■第1話「宇宙にはためく海賊旗」
あらすじ
西暦2977年、環境汚染で自然が死滅した地球は他惑星から搾取した資源でまやかしの繁栄に酔いしれていた。享楽的な人類に危機感を抱いた海賊ハーロックは侵略者の影に気づく。
Aパート:ハーロック登場、堕落した地球
Bパート:まゆという少女、処刑場の海賊
コメント
宇宙戦艦ヤマト2と同じ年、少し早く放映された「宇宙海賊キャプテン・ハーロック」は放映時間が少し遅かったこと、連載が成人コミック誌だったこともあり、ヤマトほどには話題にならなかったが、当時絶頂の松本零士を代表する作品の一つである。
冒頭の「死滅した海」のナレーションは強烈である。環境汚染で海も自然も死に絶えたにも関わらず人類は繁栄している。政府から与えられた娯楽と衣食住により、目的もなく漫然と生きる彼らは波間に漂うボウフラのようである。母なる大地を失った人類は活力を失い、豊かさとは裏腹に、緩慢な滅亡へと向かっているように見える。
当時は四日市ぜんそくや水俣病など環境問題がクローズアップされた時期であり、水質汚染や乱開発による自然の喪失、また、原子力技術の進歩による核戦争の恐怖など、科学技術の暴走による人類滅亡はイメージしやすいものがあった。主演を演じた井上真樹夫は孤高なこのヒーローを革命家になぞらえているが、これは当時の環境運動家や革新勢力に重なる像がある。が、作中での彼の立場はそれら革命家よりなお悪い。
ハーロックは対立するマゾーンにとっては最大の敵であり、女王ラフレシアの好敵手だが、こと地球人類の彼に対する見方はひどく安っぽく卑小で、場末の殺人事件を含むありとあらゆる悪の黒幕であり、航路を襲う海賊であり、7歳の娘のために逮捕される愚か者である。市民にとってはお尋ね者の処刑も娯楽の一つにすぎない。手錠を掛けられたハーロックは衆目の中、おずおずと処刑場に引き出される。
ヤマトの場合は地球を汚染したのは宇宙人であるガミラス星人で、これはヤマトの活躍で入手した異星テクノロジーによって再生すればそれで良かった。ガンダムもビームライフルでシャアを倒せば悪は滅び、主人公アムロを中心とした善人ばかりの世界が取り戻された。
ハーロックの場合は地球を汚染したのは他ならぬ地球人類で、その業の前にはコスモクリーナーDもガンダムも色を失う。人類全体が変わらない限り、ハーロックがいかに奮闘し、アルカディア号がいかに無敵であっても、滅亡への歩みは止まらない所にこの作品の悲劇性がある。
評点
★★★★ 人によっては預言のようなオープニング。
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