詩」

あらすじ
 手練のマゾーン戦闘隊に遭遇したアルカディア号戦闘機隊は思わぬ苦戦に陥る。戦闘機の乗員を救出に出たヤッタランは隊長のマゾーン・エルザの捕虜になるが、捕らえられた彼に対するエルザの申し出は意外なものだった。

Aパート:強敵Z編隊、ヤッタラン捕虜になる
Bパート:ヤッタラン失恋、プラモ勝負の結末

コメント

 タイトルの宇宙海賊、海賊戦艦アルカディア号には様々な出自の41人の乗組員がいるが、彼らが乗り組んだ動機は人それぞれである。この一風変わった集団につき、作中で明かされた動機を挙げると以下のようになる。

@犯罪(反逆罪並びに傷害罪、宇宙の無法者)・・・台羽正、有紀蛍、ハーロック
A母星の滅亡・・・ミーメ
B人間関係(上官との不和、失恋)・・・魔地、ヤッタラン
C夜逃げ・・・ドクター
Dおせっかい・・・マスさん
E同志・・・惑星ヘビーメルダー出身者(エメラーダの元部下)

 やはり犯罪や地球政府の政策で居場所をなくした者が多いと思われるが、魔地とヤッタランは犯罪者ではなく、社会復帰しようと思えばできた存在である。魔地は有能なエンジニアとして、ヤッタランも社会不適応者ではあっても事件を起こすタイプではない。むしろこの二人は正義感も強く、タイトル通りの賊などやらせれば真っ先に反抗しそうでもある。作中で度々行われる地球船からの略奪や襲撃において、何が彼らの心に犯罪行為の赦しを与えていたのだろうか。
 ヤッタランの失恋話を軸に進む23話だが、過去に手ひどく振られた彼がエルザにかつての失恋相手の面影を重ねていたことは間違いない。彼女のために不眠不休でプラモを完成させ、やはり裏切られるが、彼がそれを悔いていたようには見えない。銃を下ろしたヤッタランをエルザは喜々として射殺しようとするが、彼女に撃たれることもまた、彼が望んだことのように見えた。
 彼がエルザや失恋した女性に渇望したのは恋情ではなかった。もっと純粋な感情、彼女が瞳に彼の姿を収め、心から偽りのない言葉を掛けてくれることだけだったのである。
 エルザはハーロックに射殺され、ヤッタランは「言えばあげたのに」と苦心して作ったプラモを彼女の亡骸に捧げる。この人物は作品を完成させることには情熱を注ぐが、完成した作品には執着がないようである。ここで我々はハーロックが彼を副長にした理由、賊でも義勇兵でもないアルカディア号の乗員に必要な資質を有する人物の典型を見るのである。

評点
★★★★ 初恋のほろ苦さを描いた好エピソード。



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