キャプテンハーロック

第11話「ローラが金色に輝く時」

あらすじ
 金星に向かうアルカディア号はマゾーン艦の残骸から士官の一人ローラを捕虜にする。捕虜を台羽に任せたハーロックだが、ローラは台羽の心に隙を見出し幻夢に誘い込む。

Aパート:マゾーンの捕虜、尋問する台羽
Bパート:母の幻影、ローラ脱走

コメント

 松本作品には数多くの「松本美女」が登場するが、この作品の敵マゾーンは全員が松本美女の美女軍団なので、アニメーターは話ごとに髪型を変えるなど描き分けに苦労している様子が伺える。加えて種族ごとにいくつかの特殊能力があり、本話はその一つである幻術に未熟な台場が苦しめられる話である。
 それにしても、いくら催眠術とはいえ、台羽正は簡単に騙されすぎという気がしないでもない。ハーロックからローラの身柄を預かった彼は銃を突きつけ、彼女に基地の在処を喋るよう脅すが、次の瞬間にはもう催眠術に掛けられ、ローラが化けた彼の母親に甘えている始末である。いくらなんでも単純すぎと見えるが、実は理由がある。
 幻能は能の大祖、世阿弥が編み出した演出で、これは旅人など現世の人物(ワキ)が化身体の人物(前ジテ)に出会い、対面するうちに本体である亡霊(ジテ)が現れ物語が展開するものである。能の舞台は檜造りの簡素なものだが、観客は「ワキ」の視点から「ジテ」の繰り出す様々な場所を行き来し、語りと舞の織りなす共同幻想に引き込まれる。本話ではこの演出が基礎にあるので、ここで台羽が会ったのは母親に扮したローラではなく彼の母そのものである。それは騙されるだろう。
 台羽の母は海王星の衛生トリトンで宇宙船事故により死亡し、現世に未練を残した怨霊となって異界を彷徨っていたと思われる。息子との会話で「ある人に助けられて」、実は生きていたと述懐するが、これはローラがその能力で呼び寄せたのかもしれない。操られた台場はまんまと彼女を脱走させてしまう。
 幕間や船を突入させて場面転換など、能からヒントを得た演出は他の話でも用いられている。最新技術のアニメーションで制作しつつ、すでに廃れつつあった古典芸能の技法を翻案して用いていることは、この作品の大きな特徴である。

評点
★★★ 当時の演出家がオフの時に何を見ていたかを考えると別の解釈ができる話。



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