MUDDY WALKERS 

銀河鉄道物語

 銀河鉄道物語(2003)各話レビュー

 第24話「燃える銀河」(アルフォート軍総攻撃)


あらすじ

 ついに侵攻を開始したアルフォート軍、学はベガ小隊に、ルイとディビッドはスピカ、リゲルの各小隊で応戦するが、圧倒的な力の前にSPGは全滅し、銀河鉄道の各ステーション、戦闘小隊も次々と撃破されていく。一人ディスティニーに残ったバルジは司令室に足を踏み入れる。

 Aパート: SPG全滅、各小隊の戦闘
 Bパート: フレイムスワロー自爆、ビッグワン出撃

コメント

 アルフォート軍の大艦隊が出現し、各ステーションを攻撃し始めたのを見たSDF本部はシリウス小隊を除く全小隊に出動を命じる。が、イワノフの情報隠蔽により敵情報が皆無のまま出撃させられたSDF小隊は当初から不利な戦いを強いられ、SPGは隊長ヨハンソン以下全員が戦死する悲惨な最期を遂げる。スピカ小隊もジュリアが重傷を負い、隊員はフレイムスワローを自爆させて方々の体で脱出するが、その際にルイが爆風に吹き飛ばされて行方不明になる。銀河鉄道の全路線が機能を停止し、傷つきディスティニーに押し込められた学たちの耳に聞き慣れた汽笛の音が響く。
 この話はラスト5分のこの場面のためだけにあるような話で、それはアルフォート軍の攻撃は凄まじく、銀河鉄道の名だたる小隊が次々と撃破されていくが、この戦闘シーンはもう少し何とかして欲しかったところである。敵の動きや列車の動きなど、それまであった映像を爆破シーンと合わせてツギハギしたような映像ばかりで、新しく起こされた絵も安そうなアルフォード戦闘機がビームをズビビという、80年代でもこれはなかった的な作画である。とにかくこの作品、以前から再三指摘しているが、絵に色々と難がある。これだけドラマを盛り上げたのだから、アニメータも「なすべきことをなして」もらいたかった。
 警備兵の後ろから、「隊長ならここにいる!」と、カツカツと靴音を響かせ、前隊長の長いコートを羽織って現れるバルジの場面はそれなりに名場面だが、蒸気で霞んだシルエットが一瞬学の父、前シリウス小隊隊長の有紀渉に見えたという演出は、この人物が作中人物に及ぼした影響について掘り下げられていないために、少々場違いな印象がある。いずれにしろ、様々な人々の思いを背に、宇宙に向かって旅立つビッグワンの場面はこの作品では最高の名シーンであり、残りの出来が微妙であっても、この場面だけで★5つはやって良いだろう。
(レビュー:小林昭人)

今週の被害車両・施設

■銀河鉄道666号(SPG車両)…アルフォート軍により撃破、全滅
■銀河鉄道034号(フレイムスワロー)…(スピカ小隊)アルフォート軍により撃破
■銀河鉄道029号(シェイキーニードル)…(アンタレス小隊)アルフォート軍により撃破
■銀河鉄道026号(ブルーギャリソン)…(リゲル小隊)
  アルフォート軍との戦闘で大破、ディスティニーに生還、戦闘不能
■銀河鉄道042号(アイアンベルガー)…(ベガ小隊)
  アルフォート軍との戦闘で大破、ディスティニーに生還。
■銀河鉄道015号(フライングシャーク)…(アルファード小隊)
  アルフォート軍との戦闘で大破、ディスティニーに生還、戦闘不能
■銀河鉄道026号(ホワイトホーン)…(デネブ小隊)
  アルフォート軍との戦闘で大破、ディスティニーに生還、戦闘不能
■ハルーム軌道分岐点…アルフォート軍により破壊、全滅
■ミラー軌道分岐点…アルフォート軍により破壊、全滅
■アルラキス軌道分岐点…アルフォート軍により大破、放棄
■プレアデス軌道分岐点…アルフォート軍により破壊
■惑星デコア駅…アルフォート軍により破壊
■アトリア本線…アルフォート軍により分岐点破壊、寸断
■レグルス本線…アルフォート軍により分岐点破壊、寸断

作品キャラ・用語紹介

スピカ小隊 
 銀河鉄道034号「フレイムスワロー」を旗艦列車とするSDFの小隊、隊長ジュリア以下全員が女性であり、事件現場での情報の収集や分析を得意とする。戦闘や護衛任務に投入されることも少なくなく、アイアンベルガーと同じ機首衝撃砲の装備など装備も他小隊に劣らない。全滅したSPGの記録カプセルを回収し、解析したアルフォート軍の目的を管理局に伝えたが、直後に包囲され、隊員はフレイムスワローを自爆させて脱出する。負傷したジュリアはその後SDF司令部で情報分析に当たり、フォレシスのアルフォート巨大戦艦撃破に貢献した。なお、フレイムスワローは2部で再建造されてコスモマトリクス砲の装備などパワーアップされ、1部と同じメンバーで再びスピカ小隊として任務を担っている。同砲を装備しているのはシリウス小隊の他はこのスピカとケフェウス小隊しかないため、2部においてはアクルクス小隊を凌ぐ最強小隊の一つと考えられる。

SDF司令&ナレーター CV 窪田等
 銀河鉄道999(映画)のナレーションは「ジェットストリーム」の名ナレーター城達也が務めていたが、2003年では城はすでに故人で、ナレーションは声質の似た、城の弟子の窪田等が務めている。窪田が師を強く意識していたことはDVD付属の声優インタビューでも語られており、作品のナレーションの様式は999の城に極めて近いものである。
 SDF司令は2部では「藤堂平吾郎」と名前があるが、1部のエンディングでは「ナレーション」しか紹介がなく、台詞も少ないことがあり、スタッフもこの司令官についてはあまり考えていなかったように見える。当レビューの基本方針として、設定等は「画面で表現されたことを最優先する」という指針があり、そのため、1部では名前はおろか階級ですら呼ばれなかった司令官については、「SDF司令」と表記することにし、2部の内容や公式ページ、ウィキペディア、ムック本などの内容は無視している。ドラマの画面から司令について分かることは過去にアクルクス小隊の隊長をしており、村瀬とジュリアの上官だったことくらいである。
 学者と違い、事実に対するスタンスの異なるスタッフの言葉は往々にして信用できないことが多く、当事者の制作秘話にしても、その場の雰囲気や勢いで誇張した表現を用いたり、事実を曲げたり、あるいは全く虚偽であることがある(富野、松本など)。記事や証言の信憑性を担保できないことから、当方は全てのレビューにおいて先ず画面で表現されたことを最優先とし、それ以外は記述に必要な場合にだけ、やむを得ず用いるというスタイルを取っている。

カオルmemo

 アルフォート艦隊がハルーム分岐点に出現するが、イワノフの命令で出撃したSPGは一瞬で殲滅される。SPGの残した記録カプセルから、その狙いが銀河鉄道と始発駅ディスティニーの破壊であることを知らされる。スピカ小隊は奮闘するも自爆、ルイは宇宙の闇に吸い込まれ、重傷のジュリア隊長を救助した村瀬は「銀河鉄道の完敗だ」と項垂れる。そんな中、一人ディスティニーに戦わずして残っていたバルジが動き出す。
 「運命は自分で切り開くものだ」。学が熱く叫び、自ら実践してきたその生き方はシリウス小隊全員の意識を変えていた。5話では管理局の規則に従いディヴィッドを乗せたままビッグワンを爆破する命令に唯々諾々と従っていたバルジだが、銀河鉄道を守るという己の使命のために、時として組織を欺くことさえ辞さない姿勢へと変わっている。
 「隊長ならここにいる!」、この一言が生み出すカタルシスは、査問会の決定に従うかに見えたバルジが、実は学が切望したように自ら運命を切り開く行動を起こしていたことから来るものだ。そのバルジの姿に、学は亡き父渉の幻影を見る。渉自身について詳細が描かれなかったのが残念だが、それは学が、そしてバルジが渉からその生き様を受け継いだことの証であろう(しかしロングコートも制帽もバルジには似合わないのが悲しい)。

今週のメンヘラ社長

運命の歯車が、
人々の運命が、
闇の奔流に飲み込まれていく


カオルのひとこと
 銀河鉄道がズタズタにされてしまいました。敵の目的がそもそも銀河鉄道そのものだったということは、総司令であるこの方が矢面に立たねばならない事態です。しかし、ついにメンヘラ社長は立つこともままならず、床に倒れてしまいました。「運命に委ねなさい」と言った言葉を自ら実践するのはいいのですが、あなたの運命の巻き添えでこうなってしまった、となると、ケリの一つも入れたくなる・・・、せめてイワノフを制して、バルジには会って話を聞いてあげて欲しかったのですが、彼女はバルジキックを決められるのを恐れたのかもしれません。

評点

★★★★★ 多少の難はあるが、ラストの場面で全て許す。(小林)
★★★★★ 「これがやりたかった!」というところに物語が到着した高揚感!(飛田)

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