キャプテンハーロック

第9話「戦慄の植物生命体」

あらすじ
 捕虜を調べたアルカディア号はマゾーンが植物生命体であることを知る。マゾーンが空間的にもスケールの大きい敵であったことを知ったハーロックは台羽に火焔土器の確保を命じる。

Aパート:植物生命体、火焔土器
Bパート:大地に時間なし、南米のマゾーン

コメント

 土器が宇宙人の記憶素子というのは斬新な発想だが、東北・北海道の遺跡発掘が進んだ結果、狩猟採集生活を営んでいたとされる縄文人が実は定住生活を営んでおり、縄文時代前中期に1,500年間定住したとされる青森県の三内丸山遺跡からは高度に分業化された縄文人の生活の跡が見つかっている。余剰があったのであり、豊かな森林漁業資源は彼らに生活を楽しむ余裕を与えていた。同時期に「街道を行く」を著し、縄文遺跡にも関心を示していた作家の司馬遼太郎は火焔土器や土偶を始めとする、非実用的で装飾性の高い土器の制作目的を「芸術」と喝破している。たぶんこれが火焔土器の正しい解釈だろう。
 が、同じ頃のSFアニメの世界はそこまで進んでおらず、特に松本零士は、「マゾーンの記憶装置」火焔土器を分析台に掛けたハーロックらは暗黒空間にあるマゾーンの母星の情報を得る。「母なるマゾーンの大地に時間なし」、母星の滅亡を示唆する言葉は謎掛けのようであるが、実はこの時母星は超新星爆発で消滅しており、縄文考古学を探求する時間も術もないハーロックらは分析を諦め、特にマゾーンの多い南米に艦を走らせる。
 縄文時代から弥生時代にかけての日本列島における文明の変遷は良く分かっていないことが多く、北方における一連の遺跡の発見は我々にこの時代に対する見方の変更を迫るものである。ただ、北海道以北のオホーツク海は冷戦時代は旧ソ連の「要塞地帯」で原潜の遊弋する最重要海域であり、ソ連崩壊後もロシアが軍事基地を置き、調査と解明は進まない状況にある。講和条約が締結されていないことによる樺太・千島の国境未確定、漁業権を巡る長年の紛争と当事国の外交のまずさなどもあり、我々が火焔土器の真の秘密を知るまでには、まだまだ時間が掛かりそうである。

評点
★★ 松本の縄文知識は古代の宇宙人。



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